魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Saga27其は王を支える最後の使徒~Paymon~
†††Sideフェイト†††
ルシルとアイリが“T.C.”最後の襲撃犯として本局に襲来。死んだと思われていたルシルが実は生きていて、しかも“T.C.”を設立した犯罪者だったということにももちろんショックがあったけど、彼がこれまで歩んできた半生にはそれ以上のショックだった。
(別の次元世界じゃ、私とルシルは結婚してたとか・・・)
思うことはいろいろとあるけど、今は目の前の敵に集中しないと。ルシルとアイリが保管室にしまわれている魔力包有物から魔力を奪取するまでの時間稼ぎとして残った、ベルカ自治領ザンクト・オルフェンの技術者ミミル女史――本当の名前をパイモン・エグリゴリ、彼女を手早く倒さないといけない。
「貴様ら、手を止めるな! あやつを! ルシリオンを止めたいのであろう!? であれば、こやつに構っておる暇など無い!」
――アロンダイト――
“T.C.”のメンバーは、ルシルのスキルである“エインヘリヤル”っていう使い魔で構成されているようで、ディアーチェやレヴィ達もその1人だ。でも今は、私たちの味方として、パイモン、それに彼女の使い魔であり融合騎であり、そして“エグリゴリ”でもあったルルスとフラメルとの戦闘に協力してくれている。
私たちの邪魔をしてくるパイモンは今、ルルスとフラメルと融合していて、本来の白い髪は海のように青く、橙色の瞳は澄んだ空色に変わっている。服装はレディーススーツに白衣姿。槍のように長い柄の先端に三日月状の剣身を持つグレイブを手に、背中からは孔雀の尾羽のような翼を展開している。
「私はあくまであなた達の足止めなのよ~? 大人しくしていてくれたら~、痛い目に遭わずに済むわよ~?」
――深淵へ誘いたる微睡の水霧――
パイモンの足元からボフッと音を立てて発生したのは、薄紫色の霧。それを見てユーリが「眠りの霧です! 吸ってはいけません!」と警告してくれた。パイモンから距離を取りつつ霧を晴らすための魔法を発動しようとしたら・・・
「アイル!」「すずか!」
――コールドエミッション――
――エディンム――
誰よりも早く動いたのはすずかとアイルの2人で、通路いっぱいに拡がりながら向かって来る霧に対して冷気の波を放出。眠りの霧と冷気の波が激突して、即座にユーリが「ヴェスパーリング!」と、背後に浮かぶ魄翼から魔力の輪を十数発と斉射。ダイヤモンドダストみたいになった霧を粉砕しながらリングは突き進み、パイモンに次々と着弾して魔力爆発を起こす。
「こうも狭いと、味方の攻撃の余波だけでこちらが参っちゃうね」
「照準もブレるし、あんまりよくないよね今の状況」
私の言葉にアリシアも同意してくれた。こちらの人数は多く、頼りになる実力者ばかりだけど、人数が多すぎて逆にそれぞれの持ち味を活かせない状態だ。みんなもそれが判っているから、近接系の私やシグナム達は攻めあぐねている。
「良いことを思いついたわ~。あなた達を閉じ込めてしまえばいいのよ~。・・・真技~」
――創世結界:偉大なる蒼に染まる水星――
パイモンから発せられていた魔力が急激に増大したかと思った瞬間、彼女の足元から大量の水が生成された。逃げ場の無い私たちはそのままどうすることもなく飲み込まれた。私は息を止め、廊下を押し流されながらみんなの姿を確認する。みんなも同じように息を止めていて、この水から逃れる術を探すために辺りを見回しているけど、残念ながら私たちの居る廊下に窓もドアも無い。
(このままじゃ・・・溺死しちゃう・・・!)
私はまだ余裕はあるけど、キャロとフリードがまずそう。と、ここで視界が真っ白に染まって何も見えなくなる。閉じたまぶたの裏からでも判るほどの光量だったけど、すぐに収まったことで目を開ける。場所は変わらず水の中だけど、本局の廊下とは違って明るくなっているし、水面があることも確認できた。
(キャロを助けないと!)
