魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵
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本編
二十話~公開意見陳述会(後編)
side スバル
走り続け、狭い通路を抜けると大部屋に出た。
そこには………
「む、追いつかれたか」
三人の戦闘機人と………
全身血まみれの重傷を負ったギン姉がいた。
「あ、あ、あ………うああああああああああああああああ!!!!!!!」
あいつらが……あいつらが!!
「ギン姉を………返せええエエええエエエエエ!!!!」
カートリッジを4発ロードし、あたしは飛びかかろうとした……が、突然現れた鎖に捕まれて動けなくなった。
「ああああああああ!!!」
力任せに引きちぎろうとするが、できない。
前の三人の仕業と思い、見ると……
二人はあたしと同じ鎖にとらえられ、眼帯をした奴はものすごい警戒した顔であたしを見ている。
そして、
「貴様……衛宮、士郎…!」
この場にいるはずのない人物の名を呼んだ。
side 士郎
「…………間に合ったか」
私がスバルに追いついたのは、スバルが叫びだしたところだった。
どこから見ても冷静さに欠けている。あれでは逃げられてしまうだろう。だから私は、
「カートリッジロード!!」
[load cartridge.]
二発のカートリッジを使い、
「投影、開始」
ある物を投影した。
「捕えろ!天の鎖!!」
あの場の全員をとらえるために使ったのは英雄王のお気に入り、『天の鎖』。
神を捕える鎖である。神性を持たぬ者には丈夫な鎖程度にしかならないが、それはサーヴァントに対してのもの。人間相手ではいくら戦闘機人であろうと破壊はできない。
しかし、捕えることが出来たのは三人。眼帯をつけた少女にはよけられてしまった。
「貴様……衛宮、士郎…!」
その少女が私の名を呼ぶ。
「ほう、私の事を知ってるか。私の要求は一つ、その子を返してもらおう」
全身血まみれのギンガ。アレは治癒魔法や魔術でどうにかなるものではない。
だが、私には手がある。だが、ギンガは今のままでは長く持たないだろう。だから時間をかけている暇はない。
「断る、と言ったら……?」
「こちらも本気を出させてもらおう」
そういった矢先、投げナイフを10本投げてくる少女。
「IS発動!ランブルデトネイター!」
その言葉とともに爆発するナイフ。だが、瞬時に投影した干将莫耶で防いだ。
「今度はこちらの番だ。投影、開始」
投影したのは全長3Mはある大槍。その真名は……
「妖しき大槍!」
彼のバビロニア提督バリガンの使いし大槍。
血を吸わせると重くなり、威力が増していく。
真名を解放すれば槍から放たれる妖気でB以上の対魔力スキルを持たぬ相手の動きを鈍らせる。
その力は拘束宝具との相性が抜群だ。
「体が……いう事を聞かない!?」
「捕えさせてもらおう、魔獣捕えし足枷!」
そして私が使ったのはフェンリルを捕らえた伝説の紐。
魔獣の類に対し絶対的な拘束力を誇る紐である。
人に使っても効力があるわけではないが、エルキドゥに比べても速度が速い。
マルテで動けなくした後、グレイプニルで縛る完璧な展開だ。
「くっ………」
「ギンガは返してもらう。君たちの身柄も拘束させてもらおうか」
だが、
「ふっ、間に合ったか」
三人のうち縛られている赤い髪の少女……先ほど私を襲った子がそう言い放つと、
「お待たせ!」
突然床から水色の髪の少女が現れ、赤い髪の少女を抱くと再び床の中に戻っていった。
「なに!?くっ、投影開始!」
干将莫耶を投影し、再びの襲撃に備えようとしたが、
「あああああああああああああああああああああ!!!!!」
「なに!?」
エルキドゥの拘束を自力で解いたスバルが襲いかかってきた。
その体は傷だらけで………その傷からは部品のようなものがのぞいていた。
「まさか、スバル……君は……」
「あああああああああああああああああああ!!!」
拳を干将で受けるが砕かれてしまった。
まずい!このままではギンガが………
「スバル!すまん!」
残っていた莫耶の柄頭でスバルの鳩尾をおもいっきり殴る。
それでスバルは気絶した。が、
「あとはチンク姉とこいつだけ!」
見れば先ほどの水色の髪の少女がギンガを連れて行こうとしていた。
「させん!」
瞬時に干将莫耶を投影し直し、干将だけを投擲する。
「あぶなっ!?」
避けられるが、それでいい。
その一瞬でギンガのもとまで行くことが出来た。
「うわ!戻ってきた!?」
少女は干将莫耶に翻弄されている。この隙に撤退だ。彼女たちを捕まえられなかったのは誤算だが、ギンガの救出はできた。
通路を逆走していると、
「士郎君!」
なのはと遭遇した。
「スバル!ギンガさんも……すごい傷」
「早く医療班のところに!」
私が抱きかかえている二人を見てそういう判断を下した二人だが、
「スバルはそれで十分だ。だが、ギンガはそうも言ってられん。待っていたら手遅れだ」
「じゃあどうするんです!?」
ティアナが詰め寄ってくるが、
「私に任せろ。手がある。ワーカー、カートリッジ」
[yes,master.explosion!]
