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モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜

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未来編 数多の伝説を残した者達

 艶やかにして豊かな緑に彩られた、とある辺境の小国――ユベルブ公国。その国を統べる王族が住まう宮殿は、静寂に包まれた湖畔の滸に設けられていた。

「ねぇねぇ、伯爵っ! それで、それで『覇竜』はどうなったの!?」
「……数多の災厄を齎してきた邪悪なる覇竜はこの後、ついに御父上の剣に敗れたのでございます。その当時、大公殿下が使われていた雷名が……アダイト様にも受け継がれているのですよ」
「わぁ……! やっぱり父上は凄かったんだね! 伯爵も凄く頑張ってたんでしょ!? カッコいいなぁ……!」
「私の働きなど微々たるものです。この戦いの主役は御父上とクリスティアーネ……そして、ヤツマという素晴らしき男でした」

 その美しい景観を一望出来るバルコニーでは、金髪を靡かせる幼き公子が華やかな笑顔を咲かせている。父親譲りの黒い瞳は、自身を膝に乗せて英雄譚を読み聞かせている、憧れの「武人」の姿を映していた。
 「伯爵」と呼ばれているその武人は、天真爛漫な眼差しで自分を見上げている公子――アダイト・ユベルブを一瞥した後。日々政務に追われているかつての戦友を想い、遠い空を仰いでいた。

「……我々は共に歩み、共に生き、やがては共に死ぬ。故にその瞬間が訪れる時まで、力の限り戦わねばならぬのです。いずれはこの国を背負われるアダイト様にも、ご理解頂けることでしょう」
「んー……伯爵の話は相変わらずよく分かんないけど。要するに僕も、もっと強くならなきゃいけないってことだよね!」
「ふふっ……その通りでございます、アダイト様。力ある者には、相応の責任というものがあるのです。絶えずそれを背負わねば、その力に見合う者とは認められません。G級がG級たる所以も、各々の尽力を以てその雷名に相応しい力があると証明し続けたことにあるのですから」

 力ある者に課せられる責任。その全てに応え続けた者達は今、「伝説世代」の英雄譚としてその記録を大陸全土に残している。あまりの内容故に、多くの人々からは尾鰭の付いた御伽噺として受け止められているこの物語が、一切の脚色がない「真実」であることを知る者は少ない。

 物心がつく前から、父や伯爵の背中を見てきた幼き公子も、その「真実」に辿り着いた数少ない1人であった。彼が伯爵のようになりたい、と言っているのは単なる憧憬だけが理由ではない。

「僕も、果たせるようになるかな。弟や、妹達を守り抜くっていう……『長男』の責任」
「無論です。あなたには、偉大なる御父上と同じ騎士の血が流れているのですから。……必ずや、その責任に見合う名君になられることでしょう」

 彼は今年、7人兄妹の「長男」になるのだ。すでに若き公妃ことクサンテ・ユベルブは臨月を迎えており、第7子の出産を間近に控えている。大公が働き詰めになっているのは、彼女の出産までには側にいられるように仕事を済ませておきたい、という愛情故であった。
 クサンテ公妃の絶世の美貌と抜群のプロポーションは、何人産んでもまるで衰えていない。それどころか、愛する男の寵愛を一身に受けられる喜びに日々打ち震えている彼女の美しさは、第1公子の出産前からさらに磨きが掛かっている。ハンター時代から豊満だった彼女の乳房(バスト)臀部(ヒップ)は、より淫らに成長していた。

 そんな公妃と絶え間なく愛し合い、即位から毎年のように子宝に恵まれている御盛ん(・・・)なアダルバート・ユベルブ大公は、今日も多忙を極めている。そういう時に第1公子ことアダイト・ユベルブの面倒を見るのが、グランディーノ・クラウディス伯爵の日課となっているのだ。

(……ヤツマ、お前の言った通りだった。俺も、随分と変わったように思う。きっと、これからも変わっていくのだろうな。アダイトのように……皆のように)

 公子の頭を優しく撫でながら、遥か彼方まで広がる青空に視線を映したグランディーノは。共に幾つもの死線を潜り抜け、数多の伝説を築き上げてきた同期達を思い、微笑を浮かべている。
 その貌はまるで、ディノ・クリードと名乗っていた頃のようであった。

 ◇

 ――遠い昔。自然と共に生きる人々の歴史の中で。モンスター、と呼ばれる巨大な生物との命のやり取りを繰り返す、ハンターという者達がいた。
 ありとあらゆる武器を操り、人智を超越する存在と戦い続けてきた彼らは、己が狩ったモンスターの素材を元に、さらなる強さを手にしてきた。
 彼らはその強さを以て、より強いモンスターに挑んで行く。その繰り返しは、やがて大きな歴史の渦となって行くのだ。

 これは。その歴史の片隅に埋もれた、ほんの小さな物語から始まった英雄譚だったのである。
 
 

 
後書き
 今回は第1話冒頭のフレーズも取り入れつつ、主人公達の「その後」を描いてみる小話となりました! もしかしたらこの先もちょびちょび小話を書くことはあるかも知れませんが、どんな内容でも最終的にはこの未来編に行き着くことになるかと思われます(´-ω-`)
 ゲーム中でも古龍達は存在すら信じられてなかったくらいですし、そいつらをぶちのめしたハンター達の活躍も御伽噺みたいな扱いだったんじゃないかな……という解釈で、今回もアダイトことアダルバート達の後日談を書かせて頂きました。分かってる人達には分かってるから、きっとこれで良いのです( ´ ▽ ` )ノ
 ではではっ、この度も読了ありがとうございました! またどこかで皆様とお会い出来る日を楽しみにしておりまするー!٩( 'ω' )و
 
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