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屏風のぞき

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第二章

「とてもよ」
「食べきれなかったですか」
「お肉はね、けれどね」
「あと一息ですね」
「それでなくなるわ」
「美味しいお肉だね」
 黒田は肉をといだ卵で食べつつ言った。
「本当に」
「そうでしょ、くれた親戚が但馬牛のね」
「ああ、畜産やってるんだ」
「それで時々くれるけれど」
「但馬牛だと美味しいね」
「そうなの、けれど急に貰って」
「賞味期限間近で」
 黒田は食べつつさらに言った。
「それでだね」
「今家にいるのは私一人だから」
 それでというのだ。
「困ってね」
「僕とだね」
「桂さんに来てもらったの、二人共お家近所だしね」
「それでだね」
「ええ、じゃああと一息ね」
「全部食べようね」
「そうしましょう」 
 日本酒も飲みながら言う、だが。
 ここでだ、恵那は部屋の端にある屏風の方を見て言った。
「さっき先輩お姉さんおられるって言ってましたね」
「大学一年のね」
 千鶴は葱を食べながら答えた。
「いるわよ、ちなみにお兄ちゃんは二年よ」
「そうですか、今帰って来られましたよ」
「嘘でしょ、お姉ちゃん今日は十時までよ」
 今は八時だ、それで言うのだった。
「アルバイトよ」
「ですがそこに」
「そこ?」
「はい、そこに」
 恵那は屏風の方を指し示して千鶴に話した。
「おられますよ」
「?あれは」  
 千鶴は恵那が指差した方を見た、するとだった。
 そこには確かに女がいた、屏風の上からこちらにいる。だが千鶴はその顔を見てそれで恵那に言った。
「お姉ちゃんじゃないわよ」
「違います?」
「違うわ、誰あれ」
「そういえばおかしいですね」
 恵那も飲んでいる、そのうえで言うのだった。
「髪型が」
「江戸時代の髪型でしょ」
「そうですよね」
「お姉ちゃん髪の毛茶色にしていてね」
 そうしてというのだ。
「ロングにしているから、それに私と同じ目よ」
「あの人垂れ目ね」
「そうよ、あれはね」
「心当たりあります?」
「屏風のぞきよ」
 こう恵那に話した。
「妖怪よ」
「ああ、この家も古いしね」
 黒田は千鶴の話を聞いて言った。
「だからね」
「あの屏風もね」
「そもそも屏風自体古いものだね」
「あれは江戸時代のものだから」 
 今度は屏風、竹と虎が描かれているそれを見て話した。
「何でもね」
「そこまで古いとね」
「妖怪も出るわ」
 屏風の上からこちらを見ている女の顔を見つつ言った。
「そりゃね」
「妖怪ですか、うちの学校妖怪とか幽霊の話多いですけれど」
「うちにも出るのね」
「それで屏風のぞきって何するんですか?」
 恵那は千鶴に具体的に尋ねた。
「一体」
「ちょっと待って、調べるわ」
 千鶴は自分のスマートフォンを出して屏風のぞきを検索して調べた、そうして日本酒を飲みながら話した。
「覗くだけよ」
「それだけですか」
「ただそれだけよ」
「そうですか」
「悪いことはね」
 そうしたことはというのだ。
「全くね」
「しないんですね」
「ええ、屏風をどけたらね」
 そうすればというのだ。
「消えるそうよ」
「そうなの」
「だからね」
 それでというのだ。
「このまま放っていてもね」
「いいのね」
「そうみたいよ」
「そうですか」
「じゃあこのまま食べてもいいかな」 
 黒田は二人の話を聞いて言った。 
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