私たちの誰よりも底に近いキャロとフリードを助けるために潜行しようとした私の脇を通って行ったのはエリオ。エリオはキャロを抱き止めて、特別救助隊でもあるスバルの引率で水面へと上がっていくのをしっかりと見届けてから「ぷはっ!」と水面に顔を出すと、雲ひとつとして無い青空が目の前に広がった。辺りを見回せばなのは達も水面に顔を出して、呼吸を整えている。
「あぁ、よかったわ~。ごめんなさいね~。私の創世結界って発動時に大量の水が出るのを失念していたわ~。さぁ出ていらっしゃいな~」
――瓦解せる喰飲の龍咆――
足元から全身を持ち上げられる感覚。何が起きるのかと思えば、海水の龍の舌の上に乗せられるようにして海面から脱出。その代わり海水の龍の開かれた口の中という、さらなる危険の中に移ってしまうことにはなったけど・・・。
「さぁもうこれで戦況は行き詰まりよ~。そこで大人しくしているといいわ~」
弾力のある水で出来た玉座に座るパイモンがそう告げた。確かに下手に動くと龍は口を閉じ、私たちを飲み込むだろう。そのまま口に含まれたままか、もしくはまた海の中に引っ張り込まれるか、どちらにしろタダじゃ済まないはず。
「そんなこと言ってもムダだよ!」
――雷神大輪斬――
左右対称の大きな斧頭が2つ、先端にスパイクという大戦斧形態の“バルフィニカス”の斧頭が水色の電撃刃を纏い、レヴィが舌の上で時計回りに一回転して海水の龍の首を刎ね飛ばした。
「そういうことですわね!」
――アサグ――
アイルの居る海水の龍の周囲にミッド魔法陣が10枚と展開されて、放射面から氷で出来た槍が8本ずつ、計80本が出現して龍を貫き、さらに凍結した。
「私たちは知っていますよ」
――エラガバルスキャノン――
槍のように変形している“ルシフェリオン”2本の穂先を上顎裏と舌に向けて火炎砲撃を連射するシュテル。龍を構成していた海水が一瞬で弾き飛び、蒸発した。
「リアンシェルトから厳命されているはずであります!」
――アンフィスバエナ――
大剣形態の“タラスクス”の半実体化している炎剣を純粋な炎へと変化させ、喉奥への刺突とともに剣状砲撃として発射。砲撃は龍の胴体を縦に真っ二つに裂き、蒸発させた。
「私たちへの攻撃は許されてるかもですけど・・・!」
――サイズディカピテイション――
ユーリは側に浮遊している2つの魄翼を大鎌へと変化させて、龍をバラバラに斬り裂いた。さらに大鎌の刃を大きく伸長させて、私たちを捉えている龍の上顎を一閃。頭部が斬り飛ばされたことで私たちが龍に丸呑みされる危険性が無くなり、私たちはそれぞれの方法で舌の上から飛び立った。
「ふん。なら消えるまでの間に暴れてやるまでよ」
――広域剣兵召喚レギオン・オブ・ドゥームブリンガー――
「ですね!」「そうね~♪」
――アクセラレイター――
「バルカンレイド!」「ラピッドトリガー!」
ディアーチェの40基にもなる剣状射撃と、アミタとキリエの高速移動をしながらの弾幕が、水の椅子に腰かけたままのパイモンに次々と着弾して爆発を起こしていく。
「(ここで続かないと・・・!)バルディッシュ!」
第5世代として完成の域に達した“バルディッシュ”を、ライオットザンバー・カラミティの進化系であるライオットザンバーⅡへと変形させ、魔力刃を伸長させての直接斬撃、「ジェット・ザンバー!」でパイモンを狙う。魔力爆発で起こった煙を裂き、その姿を見せたパイモンは一切ダメージを負っていない様子で、私の一撃に対して何のアクションも取らずに右肩に受け入れた。
「フェイト! そのまま押して!」
銃身の有る二刃の大剣レフトブレード、ソードブレイカー状の大剣ライトブレードという、二刀流形態ヴァラーフォームにした“フレイムアイズ”を振りかぶったアリサは、その両剣から長身の炎の刃を展開。
「アドラヌスセイバァァァァーーーー!!」
ジェットザンバーの上から二剣の炎熱斬撃を打ち付けたアリサ。パイモンの肩に乗っていたジェットザンバーが僅かに沈んだけど、パイモンの様子を見るにダメージが入った感じはしない。だからアリサと私はすぐにデバイスを引いて・・・
「「シュート!」」「ファイア!」
――エクセリオンバスター・マルチレイド――
――ガンブレイズアサルト――
――ストリームコメット――
なのはの“レイジングハート”と“ブラスタービット”4基からの砲撃5発、ティアナの強化魔力弾14発、アリシアの“ブレイブスナイパー”からの砲撃1発の邪魔をしないようにする。3人の攻撃もパイモンは水の玉座に腰掛けたままの状態で受け入れた。
