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幻の月は空に輝く

作者:国見炯
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課外授業に行こう・3

 
前書き
※ナルトが最強になっております。
 そして戦闘はあっさりと終了です。  

 


 絃にチャクラを纏わせ、編むように結界を作る。
 衝撃も音も外には漏れないように。
 念には念をいれてチャクラを練り込んだ。とは言っても人柱力と尾獣二人と二匹分のチャクラは一人で抑えられる自信はまったくないから、テンのチャクラを貸してもらったけどね。
 物質として存在する絃を使って結界を組んで、術者本人が離れられるようにしてみた。何ていうか、この世界の結界って術者が結界の淵?に立って維持するっていうイメージがすごくあってね。
 それよりも強度は劣るかもしれないけど、それは私一人で張った場合。今はテンのチャクラを練りこませてもらったから、本来の力を発揮出来ていない尾獣二匹分のチャクラなら持ち堪えられるかな。

 これで自由に動ける……とは言っても、動けた所で出番はなさそうだけど。
 私よりも先に駆けて行ったナルト。結界を張らなかったのは、テンの存在に気付いていたからかな。気配に敏感だし、テンも隠さなかっただろうし。

 この後どうしようと頭を悩ませる私の前に広がる光景。
 結界を張っておいて本当に良かったと思える地響きのような音が、辺り一帯に響き渡る。大量の砂が津波のようにナルトに襲い掛かったからなのか。
 それともそれを腕に纏わせた風で……というかあれは風というより竜巻に見えるね。そんな竜巻を宿した右腕で弾き返したからなのか。
 ドゴォォォォオオオオオオ。
 と、響き渡る反響音に、思わず耳を塞ぎたくなってくる。
 


「ハッ。この程度の砂で俺に触れられるわけないだろ。っつーか一尾ってこの程度か。ツマンネェ」
 我愛羅を小ばかにするように、肩を竦めながら両手を広げる。しかも口角はつり上がり、ものすっごい笑みを浮かべ上から見下ろしていた。
 下からナルトが立っている砂山を見上げる我愛羅の眼の下には隈。今の時点でかなり濃い隈が出来上がってる。
 不眠症なんだっけ。


「お前は何者だ?」
 瓢箪から少しずつ砂を動かしながら我愛羅が淡々と、感情の篭らない声で尋ねるんだけど、ナルトは意地悪くニヤリと笑うだけ。
「俺に勝ったら教えてやるよ――っつっても、今のお前じゃ無理だけどな。守鶴でも出してみるか? 眠れば出てくるんだろ?」
「……父様からの刺客か」
「ハァ? 影のつくおっさんの? バッカじゃねーの。何で俺が影のつくおっさんの命令なんぞ聞いてやんなきゃならないんだよ」
「……」
 機嫌が降下したからなのか、分かりやすくナルトの背後でチャクラが揺らいだ。九尾の尾を催した九つのチャクラ。
 チャクラの密度が濃くなった事に気付いたのか、我愛羅が瞬身でいっきに距離を取る。しかし、六歳で瞬身って我愛羅も凄いよね。

「っつーかさ。弱いものイジメする趣味ってないんだよな。守鶴を出してくれねぇ?」
「そんなに死にたいのか」
「は? 誰が格下に殺られんだよ」

「「……」」

 睨みあう様にしながら互いの沈黙が重なるんだけどね。


「身の程知らずがっ」


「こっちの台詞だぜっ」


 二人とも短気だよね。
 それに台詞だけ聞いてると、とても六歳児の会話とは思えない。
 見た目はちんまりとしてるのに、身体から発してるチャクラは大人顔負けの迫力。離れてるはずの私にまで圧力が届く。私が普通の子供だったら、二人が放つ殺気だけで気が狂えるかも。ビリビリと肌に突き刺さるような痛みは、父さんと手合わせする時に感じるものに似てる。
 ……思えば、父さんの修行も容赦がないのかもしれない。
 

《ラン》

「――…あぁ」

 脱線しかけた思考を、テンの声が呼び戻す。
 その直後、我愛羅の完全憑依体。そして狸寝入りの術が発動した。ナルトが挑発したっていうのもあるだろうけど、この前に人の血を見ていた我愛羅は既に、正常な意識を失い始めてたのかもしれない。
 
《ひゃっはァ~!!!》

 我愛羅の意識が沈むと同時に、妙にテンションの高い守鶴が姿を現した。流石尾獣。こうして自分の眼で見てみると、その大きさに圧倒される。

「――ッ」

 それと同時に、結界を構成している絃が切れた。守鶴が現れた衝撃に、予想以上に持っていかれたらしい。
 何千本のうち、切れたのは百本ぐらいかな。使っている私ですら構造が分からない不思議なブレスレットから、チャクラを流し込みながら無色透明の絃を取り出す。

「風遁――彩風(アヤカジ)

 無色透明の絃は、外の世界のありとあらゆる色を取り込む。
 光を取り込んだ絃が乱反射して光を放つのは幻想的なんだけど、今はのんびりと見学してる時間はない。
 風遁で操った絃で結界の補強を済ませると、さっきから耳障りな程高笑いをしている守鶴をじっくりと視界に納めた。

《今回の獲物はちぃせぇなぁっ。ぶち殺してやるけどな~~~》

 どうやらナルトを獲物だと認定したらしい。
 しかし、声が大きいね。そろそろ鼓膜が痛いんだけど、ナルトはもっと痛いんだろうなぁ。そう思ってたら、微かにナルトの身体が震えてる。

