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困った許嫁

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第五章

「走り終わったら」
「整理体操とね」
「シャワーを浴びてね、シャワーの時は」
「薫さんもだね」
「入っていいわね」
「うん、じゃあ一緒にね」
「今日も入って」
 そしてというのだ。
「朝ご飯も食べて」
「学校に行こう」
「それじゃあ」
 こう話してだった。
 篤は薫との一日をはじめた、学校でも道場でも家でも彼は薫の言う通りにしていた。そして夜にだった。
 布団の中で隣に寝ている薫に言った。
「僕が若し薫さんの言うことに逆らったら怒るのよね」
「ええ」
 薫は篤の言葉に頷いた、寝着の浴衣はまた着ている。
「そうするわ」
「それだけ?」
「それだけよ」
 こう言うのだった。
「別に暴力は」
「振るわないよね」
「道場では投げて技を仕掛けても」
 古武術のそれはというのだ。
「けれど私貴方にも誰にも」
「暴力は振るわないね」
「絶対に」
 そんなことはしないというのだ」
「しないわ」
「そうだよね」
「ええ、だから嫌だって言われても」
 それでもというのだ。
「私は」
「それだけだね」
「あの、それでも聞いて欲しいの」
 怒るだけでそれ以上はないがというのだ。
「私は」
「そうなんだ」
「間違ったことを言うかも知れないけれど」
「僕のことを想ってだから」
「ええ、けれど本当に間違っていると思ったら」
 その時はというのだ。
「言ってね、私もあらためるから」
「そうするんだ」
「私も人間だから」
 それでというのだ。
「間違えるから」
「それでなのね」
「そう、言ってね」
「僕これまでそうしたこと言ったことないね」 
 篤はこれまでの、薫とはじめて会った頃からのことを思い出した。記憶を辿ってそれで薫に答えた。
「そうだね」
「そうね、けれどね」
「それでもなんだ」
「これからそうした時があったら」
「言えばいいんだ」
「そうしてね、私も貴方の言うこと聞くから」
「僕も言っていいんだ」 
 そう言われてだ、篤は驚いた顔になった。そうして薫に言った。
「そうなんだ」
「夫婦だから」
「それでなんだ」
「言ってね、今は許嫁でも」
 自分と同じ様に今は服を着ている篤に言った。 
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