6発のカートリッジを使う。
なぜならば、ギンガを救うことが出来る宝具が一つだけある。
かつて背中を両断された私を救ったあの宝具が。
そのための魔力が必要だった。
「投影、開始」
創造の理念を鑑定し、
基本となる骨子を想定し、
構成された材質を複製し、
制作に及ぶ技術を模倣し、
成長に至る経験に共感し、
蓄積された年月を再現し、
あらゆる工程を凌駕し尽くし、
ここに、幻想を結び剣と成す―――――――!
「綺麗……」
「これは……?」
投影されたそれを見た二人がそれぞれ声を漏らす。
「これは全て遠き理想郷。彼のエクスカリバーの鞘だ」
「それとギンガさんの治療に何の関係が………?」
「まあ見ていろ」
アヴァロンをギンガに押し当てる。
するとギンガの体内に飲み込まれていき………
「!!傷が……」
見る見るうちに全身の傷が癒されていった。
「う……」
「ギンガさん!」
「ティアナ?ここは……」
目を覚ましたギンガ。すると目が隣で寝ているスバルに行き、
「スバル!どうしてこんな……」
「すまんな。それは私がやった」
「「「え!?」」」
三人とも驚く。まあ当然だ。
「全身傷だらけの君を見て暴走していたのでな。止めるために仕方なく攻撃した」
正確には拘束を無理やり引きちぎった際に追った怪我なのだが……
それにしても宝具から抜け出すとはずいぶんと無茶苦茶だな……
「そうですか……あれ?傷が……」
ここで怪我が治っていることに気が付くギンガ。
「士郎さんが治してくださったんです。それよりあれは一体…?」
「話はあとだ。スバルを医療班のところへ運ぶぞ」
「「は、はい!」」
ギンガにスバルを任せ、ティアナを抱えたなのはと共に飛行する。
(士郎君、魔術のこと、説明するの……?)
(そうだな……これ以上隠すのは難しいかもしれん。マスターと相談して決めるつもりだ)
(……そっか)
完璧、とまではいかないが今回は無事に済んだな。
だが、それはスターズだけの話だった………
side ランス
「ここは……六課か?」
令呪による強制転移できた先は六課の隊舎だった。だが……
「ひでえな……」
半壊状態で瓦礫だらけだ。そんな中に、
「シャマル!ザフィーラ!しっかりしろ!」
二人を見つけた。
「ランス、さん……?」
シャマルはかろうじて意識があるようだが、ザフィーラはかなり重症だ。
「治療する。少し大人しくしろ」
「私たちはいいから……レリックとヴィヴィオちゃんを……」
「悪いが出来ねえんだ。今の俺は最優先対象がお前ら二人の安全になっちまってるからな」
令呪の強制によるため、二人の治癒が終わるまではここから動くことはできないだろう。
そんな時、
「今から10分後、建物の広域殲滅を行う。我々の目的は施設の破壊のみだ。人間の逃走は妨害しない。速やかに非難を。無意味な血を流すことはしたくない」
ガジェットを介して話しているのだろう。そんな声が至る所から聞こえた。
「そうかよ……おい、ちょっとだけ待ってろ。どうやらあいつらの破壊もお前らを守ることに含まれているみてえだからな」
「まって!500はいるのよ!?それを一人でなんて………」
シャマルがとめてくるが、
「俺以外はもう戦えねえ。そんな状況で逃げ出すような男じゃねえんだよ、俺は!」
その怒声に一瞬怯むシャマルだが、
「ごめんなさい、私がいけなかったわ。みんなを、お願い……」
「ああ」
そして取り出すのはデバイスではなく、己の象徴たる呪いの朱槍。
その真名を解放する。
「さあ、ガラクタども。この一撃、手向けと受け取れ………!」
魔槍は周囲の魔力をも喰らい、力をためていく。十分にたまったところで上空に跳び上がる。そして……
「突き穿つ―――」
その名を言い放つ。
「死翔の槍!」
放たれた音速の槍は瞬く間にその進路にいたガジェットを破壊した。
「クランの猛犬をなめるんじゃねえよ!」
そう吐き捨てるように言う。
そして、残っているガジェットは数えるほどしかいないことを確認した。
そのあとすぐさま俺はシャマルたちの元へ戻った。
side ヴァイス
「はぁ、はぁ……」
襲撃前に隊舎に帰ってきていた俺は侵入してきたガジェットの撃退を続けていた。
「さあ、あと何体……だ……」
そこで見つけてしまった。小さな女の子を。
あの時のラグナと同じくらいの。
「あ、あ、……」
手が震える。敵だとわかっているのに狙うことが出来ない。
「……邪魔」
女の子が魔力弾を放ってきた。そこで俺の意識は途絶えた。
side ルーテシア
「この子でいいの?」
私はウーノに報告をしている。その間、女の子はガリューに抱いてもらっている。
「ええ。保護してくださってありがとうございます。それと、お嬢様。表の方にかなり危険な男が出たらしいので迎えを行かせますか?」
「いいよ。安全に転送できるとこまでⅡ型で飛ぶから」
「そうですか……」
早く戻らないと……
side キャロ
私たちが六課に戻った時には隊舎はひどい有り様だった。
「ひどい……」
そんな時、エリオ君が何かに気が付く。
「キャロ、あれ……!」
「あの子……ヴィヴィオ!?」
あの時の子がヴィヴィオを連れて行こうとしている。止められるのは私達だけ……!
