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歪んだ世界の中で

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第二十二話 吹雪でもその一

                  第二十二話  吹雪でも
 朝起きる。するとだった。
 外は一面の銀世界、いや銀ですらなかった。
 空も何もかもが雪に覆われ輝きを消していた。白い、まさに白一面の有様だった。
 雪は有り得ないまでに積もりまだ多く降り続けていた。家の周りはそうなっていた。
 屋根も雪が強く積っている。希望は起きてまずはそうしたものを見た。
 一階に降りるとおばちゃんとぽぽちゃんがテーブルに座っていた。二人がこう彼に言ってきた。
「おはよう、御飯できてるで」
「食べや」
「うん、おはよう」
 まずは挨拶からだった。そして。
 挨拶が終わるとだ。二人は自分のところに来る希望にこう言ったのだった。
「外、凄いやろ」
「雪よおさん積ってるな」
「凄いね。あんなに積ったのってね」
 どうかとだ。希望も言う。
「はじめて見たよ」
「そやろな。うち等もやで」
「あそこまで雪が積ったのははじめて見たで」
 戦前から生きている二人もだ。そうだというのだ。
「いや、ほんま凄い雪やな」
「警報も出てるで」
 警報の話も出た。
「大雪警報出てるわ」
「電車もバスも止まってるらしいで」
「ああ、やっぱりそうなんだ」
 希望は二人に言われても驚かなかった。ここまで降ればだった。 
 予想された展開だった。そしてだった。
 ここで携帯が鳴った。テーブルの上に置いていたのだ。見るとメールが入っていた。
 真人からだった。そのメールの内容はというと。
「ああ、学校お休みだって」
「警報出てて電車も止まってるさかいな」
「そうなるやろな」
「そうだね。この雪だとね」
 それも当然だと。希望は言葉にも出した。
「なるだろうね。とりあえずね」
「ああ、御飯やな」
「それ食べるんやな」
「うん、御飯頂戴」
 自分の席に完全に座ってからの言葉だった。
「とりあえずね」
「朝からたっぷり食べや」
「これから出て行くんやろ?」
「うん、学校がなくてもね」
 昨晩と同じことをだ。希望は二人に話した。
「だからこれからね」
「そうか。そやったらな」
「まずはたっぷり食べるんやで」
 その朝食をだとだ。おばちゃんとぽぽちゃんはにこりと笑って希望に話した。
「それで身体温かくして」
「行くんやで」
「うん、そうするよ」
 言いながらだ。実際にだった。
 希望は朝御飯をかなり食べた。一杯目からだった。 
 お椀に山盛りにして食べる。おかずは卵焼きだった。
 その卵焼きに漬物、昨日の味噌汁の残りに。
 納豆も食べる。まずは三杯食べた。
 そしてそれからだった。彼は実際にセーターもコートも着てマフラーにミトンで完全武装してから家を出た。だがその家を出る時にもだった。
 おばちゃんとぽぽちゃんは彼にだ。玄関でこう言ったのである。
「ああ、まだやで」
「まだ足りへんで」
「あっ、カイロだね」
 言われてだ。希望も気付いた。
「カイロもあったね」
「そやで。カイロ幾つも付けてな」
「頭に帽子も被っていきや」
「そういえば」
 希望は言われて気付いた。頭には帽子を被っていなかった。吹雪の中を進むのにだ。 
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