「それなら!」
――コールダーランス――
「直接、物理攻撃を・・・!」
――神聖・振動拳――
「加えるだけだ!」
――エヒト・スペーアアングリフ――
すずかはスノートライデントフォームの“スノーホワイト”による斬撃を、スバルは神秘の乗った水色の魔力を螺旋状に噴き上げている“リボルバーナックル”でのパンチを、エリオはウンヴェッターフォルムにした“ストラーダ”による刺突突撃を、パイモンに最接近して打ち込もうとしたんだけど・・・。
「これはちょっと受けたくないわね~」
パイモンはそう言って、自身が腰かける水の玉座を蹴ってその場から離脱し、3人の直接攻撃から逃れた。魔力攻撃じゃなくて物理攻撃なら通用するのかも?という考えが生まれる。なら次は実証だ。私は“バルディッシュ”をアサルトフォームⅡに変形させて、「ソニックムーブ!」で接近を試みる。
「はあああああああああ!!」
――アサルトアックス――
打撃・斬撃効果を高めた状態での一撃をパイモンに向かって振り下ろせば、彼女はやっぱり回避を行って直撃を免れる。さらに追撃を、と宙を蹴って追い縋りながら連続で振っていく。
――ウイングロード――
「神聖・振動拳!」
――フォックスバット・ラン――
「フレアブレード!」
――ソニックムーブ――
「エヒト・スピーアシュナイデン!」
――フェルニゲシュ――
「リンドヴルム!」
――エルヴスムーブ――
「電神・・・! 斬 鉄 斬!!」
スバルが正円・楕円を交えた螺旋をウイングロードで描き、その上をアリサとすずかとエリオ、それにフラムとレヴィが高速移動で駆け、パイモンの上下左右からそれぞれのデバイスによる直接物理攻撃を繰り出す。
「ストラグルバインド!」「ルベライト!」
回避に移ろうとしていたパイモンを捉えたのは、なのはとシュテルのバインドだ。ほんの僅かでもいい。パイモンの動きが封じこめられた今、回避することが出来ないから、すべての攻撃をその身で受けた。手応えとしてはやっぱり魔術師を相手にしていると実感できるもので、鋼鉄を叩いているかのような感じが伝わってきた。
「くぅ・・・」
それでもパイモンは小さく呻き声を上げて、なのは達のバインドを力ずくで引き千切りつつ「痛いわ~」と周囲に水の球を12基と展開した。パイモンからは神秘を感じるけど、水からは神秘を感じない。たぶんだけど、攻撃は魔法、防御は魔術と、器用なことをしているのかも。私たちを傷つけないようにしないといけないっぽいし。
「させんぞ!」「させません!」
――ゲイアサイルLMG――
――ジャベリンバッシュ――
ディアーチェの高速砲連射と、ユーリの魔力槍一斉射出に巻き込まれないように私たちは一斉に離脱。2人の攻撃は水スフィアを破壊し、パイモンへの直撃弾はグレイブで迎撃されたことで当たっていない。
「ヴァルキリーが水流系完全機、ナーティアに比べれば私は遥かに弱いけど~、すこ~し本気を出せば傷付けずにあなた達を無力化できる術だってたくさんあるのよ~?」
――千変万化の水纏鎧――
眠たそうに蕩けていた瞳がキリッとつり上がったかと思えば、私たちの足元に広がる海から巨大な水柱が噴き上がってパイモンを飲み込むと、水柱は巨大な人魚のような姿へと変化した。
『さぁ、行くわよ~』
心臓付近に居るパイモンの腕の動きに合わせて人魚の両腕も動き、私たちに向かって手の平をかざした。
†††Sideフェイト⇒なのは†††
『どうかしら~? 有言実行をしてあげたわ~』
――飛翔する衝撃の飛沫――
ミミルさんが巨大な人魚の形をした鎧を纏って以降、私たちは5秒と同じところに留まることが出来なくなった。人魚の表面から全方位へと発射される水弾の分厚い弾幕は、魔術師化している私たちにはダメージを与えないけど、着弾時の衝撃は関係なく襲ってくるから吹っ飛ばされる。
『さぁ捕まえるわよ~』
――捕え縛る水霊の愛手――
水弾の弾幕から水の手による突撃へと変化。大きく開かれた手の平は、私たちが避けると同時にキュッと握り拳になるから、あの水の手は対象を鷲掴んで捕えるバインド系の類。ルシル君の影の触手カムエルと同系列だね。
「シュテル!」
――ディバインバスター・マルチレイド――
