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モンスターハンター 寒冷群島の紅き鬼狩り

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第一話 寒冷群島の紅き鬼狩り

氷牙竜ベリオロスの素材を使って作られた装備を着用した一人の男が、こんがり肉を頬張っていた。


「今日も元気だ!肉が美味ぇ!」

ここは、寒冷群島。
雪と海水が無謀者を待ち構える、極寒の地である。




心魂戦く 雪の獄

  強者 勇んで海藻屑

   渡れば戻れぬ 果ての死地


雪風に浮かぶ、龍の墓標
 寒冷群島



この歌が示すとおり、厳しい自然環境に加えて凶暴なモンスターが幾つも生息しているこの寒冷群島は、余程のことでもない限り人間は近づかないはずだが、愚かにも近づいた人間がいた

「さて、今日は頼むぜ、フラムエルクルテ」

彼の名はドラコ・ラスター。双剣を得意とするハンターである。一応他の武器も使えるが、特に双剣を扱うことが多い。

彼が挑むのは雪鬼獣ゴシャハギ。
「寒冷群島に住む雪の鬼」の正体である牙獣種である。
本来たった一年の新人が挑むことなど許されないのだが、ドラコは驚異的な才覚を発揮し様々なモンスターを狩猟した。そのため約五か月ほどでゴシャハギとまともに渡り合うレベルにまで達したのだ。

今回は対ゴシャハギ用に作った防具、ベリオシリーズと、武器のひとつ、フラムエルクルテを携えての狩猟となった。

「......念の為に調合しとくか」

ドラコは回復薬の調合を始めた。


そして、過去のことを思い出していた。

・・・・・


雪国の某地方では、「悪い子の元には寒冷群島にいる雪の鬼が家に来るぞ」

という言い伝えがあり、子供の躾にも使われていた。


少年だったドラコも、「寒冷群島にいる雪の鬼」の言い伝えを母から聞いて育っていた。

「.....なあ母ちゃん、本当にいるのかな?雪の鬼」

「さあねぇ~....でも悪い子の元にはやってくるかもよ~」

「俺って悪い子?」

「ドラコはいい子よ」

・・・・・


「おい、やめろ!」

ある日、ドラコはいじめを行っている同年代の悪ガキ共に注意した。

「なんだよラスター。ハンターごっこの邪魔すんなよ」

「そんなことしてると、寒冷群島に住んでる鬼が来るぞ」

ドラコの言葉を聞いた悪ガキ共は全く信じてないようで笑い声を上げた。

「はー?鬼?」

「そんなんいるわけないじゃん!」

「ショーコ見せろよショーコ!!」

「分かった、俺が雪の鬼を連れてくるよ」



そして夜、防寒服を着てこっそり家を出ると、寒冷群島に向けて歩き出した。寒冷群島までは結構近い距離にあるのだ。

「うう、寒いなぁ.....」

――――オォォ

どこからか唸り声がきこえてきた。

「......っ!」


―――グオォォ

徐々に大きくなっていく。近づいてきた証拠だ。

――グオオオォォォ

ドラコはとっさに木の陰に隠れ、様子を伺った。熊のような大柄な牙獣種のモンスターが唸り声をあげながら闊歩していた。


(......ほ、本当に出た....寒冷群島にいる雪の鬼....!)


気づかれないようあとずざりするが、\パキッ/ と音が鳴ってしまった。枝を踏んでしまったのだ。

「!!」

ドラコがハッとした時には既に遅し、ゴシャハギは既に背後をとっていた。


ゴシャハギが右腕を振り上げる。その手には氷を纏っており、刃のように鋭い。

ドラコは最早ここまでかと目をつぶったが.....