《震えて弱っちいな人間はよ~!!》

 守鶴も気付いたらしく、態々につっ込んでくる。別に恐怖で震えているわけじゃないと思うんだけどね。

「うるせぇ……っつーかマジでうるせぇちったぁ黙れ。その口を閉じろ三下アホ狸がッッッ!!!」

 ……切れた。自分で守鶴を呼び出させたのに、予想以上に大きな声にナルトがあっさりと切れる。

《三下だと!? 人間如きがァ!!》

 それに守鶴も切れる。
 だからなんでこんなに短気な人たちが多いんだろう。守鶴は人じゃないけど。

「テン。もっと結界を強化したい」

《そのようだな……まったく。これ以上煩いようなら我が出ても良いが?》

「ナルトが怒るから結界だけにしておく」

《……》

 そうだな、と、テンが無言のまま首を縦に振る。
 私もだけど、テンもナルトが負けるとは思っていないらしい。ひょっとしたら、負けても自分がいるからと思っているだけかもしれないけどね。
 テンと協力しながらやり過ぎだろうっていうぐらい結界を強化している横で、ナルトが両腕にチャクラを集めている。九尾モードに近いのかもしれない。
 両頬の三本の線が濃くなり、纏うチャクラも妖気を帯び始めている。
 少し離れたこの場所にも、ナルトから発せられる風が叩きつけられ、頬にピリ、とした衝撃が走った。
 風遁の何かを使うみたいだけど……何か嫌な予感がする。


「風遁――大玉螺旋弾」

 
 ……ん? 
 風遁。大玉螺旋丸じゃなくて?
 このタイミングでナルトが螺旋丸を使える事にじゃなく、最後に弾がついた事に疑問を覚える。
 手裏剣でもないんだよね。
 ナルトの周りにこれでもかというぐらい浮かぶのは、通常サイズの螺旋丸。大玉でもなんでもなく、手の平サイズ。

「躾のなってないアホ狸は調教してやんなきゃいけねーよなぁ」

 ニヤリ、とナルトが笑う。
 声が小さかったのか、どうやら守鶴は気付かなかったらしい。気付いたら、今頃もっと煩くなってただろうけど。
 

《これでもくらっときなァ。風遁・練空弾~!!!》


 守鶴が自分の腹を叩く。吐き出された空気砲弾。チャクラを練りこんだ砲弾は確か、対象者に当たると破裂するはず。
 弾丸口から幾つもの砲弾が発射され、それが一気にナルトへと襲い掛かる。ガマ親分も傷だらけになってた固有術だっけ。おぼろげな知識を引っ張り出しながら、私はこれから来るであろう衝撃に印を組み、結界の綻びに備える。
 ここは風影が収める里。少しでも外にこの凶悪なチャクラを漏らせば、討伐隊が編成されてもおかしくない。
 
「一尾の固有術…ね。聞いてたけどこの程度かよ」

 ナルトの、つまらなさそうな声が耳に届いた。
 砲弾が迫ってくるような緊迫した場面とは思えない程ゆっくりと、円を描くように右腕を上に上げる。その周りには、チャクラを凝縮された状態で漂う螺旋丸。
 
「――…発射」

 掲げていた腕を、ナルトが一気に振り下ろした。

 それを合図に、漂うだけだった手の平サイズの螺旋丸から光が放たれる。まるでレーザーのように守鶴が放った空気砲弾めがけて一斉放射。
 あの螺旋丸一つで、長さ10cm程のレーザーが10発。流石に守鶴の空気砲弾はレーザー1発で相殺は出来ないものの、2発目が当たると同時に宙で弾ける。
 ナルトの周りに漂う螺旋丸は目視で5,60。対して守鶴の砲弾は精々10発。螺旋丸二つで相殺。三つ目からは…。

「右腕、左足、右足…」

 ナルトの言葉と同時に、螺旋弾が守鶴を貫いていく。

「左腕」

 四肢を貫かれ、ドォォン、と音をたてながら守鶴が地面へと沈んだように見えたけど、チャクラの量は相変わらず。
 
《人間にしてはやるじゃねーか》

 大量の砂が動き、貫かれた守鶴の手足を保護する。さっきも防御はしてたけど、同じ場所に螺旋弾を何発も食らったのが貫かれた原因。一発の攻撃力は守鶴に劣るものの、数を重ねれば守鶴の防御は貫ける。
 守鶴が先ほどとは比べ物にならない大量の砂を防御にまわしているんだけど、それを見てナルトが面白そうに笑った。

「ご主人様、だろ? まずはおすわり。やってみようか?」

《――っ》

 立ち上がろうとしていた守鶴の胴体を、尾が貫く。ナルトのチャクラが九尾の尾を模り、固めたはずの防御の砂をあっさりと貫いた。
 貫く為に使った尾は一つ。残りの八の尾はくるりくるりと守鶴の周りを回ってる。

「名前はポチでいいか。ペットにアホ狸は可哀想だしなァ」

《……ヒィ》

 狂気に満ちていたはずの守鶴の瞳に怯えの色が浮かび、悲鳴が漏れた。それも仕方ないと思う。
 大玉螺旋丸を幾つも背負ったナルトが、九尾の尾で守鶴の頬を突く。手の平サイズの螺旋丸だけかと思ったら、幾つかの螺旋丸が合体して大玉サイズのものがあっさりと出来上がった。
 だから術の名前が大玉螺旋弾だったんだね。
 それは兎も角、流石にこの辺りでストップをかけないと。

「ナルト。話し合いは我愛羅も混ぜてくれ」

 このままだと我愛羅の知らない間に守鶴がポチになってしまう。せめて名前は我愛羅と一緒に考えなきゃね。



 
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