エクセリオンバスターに比べれば溜めが必要だけど威力は折り紙付きな、幼少の頃からお世話になってきた砲撃を5発とミミルさんに向けて発射。ミミルさんの鎧は攻撃とは違って魔術で発動されてることで簡単には穿てないけど・・・。
「ええ! 一気に焼き払いましょう!」
――カタストロフィノヴァ――
私の砲撃が僅かに空けた穴に、シュテルが両手に持つ“ルシフェリオン”の穂先から放たれたピンポン玉サイズの火球2発が撃ち込まれた。火球はすぐに大爆発を起こして、鎧を爆炎と黒煙で覆った。
「無駄よ~」
――逆巻く激流の暴威――
「逃げて!」
「下手に動くと危険ですわ! そこに居なさいな! 詠唱省略!」
――パピルサグ――
黒煙を薙いてきたのは水の渦。それは鎧の首と腰から発生していて、同じ高度に居るスバル、ティアナ、エリオ、キャロとフリードがターゲットだ。スバル達を飲み込むために高速で拡がりつつある渦。アイルが即座に展開した9枚の魔法陣上に召喚した大弓から射られたのは長大な螺旋矢9本で、矢は渦を穿ち、さらに急速凍結させた。
『これはまずいわね~』
凍結は渦だけに留まらず根元の鎧にまで拡がって行こうとしたけど、ミミルさんは鎧を解除することで凍結から逃れた。そこにフェイトちゃんとレヴィが高速移動で最接近して、“バルディッシュ”の直接打撃の「アサルトアックス!」と、“バルフィニカス”の直接斬撃「電神斬鉄斬!」を振るう。
「レヴィへの傷害は自由なのよ~?」
バインドで押さえる暇もなくミミルさんはグレイブを一閃。フェイトちゃんの一撃は受け入れて、レヴィの一撃は迎撃して“バルフィニカス”を砕いた。グレイブはそのままレヴィを寸断しようと走ったけど、フェイトちゃんが抱えてその場から急速離脱することで真っ二つから免れることが出来た。
ミミルさんは空いてる左手をフェイトちゃん達にかざして、追撃を行おうとしたから・・・
「させない!」「させません!」「させないわ!」
――アクセルシューター――
――バルカンレイド――
――ラピッドトリガー――
「仕方ないわね~」
「私も援護しま――む?」
私とアミタさんとキリエさんの援護射撃で、フェイトちゃん達への追撃を阻止することが出来た。シュテルはそこからさらに本命の一撃を放とうとしたけど、「シュテル!?」の体に異常が発生した。パキッという音とともにシュテルの頬、それに“ルシフェリオン”にヒビが入った。
「あぁ、ヒビが入ってしまいましたね」
「そんな冷静に言える状況なの?」
「ええ。私たちはエインヘリヤルです。どの道、先の長くない幻ですから」
落ち着き払った声で自分の顔にヒビが入ったことを確認したシュテルは、「王!」ってディアーチェを呼んだ。ディアーチェはユーリやアミタさん、キリエさんと一緒に、ミミルさんが攻撃に移らないように弾幕を張り続けてる。
『うむ。皆の者、聞け。我らの身体の構築限界も近い。ゆえに・・・』
『集束系を使える人に、私たちの体を作ってる魔力を利用してほしいんです』
集束系の魔法は確かに強力だけど、ミミルさんが集束を待ってくれるかどうかになる。そんな私やみんなの不安や、シュテルの顔から察することが出来たのかミミルさんは「どんな作戦でもお好きにどうぞ~」と、一切の攻撃をやめてくれた。集束砲の集中砲火を受けても無事である自信があるんだ。
「ふんっ。後悔するなよ、パイモン。貴様の喋り方や目障りな乳にはうんざりしておったのだ。・・・ユーリ。お前の魔力は我が使わせてもらう」
「はいっ、ディアーチェ! それでは皆さん! お先に失礼しますね!」
満面の笑みを浮かべて私たちに手を振るユーリの小さな体がゆっくりと輪郭を崩していく。そしてユーリを構築していた魔力はディアーチェの周囲を踊るように回って、彼女の上下左右に展開されたベルカ魔法陣4枚と、その放射面から伸びる4つの環状魔法陣の間で集束を始めた4つの魔力球に吸い込まれた。
「それでは私の魔力はなのは、あなたに託します」
「シュテル・・・」
「悲しむ必要はありません。いずれオリジナルの私たちとの再会が待っているはずです」
「ボクはオリジナルにだな! 姉っ子はどうせ集束系とか覚えてないだろ?」
「事実なだけに言い返せないのが割と悔しいかも」
「・・・レヴィ」
「私の魔力はアリサにあげるであります! しっかり役立てるでありますよ!」
「任せておきなさい。アンタの分までパイモンをシメてやるわ」
「・・・すずか。あなたは集束系は持っていませんでしたわよね?」
