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私はいじわる 小悪魔が住みついた

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2-⑻

 夏休みの登校日、帰り道で相変わらず昂君が私の後ろのほうを歩いてきている。前よりも、少しだけだが縮まったかなと思っていて、香菜ちゃんと別れた後、少し、待って声を掛けた

「昂君 明日、宿題の絵を画きに行くから、一緒に行ってよ!」

「何で・・一緒に行かなきゃなんないんだよ 俺と・・」

「だってさー 私 一人だっら 襲われるかもしれないし・・ 心配でしょ」

「そんな 襲われるようなとこって、何処行くんや」

「ウン 上之神社 あそこって、上から街が見渡せるとこあるやろー そこから、画きたいねん だけど、あそこって、あんまり人居てへんやろー だから・・」

「べつに ええけど・・な なんで、俺やねん」

 次の日、朝、近くの公園で待ち合わせて神社に向かった。途中、急な登り坂を、先に行く昂君に

「なぁー 引っ張ってくれるぐらいしても、ええんちゃう?」

「うーん これぐらい平気やろー」と、私を見てたけど、降りてきてくれて、手をつないでくれた。

 私は、わざと後ろに反らすように体重をかけていると

「女の子はこれから、ブタみたいに太っていくんだよなー ただ食べるだけって、無神経だろー ぶくぶくと 俺は、そんなの嫌いだよー 真珠はそんなんじゃあないよなー」と、真っ直ぐ前を向いて、引っ張ってくれていた。

 くそー 釘を刺されてしまった。わかってたのかなー

「昂 手が痛ぁーい もっと、優しく握ってよー」

「何言ってんだよ 文句言うな 引っ張ってもらって・・いて もう少しだからよ」

 神社には、誰も居なかった。私達は、街とか川が流れる風景のベンチに陣どったんだ。

「昂 ウチ等の住んでるとこが、ずーと見渡せるんだね こんなだったって思わなかったワー ウン ウチはこの景色を画こうね」

「俺は・・ あの狛犬を画く」

「なんでよー こっち画かないのー?」

「ウン お前と一緒じゃぁ おかしいだろう」

「良いやんか 一緒でも・・ お前って言うな! フン! そしたら、反対向けに座ろー あっちの方に行ったら、嫌やでー 隣に居てよ」

「わかったよ 恐がり まぁ いいっか、何とかなるかなー」

「ねぇ 昂 狛犬 見える?」

「あぁ 何とかな しょうがないだろー 真珠が言うんだから」

 それから、お互いに書き始めて、昼頃になると陽が当たってきて

「暑いね ご飯食べよか おにぎり持ってきたんだ」

「へぇー だから、荷物重そうにしてたんかー 最初に言えよ」

「ウン あっちの木陰で食べようよ」

 私は、初めて、自分で作ったんだ。タラコと壬生菜のお漬物のおにぎり、それと、玉子焼きとウィンナー。昂君は黙って食べてくれていたと思うと

「このウィンナーうまいなー」

 それ、ウチが作ったもんじゃぁ無いもの― 焼いただけー おまけに・・

「なんだ これ 三角だか丸だか わかんないおにぎりはー」

「しゃないやろー 初めてなんだから・・」と、私は、下を向いていた。恥ずかしかったのだ。やっぱり、作って来るんじゃぁなかったと後悔していたのだが

「でも、うまいよ この玉子焼きなんかも少し焦げたところなんか これが 真珠の味かー 又、ちょこちょこ作ってくれよな―」

 又、不意打ちされた。でも、嬉しかった。又、ちょこちょこって・・。胸にズーンと来ていた。

 その後、又、画き始めたのだけど、私の絵を見て

「なんだよー その鰻が横たわってるみたいなの 川だって、深いとことか浅いとこあるだろー 光のあたり具合だって場所で違うしさー 家だって、もっと高いの低いの違うはずだし、黒い瓦だって、同じ黒でも色が違うだろー もっと、丁寧に見て画けよ おおざっぱすぎるよー」

「うー だってさー わかったわよー けどさー 昂も何よー 狛犬って 眼と口だけやんかー こんなんじゃぁ 何かわからへんやん」と、私は、反論していたが、よく見ると、細かく黒と白を塗り重ねて画いていた。だから、迫って来るようで・・離れて見ると狛犬の顔ってわかるんだ。私は、それ以上、言葉が出なかった。

 それからは、私は、出来るだけ一つ一つを見るようにして、丁寧に画き上げて行った。もう、段々と陽が西に傾き始めていたのだけど、暑くて、汗が画版に落ちるのだけど、タオルで拭きながら、画き続けた。時たま、昂君が、大丈夫かと声を掛けてくれていたり、水で冷やして、絞ったタオルを私の被っていた野球帽の上から掛けてくれたりしてくれていた。やっぱり、ああ見えて優しく気を使ってくれるのだ。

 そして、陽が沈もうとしてた時、なんとか、絵のほうは恰好がついたので、帰り支度をして

「きれいだね 夕陽 感動するわー」と、昂君を木陰に引っ張って行ったのだ。私は、昂君のホッペにチュッとして

「いろいろと、気、つかってくれて、ありがとうね 今のは、ただのお礼だからね 勘違いせんとってやー でもね、昂 ウチのこと見ててね 蘭ちゃんに取られたら嫌やから でも、今のは、内緒にしててな」

「まぁな トマトパンツ 見れなかったけどな」

「ウー 見るとこちゃうわー バカ昂」と、カバンで思いっきり叩いて、坂道を降りて行った。今日、私は、綿のショートパンツで来ていたから・・。今度は、手をつないでくれなかったけど、途中、私の中の小悪魔が・・

「残念だったね スカートちゃうから見れなくて だけど、トマトちゃうでー 今日は 白いのん お尻にフリフリついているけどなー」と・・・

 陽に焼けたせいもあるけど、なんてこと言ってしまったのだろうと、その時、顔がほてってきているのがわかった。ドキドキさせるつもりが、自滅してしまった。



 
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