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レーヴァティン

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第二百三十八話 北に集結その十

「他人の痛みや苦しみわからんで何が出来る」
「害にしかならないな」
「そこまでやと生きてたらあかん」
「お前もそう思うか」
「当たり前や、権力に逆らうから人殺してええんやったら自分が真っ先に殺されろ」
「そういう奴は逃げるな」
 美奈代は冷たく述べた。
「そういう奴こそ」
「絶対にそうだな」 
 久志もその通りだと答えた。
「自分が殺されろって言ったらな」
「それこそ家族でも誰でも身代わりにしてでもな」
「置き去りにしてでもな」
「自分だけは助かろうってな」
 そう考えてというのだ。
「必死に命乞いしてな」
「泣いて頼むな」
「それで家族でも友達でもや」
「盾にしたり犠牲にしたりな」
「置き去りにしてや」
「逃げるな」
「自分だけ助かろうと必死になるわ」
 そうなるというのだ。
「ほんまにな」
「そうだよな」
「人の痛みや苦しみはわかろうともせんが」
 それでもというのだ。
「自分はな」
「というか自分だけはな」
「大事でな」
「そうするな」
「それで必死にな」
「逃げるな」
「そうするに決まってるわ」
 こう久志に話した。
「絶対にな」
「そんな奴は絶対にそうするよ」 
 淳二はこれ以上はないまでに軽蔑して述べた、人の痛みや苦しみを平然と切り捨て理解を及ぼそうともしない輩はというのだ。
「そう言えるのって自己中だからね」
「それもかなりな、な」
「権力に反対するならね」
 それならというのだ。
「テロして人殺していいけれど」
「自分はだね」
「それは自分に危害が及ばないから」
 それでというのだ。
「言えることだしね」
「若し自分が何かあるとな」
「もうね」
「そうするよな」
「そういう奴は本当にね」
「自分だけだな」
「だからそれならお前が殺されろってなったら」
 権力に反対しているから無差別テロを行ってもいい、無差別なら自分にもそれが及ぶ可能性がある。この程度の想像も出来ないから言えることでもある。
「もうね」
「必死に助かろうとするな」
「奥さんや旦那さん、子供をね」
「テロリストに差し出してもだな」
「そう、そして友達を見捨てても」
「自分だけはだな」
「助かろうとするから」
 そうした輩だというのだ。
「本当の意味でどうしようもな」
「そこまでの馬鹿だな」
「だからおいらもそこまで馬鹿だと」
 淳二も思うことだった。
「もう生きている価値もね」
「ないな」
「人間誰でも自己中なものはあるよ」
 利己主義、エゴイズムは誰にもあるというのだ。
「けれどね」
「それでもだよな」
「ここまで酷いとね」
「他人はどうでもよくてな」
「それで自分しかないなら」
 そうした輩ならというのだ。
「もうね」
「生きている価値がないな」
「うん、本当にまともな親御さんなら」
「泣くな」
「所謂ドキュンって言うけれど」
「ドキュンでもそれぞれでな」
「程度があるからね」
 一口にそう言ってもというのだ。 
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