「だけど、アイルの魔力を無駄にはしないよ。私が必ず活かす」
「えっと・・・他に集束系を扱える方はいらっしゃいますか?」
「ディアーチェ達に比べればスズメの涙ほどしかない私とアミタの魔力を使ってくれる子は居るかしら~?」
「あ、ティアが集束砲使えますよ! ね? ティア」
「え、ええ。・・・私が責任を持ってお2人の魔力を使わせていただきます」
ディアーチェはユーリ、私はシュテル、フェイトちゃんはレヴィ、アリサちゃんはフラム、すずかちゃんはアイル、そしてティアナはアミタさんとキリエさん。みんなの体を構築している魔力を利用しての最大の一撃で、ミミルさんを墜とす。
(はやてちゃん達がルシル君とアイリを追ってからかなり時間が経ってる。・・・手遅れかもしれないけど、それでも早く追い駆けないと)
ミミルさんを包囲するかのように私たちは移動して、膨大な魔力に満ちたこの創世結界中を、そしてシュテル達の魔力を活かして、私たちは魔力の集束を開始した。シュテルは別れの言葉を口にすることなく私を一瞥した後、小さく笑って・・・その体を崩して魔力となった。
「シュテル。・・・またね」
「逃げんだろうな? パイモン!」
「逃げないわよ~? その代わり全力で防御させてもらうわ~。そして思い知りなさいな~。私が時間稼ぎに徹している以上~・・・あなた達は逃げられないということをね~」
ミミルさんの背中に展開されてる20枚の翼に魔力が集束され始める。集束量に関しては私たちの方が圧倒的に上だし、集束率ももう最高値だ。防御に入られる前に・・・先に撃つ。
「パワーブースト・ガンファイアフォース!!」
「「スターライト・・・!」」
「プラズマザンバー・・・!」
「ガラティーン・・・!」
「我の魔力をも喰らってゆけ! 煌き爆ぜよ、紫天の極光!!」
すずかちゃんの射砲撃強化効果が私たちの集束砲に乗った瞬間・・・
「「「「「ブレイカァァァァァァーーーーーーーーー!!!!」」」」」
――スターライトブレイカーex-fb――
――プラズマザンバーブレイカー――
――ガラティーンブレイカー――
――スターライトブレイカー・ブレイズストライク――
――エクス・カルス・リベレア――
私、フェイトちゃん、アリサちゃん、ティアナ、ディアーチェは同時に砲撃を発射。魔力膜で全身を覆ったミミルさんへ向かって突き進み、そして・・・。
「これほどの膨大な魔力の提供・・・とても感謝するわ~」
――奪い盗る大食らいの渦流――
再びミミルさんを中心に発生した渦。だけど今回は私たちへの攻撃としてじゃなくて、私たちの攻撃を薙ぎ払う防御として。しかもただ防御するんじゃなく「吸収!?」してるように見える。圧倒的な水量の前に一斉集束砲の威力はどんどん減衰していって、結果ミミルさんに到達する前に完全に消失した。
「そんな・・・」
「あれだけの魔力を込めた集束砲を・・・」
「完全に無力化した・・・?」
渦の勢いが徐々に収まり、ミミルさんの姿を視認することが出来た。渦を構成していた水流がミミルさんの手元に集まるといくつかの結晶と化した。私の桜色、フェイトちゃんの金色、アリサちゃんの茜色、ティアナのオレンジ色、そしてディアーチェの紫色の5つ。
「おのれ・・・。我の一撃すら防ぎきるとは・・・。なんと心残りよ・・・」
自分の体を構成してる魔力をも使って集束砲を撃ったディアーチェも消えてしまった。だけど私たちはまだ戦える。集束砲に使った魔力の大半がシュテルや創世結界の魔力だからだ。でも消費したことには変わらない。そこがネックになってくる。
「これ以上は無駄よ~。見て判るようにあなた達の魔力を水で吸収し続けてしまえるのだから~。それに~・・・あちらの戦闘も終わったようだから私たちも撤退するわ~」
ミミルさんがそう言うと同時、創世結界が解除された。元の本局の廊下に戻って来た私たちは「逃がさない!」とバインドを用意しようよしたんだけど・・・
――跳ね返す揺ぎ無き水塊――
私たちとミミルさんを隔てるように発生した水の塊。即座にスバルが「神聖・振動拳!」を、エリオが「エヒト・スピーアシュナイデン!」を、すずかちゃんが「コールダーランス!」を、アリシアちゃんが「ジャベリン・メテオ!」を水の塊に打ち込んだ。それでも波打つ程度で破壊できず、結局ミミルさんを逃してしまった。
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