アパートの物音
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第一章
アパートの物音
建てられてまだあまり経っておらず部屋は幾つもあってしかも広い、だがその家賃を聞いて中根倫太郎はその部屋に入った仕事の同僚の足立智一に言った。
「おい、幾ら何でもな」
「安過ぎるよなこの部屋」
足立も言った、痩せて細長い顔で赤がかった髪の毛は癖があってあちこちはねている。明るそうな顔立ちで口は小さい。背は一七二程で痩せている。
「幾ら何でも」
「事故物件じゃないのか」
「それ俺も確かめたよ」
穏やかでやや細長い顔で真面目そうな目え細い髪質の黒髪をセンターで分けている中根に話した、見れば二人の背丈と体格はよく似ている。
「幾ら何でもってな」
「けれどか」
「ああ、そうでもなくてな」
「それでか」
「他にこんないい部屋ないからな」
だからだというのだ。
「ここにしたんだよ」
「そうなんだな」
「ああ、ただな」
ここでだ、足立は。
中根に深刻な顔でこう話した。
「時々部屋の周り、天井とか床下とかからがさごそ音するんだよ」
「そうなのか」
「壁の中からな」
「やっぱり事故物件じゃないのか?」
「だから調べたけれどな」
足立は中根に話した。
「それはなかったんだよ」
「そうなんだな」
「それは間違いないさ、ただな」
「それでもか」
「ああ、気になるからな」
それでというのだ。
「今度調べてもらおうと思ってるんだよ」
「それがいいぞ、事故物件を馬鹿にするなよ」
中根は足立に真顔で話した。
「そうした話は本当にあるからな」
「ああ、それは俺もわかってるさ」
足立は中根に真顔で答えた、二人共私服で足立が出したビールやつまみを口にしながらそのうえで話している。
「祟りとかはな」
「ああ、だからな」
「もう一度調べるな、若し本当に事故物件ならな」
それならと言うのだった。
「俺ここを出るな」
「何かある前にそうしろよ」
「知り合いの確かな坊さんに来てもらうな」
こう言って実際にだった。
足立は知り合いの僧侶に来てもらった、僧侶は還暦過ぎの穏やかな顔の小柄な人物だった、僧侶は足立の部屋に入るとだった。
全ての部屋の隅から隅を見て回った、そのうえでこう彼に話した。
「これは祟りではないですね」
「じゃあ何ですか?」
「これは」
それが何か話した、そして次の日。
足立は仕事の昼休みに中根と共に昼食を採っている時に話した、二人が務めている会社のすぐ近くの食堂でそうした。
足立はざるそばを食べつつ木の葉丼を食べている中根に話した。
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