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レーヴァティン

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第二百二十二話 採られない戦術その二

「どうやら」
「そこまでして勝つつもりはない、いえ」
 順一は考える顔になって述べた。
「民や国に負担をかけない」
「そう考えてか」
「していないのでは」
「焦土戦術はか」
「その証拠に街や村の中に敵はいませんね」
「ああ、森や山ばかりでな」
 久志は順一の言葉に答えた。
「そこでゲリラ戦術ばかりでな」
「街や村にはそもそも敵がいません」
「正面切って戦ってこなくても」
「それはです」
「街や村でゲリラ戦術なんかするとな」
「必然的に民を巻き込みます」 
 そうなってしまうというのだ。
「まさに」
「それがゲリラ戦術の狙いの一つだしな」
「敵兵を民と誤認して攻撃すれば」
「民の反感を勝ってな」
「さらにです」
「ゲリラが増えるな」
 反感を持った民がゲリラに加わっていってだ、この悪循環によりナポレオンのフランス軍はスペインで泥沼状態に陥ったのだ。
「そしてそれもな」
「ゲリラの狙いです」
 それを行う方のというのだ。
「何しろ区別がつきません」
「一般市民とゲリラはな」
「軍服を着ていないのですから」
「本当に一般市民と変わらないでな」
「その中にいてです」
「攻撃してくるとな」
「到底です」
 区別がというのだ。
「それが出来ないので」
「どうしても一般市民を攻撃するな」
「そうなります」
「だからな」 
 それでというのだ。
「一般市民から反感を受けて」
「そして彼等がです」
「ゲリラになるな」
「そうでなくともゲリラに協力します」
「そうなっていってな」
「泥沼に陥り」
 そしてというのだ。
「どいうしようもなくなります」
「それがゲリラ戦術だな」
「あのナポレオンもです」
「ゲリラにはどうしようもなかったな」
「二十万の大軍を送り込み」
「その二十万がな」
「惨たらしい殺し合いを演じました」
 ゲリラとだ。
「その酷さは絵画にもなっています」
「あれだよな、ゴヤの」
「そうです、あの絵です」
「ゴヤの絵って怖いからね」
 こう言ったのは留奈だった。
「何かこうね」
「人間の持つ醜悪さとかな」
「おぞましさを描いてるわよね」
「ゲリラ戦にしてもな」
「何か人が人を喰らう様な」
 実際にゴヤはそうした絵も描いている、人が描いた絵の中で最もおぞましいとされている程の絵である。
「そうしたね」
「醜悪さが出たな」
「人間の心の」
「それでゲリラ戦についても」
「かなりのものよ」
 実にというのだ。 
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