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ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~

作者:setuna
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第21話

 
前書き
悟空と悟飯は性格はともかく、親子としての相性はあまり良くなかったんじゃないかなと思います。

体を動かすのが大好きな父親と勉強大好きな息子…悟空も頭の回転は悪くないし、知識不足なだけで頭は良いはずなんだけど…と言うか頭が悪かったら絶対に思い付かんようなことやってるからな… 

 
悟林と悟飯による組み手の結果は言うまでもなくほとんど悟飯の負けで終わっている。

片や超サイヤ人へと変身でき、おまけにそれを抜きにしても界王拳まで使えるのだ。

宇宙船での修行とナメック星で死にかけてパワーアップした姉に対して悟飯は超サイヤ人になれず、ナメック星に帰ってからは勉強に時間を割いていたせいかどうも勘が鈍っている感じがする。

ハッキリ言って悟飯の攻撃が直線的な上にワンパターン過ぎて悟林の方が飽きてしまい、中断してしまう。

「あーもう、つまんない…お父さん!ピッコロさん!勝負しよう!!」

そして悟飯との組み手を放棄してそのまま悟空とピッコロに突撃してくる悟林に悟空は苦笑し、ピッコロは呆れながら応戦するのであった。

「相変わらず極端な姉弟だな」

好戦的な姉に穏和な弟。

どうしてこうも同じ環境で育ってここまで極端な性格になるのかピッコロには分からない。

「はは、オラは悟林が一緒に修行してくれて色々助かってっけどな」

やはり修行と言うのは1人よりも一緒にやってくれる相手がいる方が遥かに伸びが良く効率が良い。

対戦することによって自分や相手の悪い部分が分かりやすくなるメリットもある。

ピッコロにとって悟飯は相変わらず素直な弟子だった。

無理難題を吹っ掛けても、やる気満々の悟林の隣で情けない顔をしながらも結局は一生懸命にピッコロが課した無理難題をこなしていくので悟飯の実力は着実に伸びた。

ただ、どこかで悟飯はもっと強くなれるはずだというもどかしさもあり、双子の姉の悟林がここまで強くなれたのだから、同様の素質は確実に眠っていると言う確信が悟飯の潜在能力の凄まじさを間近で見たピッコロにはあった。

ただ本能的に力を使いこなせる…悟空のようなタイプである悟林とは異なり、悟飯は追い詰められてから…感情の爆発によって限界以上の力を引き出せるタイプであった。

そのため、後先考えずに行動や攻撃をしてしまい、危機に陥るのは一度や二度ではない。

分かりやすい例を出すとなるとサイヤ人との闘いに備えての修行やサイヤ人との闘いの時だ。

高い所に跳んで降りられなくなり、ピッコロの仇を討とうと全エネルギーを気功波に注ぎ込んで放出して動けなくなったりと危機に陥っている。

感情をコントロールしながら秘められた力を使えるようになれば悟飯は一気に実力を伸ばせるだろう。

しかし、悟飯は地球人の性質が強い上に性格上の問題で強さには無頓着である。

そして、案の定と言うべきか悟空の悟飯への指導は悟林と比べて甘いものだった。

そしてパオズ山で1年ほど過ごした今、休憩中にとうとうピッコロは悟飯の鍛え方について悟空に文句を言う。

「貴様はもう少し悟飯を厳しくしたらどうだ?貴様のやり方は温すぎるぞ」

「‥‥ピッコロ、悟飯が悟林と違って闘いを好きじゃねえってこと、おめえは分かってんだろ?」

「そんなことは最初から分かっている。しかし敵に殺されてしまっては、元も子もあるまい?悟飯が重要な戦力であることには変わりはないだろう。特に今回は超サイヤ人になれる未来の悟林さえ敵わなかった相手だぞ」

フリーザ以上の化け物と闘おうとしているのだから悟林だけでなく悟飯もそれなりに強くなって貰わねば困るのだ。

「おめえの言うことは分かる。確かにオラも悟飯が強くなってくれりゃ嬉しいけどよ。悟飯は、自分も何か出来るんだからやんなきゃなんねえって、責任感みたいなもんで修行してる。オラや悟林みてえに単純に強くなりたくて修行してんじゃねえ。強くなることにこだわりがねえから、オラもおめえも逆に物足りねえ感じが出てきちまう。それに…」