何者かに助けられた。それは、ドラコの育った村....ワーニェ村に常駐しているハンターだった。

「.....やっと見つけたぜ....大丈夫かい?」

「おじさん.....」

ドラコはホッとしかけたが、突然恐怖で目を見開いた。

ゴシャハギの振り下ろしでハンターの左腕が切断されてしまっていたのだ。

「おじさん、腕が.....!」

「大したこねーよ。おっさんそろそろ引退を考えてたんだ....丁度いいぜ」

「....ごめんなさい」

「無事でよかった、ドラコ」

その後、ゴシャハギは応援に駆けつけたハンター達により討伐され、村に運ばれ、これが雪の鬼の正体だと知らされた。

無事に村に戻ってきたドラコだが、ひとりのハンターの、「ハンターとしての生命」を奪ってしまったことを後悔し、ハンターとなりゴシャハギを狩猟することを誓った。



・・・・


自分の過去を思い返したドラコは、気合いを入れ直した。

「.....やっと戦えるぜ、ゴシャハギ...!」

ドラコは耳に神経を集中させる。

「.....」

――――オォォ

唸り声がきこえてきた。ゴシャハギの習性のひとつで、唸り声をあげながら獲物を探して徘徊するというものだ。

―――グオォォ

徐々に大きくなっていく。近づいてきた証拠だ。

――グオオオォォォ


「唸り声は南からか......よし、行くか....」


「グロロロロ!」

「グオオオォォォ!!」


「ん?」

ドラコは別の声を聞いて慌てて声のする方向に向かった。。

するとそこにはゴシャハギだけでなく、河童蛙ヨツミワドウが。

「確か、ヨツミワドウとゴシャハギって.....」


ヨツミワドウとゴシャハギは仲が悪いとされている。
ゴシャハギの徘徊時に発せられる唸り声が原因で獲物が逃げてしまい、怒ったヨツミワドウが飛び出してくるというのだ。訓練生時代に座学でやった事を思い出したドラコは動きを観察することに。

すると、動きがあった。

ゴシャハギが体当たりを仕掛けてきた。迎え撃つヨツミワドウは腹で防御し、相撲技に持ち込もうとすると....


「グオオオォォォ!」

「グロロロロ!?」

なんとヨツミワドウの頭に強烈な一撃を叩き込み、転倒させ馬乗りになった後に何度も何度も頭を殴りつけていた。


「......ったく、とんでもない乱暴もんだな.....」

ヨツミワドウは水ブレスを吐いてゴシャハギを怯ませ、そのすきに逃走した。

「....ヨツミワドウがいなくなったか....っつーことは」

「......」

ドラコはフラムエルクルテを構える。

「グオオオォォォ!!!」

新たな獲物を見つけたゴシャハギが力強い咆哮をあげた。

「おもしれぇ.....やってやるぜ!」

ドラコは笑みを浮かべると、フラムエルクルテを構えて好敵手(ゴシャハギ)に立ち向かって行った。



・・・・・


ワーニェの村にて、ドラコは受付嬢に狩猟の報告をしていた。

「これで寒冷群島を通る商人はしばらくはゴシャハギにおびえなくて済むかもな」


「そうですね。ゴシャハギの狩猟、達成です。こちらが報酬です」

「ありがとう」

「あっ.....ドラコくん、村長が呼んでたよ」

受付嬢が突然口調を変えて話しかけてきた。ドラコとは親しい仲のようだ。

「ほんと!?すぐ行かなきゃ.....」

実はこの受付嬢、ドラコの幼馴染だ。ドラコがハンターを志したことを知った彼女は受付嬢を目指すことにした。

そして奇跡的に二人共ワーニェ村に勤めることになった。

「失礼します」


「ドラコ、お前にウツシという人物から依頼が来ているぞ。緊急事態のようだ」

「ウツシ.....懐かしい名前だ」


左腕がない男....現村長が出迎えた。そしてドラコの旧友、ウツシからの手紙を渡す。

―――ドラコへ


急な依頼で申し訳ない。近々百竜夜行が起ころうとしている。

砦を建設しているのだが間に合いそうにない。応援を要請したいのだが近年はハンターの問題行動も増えていて下手に選ぶことができない...
えり好みしてられないのが本音だが、俺はともに訓練を受けた同期達に里の未来を託したい。どうか協力してくれないだろうか。

ウツシより




「なにやら百竜夜行とやらが近々起こるとのことだが...」


百竜夜行。数多のモンスターがカムラの里に進行してくる災害にして異常行動。ドラコも話だけは聞いたことがあるのだが、本当に起こったとは思ってもいなかった。

ドラコがハンターとして鍛えられた訓練所の同期「ウツシ」が緊急事態を告げたのだ。


「......村長、オレ、カムラの里に行きます。アイツの...ウツシの故郷を守るために!」

ドラコは決意を伝える。

「そうか。死ぬなよ、ドラコ」

「死にゃしませんよ。『鬼殺しのドラコ』は無敵なんだからな!」

自信満々に言い放ったドラコに、村長は溜息をつきながらも笑顔を向け、激励の言葉を放った。

「口だけは達者だな....ドラコ・ラスターよ、行ってこい!友の故郷を救うのだ!」


「おう!」

ドラコは受付嬢に緊急クエストを受注してもらい、村を後にするのだった。 
 

 
後書き

戦場に響き渡る力強い演奏。それは訓練所で最も親しくしていた「友」の命を賭した魂の咆哮であった。

ドラコはその笛の音を聞いて訓練所での日々を思い出す。

次回
モンスターハンター ~寒冷群島の紅き鬼狩り~
キレた赤鬼と魂の旋律 
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