「それに…何だ?」

「悟飯が闘うきっかけはベジータ達だったろ?元々悟飯は武道に興味なかったし、武道なんてただ痛えだけの怖いもんだと思ってたとこもある。悟林みてえに最初から武道に興味があったわけじゃねえし、オラや悟林みてえに腕を磨いて勝負するライバルもいねえし、闘う楽しさを得られる土台もねえ。悟林が悟飯のライバルになってくれりゃ良いんだけど、どうも悟林は悟飯をそう言う風に見るつもりはねえみてえだし」

娘のライバル心は主に自分やベジータに向けられているところがあり、悟飯に対しては弟だから守る存在としか見れないのだろう。

この前ボロボロになって帰ってきた悟林はベジータよりも強くなってやると自分に意気込んで更に過酷な修行に身を投じた。

そう言う負けず嫌いの娘の姿に悟空は嬉しく思いながら身近なライバルで大事な娘の成長を願う。

サイヤ人としては愛情深い部類に入る悟空。

宇宙船での濃い修行の日々を過ごした悟林を大事に思っているし、自慢の娘だ。

「それによ、あっちの未来じゃ人造人間と闘えたのは悟林しかいなかったんだろ?オラも一緒に闘うからあっちのようにはならねえと思うぞ」

あっちの未来ではベジータは超サイヤ人にはなれなかったのか、それとも別の理由があったのか…とにかく負担が全て悟林に行ってしまったのだろうが、ここではそんなことにはなるまいと悟空は思っていた。

「…本当に甘い奴だな。その甘い考えがいつか貴様の身を滅ぼすぞ」

「へへ、すまねえな。おめえの言ってることの方が正しいのはオラも分かってる。でもオラはオラのやり方しか出来ねえからな」

悟空の言葉にピッコロは舌打ちしながらそっぽを向いた。

悟空達が人造人間との闘いに備えて修行している中、20年後の未来のパオズ山でトランクスが長い黒髪の女性と悟空に似た男性となった悟飯と共に1つの墓の前に立っていた。

「悟林さん、今日は悟林さんに報告があります」

過去から帰還し、ようやく一段落ついたトランクスは自分の初めての師匠である悟林の墓に報告をしに来たのだ。

悟林と悟飯が話してくれた悟空が言っていた通りの頼もしい人であったこと。

悟林から聞いていた通りベジータは善人ではなかったが、とても誇り高い人だったこと。

悟林と悟飯の師匠であるピッコロや仲間であったクリリン達のことも。

「あたし達がドラゴンボールを使わなかったら…」

「いや、気にしなくていいさ。君達が願いを叶えなくてもきっと間に合わなかった。」

悟林に逃がされた悟飯が願いの現場に駆けつけた直後に神龍が消えてしまったのだ。

どのみち間に合わなかったのだ。

寧ろ彼女が願いを叶えたことでトランクスに自分達以外の支えが出来たのだから良かったのだろう。

姉の悟林が死んだ後も彼女はトランクスを支えてくれたのだから感謝しかない。

悟飯とトランクスの成長もあり、善戦は出来る程度にはなったが、まだまだ超えるには至らない。

奴らを倒すには善戦出来る程度では駄目なのだ。

それだけに姉の強さが理解出来てしまい、目標はまだまだ遠いと悟飯に思わせた。

「せめて俺があの時、一緒に修行していたら姉さんは今でも生きていたんだろうか…?」

「悟飯さん、そんなに自分を責めないで下さい。」

女性がそう言うが、悟飯の表情は変わらない。

父が病気で死んだショックで塞ぎ込んでいた自分とは対照的に姉は勉強をさせられながらも修行や悟空がチチに説教されないために家族全員で作った畑の作業に打ち込んでいた。

何て薄情なんだろうと憤ったが、姉は自分よりも地球や自分達の置かれた状況が分かっていたのだろう。

もう地球には頼れる悟空がいないのだから残された自分達がやらねばならない。

姉が自分を修行や畑作業に誘わなかったのは自分が塞ぎ込んでいたのもあるだろうし、自分の学者になりたいと言う夢を尊重してくれたからだ。

けど、もう地球には父も姉もいない。

もう2人の後ろに隠れることは出来ない。

父や姉の代わりに地球を救わねばならない。

とりあえず修行をしなければ、最低でも地球に帰還した時の父親くらいの強さにならなければ。

過去の父も姉も強くなるだろう、あの2人は目標があればどんどん強くなる人達だから。

自分が守らなければ、父や姉の代わりにならなければ。

報告を終えたトランクスは立ち上がると、悟飯達と共にパオズ山を去っていくのであった。 
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