「僕が行く!ブーストお願い!」
「うん!」
そんな時、私はあの人の言葉を思い出していた。
………………………………………………………………
『いいか、力を求めるんならこれだけは覚えておけ。激情に任せてめちゃくちゃに振るう力はただの暴力だ。暴力は傷つけるだけのものだ。だから、何が起ころうと激情に身を任せたりするなよ』
………………………………………………………………
そうだ。激情に身を任せちゃいけない。こんな時だからこそ心を強く持つんだ!
そう思い直した私は、
「エリオ君、覚えてる?『何が起ころうと激情に身を任せるな』って言われたの」
私に言われたエリオ君は驚いている。
「私たちの力は守るための力。助けるための力。そこに怒りとか、憎しみとかは有っちゃいけないんだよ」
「そうだね………ありがとう、忘れていたよ。でも、もう大丈夫。二人でヴィヴィオを助けよう!」
「うん!行くよ!ケリュケイオン!」
ブーストのためにありったけの魔力をエリオ君へ。
[Boost up,Full power.]
ブーストを受けたストラーダを手にエリオ君が突っ込む。
「その子を返せえええええ!!!」
その言葉に反応したあの子の召喚獣が反撃をしてきた。
そして、そのままぶつかり合い、エリオ君は弾き飛ばされた。
「エリオ君!」
助けに行こうとした時、私の横を青い閃光が通り過ぎた。
―――――よく言ったな。
そんな声が、聞き覚えのある頼もしい声が、閃光が通る際に聞こえた。
その閃光はエリオ君のところへ行き彼を抱きとめる。閃光はそこで止まった。
そうして見えたその姿は…………
初めて見た時持っていた朱い槍を携えた、私たちの兄のような存在だった。
side ランス
シャマルとザフィーラの治療を終えた時だった。
「あれは?クラールヴィント!」
遠くから飛んでくる物体に対してシャマルがサーチを行うと、
[あれはエリオとキャロ、それにフリードの魔力反応です]
と、教えてくれた。だが、エリオがフリードの上で突然立ち上がり、キャロと何か会話をしている。
悪いとは思いながらも強化のルーンを自身に掛けることで会話を聞くと、
「私たちの力は守るための力。助けるための力。そこに怒りとか、憎しみとかは有っちゃいけないんだよ」
「そうだね………ありがとう、忘れていたよ。でも、もう大丈夫。二人でヴィヴィオを助けよう!」
と、ずいぶん前に俺が教えたことについて話していたようだ。
だが、この会話の中におかしい所があった。
ヴィヴィオを助ける―――?
まさかと思った時、
「ランス!エリオが!」
ザフィーラの言葉に思考を中断し、示された方向を向くと、落下していくエリオが。
そこからは槍騎兵のクラス最大の武器たる速さを最大限に生かし、エリオの元へ疾走する。
その途中、すれ違う際にキャロを褒めておいた。
「間に合ったみてえだな」
目の前の二人を見据え、言い放つ。
「……ガリュー、帰ろう」
「おいおい、返してやると思ってんのか、お嬢ちゃん?」
「私たちがいますよ、お嬢様」
エリオを抱えた俺に上空から斬りかかってくる女が。
「加減はしてやる。死にたくなけりゃその子を返しな……!」
そう言い放ちながら魔槍を出し、振るう。
それだけで女の武装は砕け散った。
「……………!!」
「ディード!」
斬りかかってきたディードと呼ばれた女が後退していく。そして、
「これでどうだ!ISレイストーム!!」
もう一人がレーザーを広範囲に展開した。
だが、矢よけの加護を持つ俺は自分の意志でこのスキルを発動させることが出来る。
俺の矢よけの加護は飛び道具のほとんどが当たらなくなるものだ。
おまけに、こいつの展開している弾幕など俺にとってはお遊びみたいなもの。
この隙に奴を切り伏せてヴィヴィオを救出――――――
することは、できなかった。
なぜなら――――――
「ランス!?なぜ………」
俺の行動に驚いているザフィーラ。治療を施したとはいってもあれだけの重傷だったのだ。万全ではない。
だからこそ発動してしまったのだ…………
令呪の命令が。
命令は『シャマルとザフィーラを守ること』だった。
万全の態勢ならばあの程度が防げないシャマルやザフィーラではない。
だが、今は違う。だからこそ俺自身の意思とは関係なく、行動が行われた。
そして、それは逃亡時間を与えてしまった、という事でもあり………
「逃げられた……」
防ぎきると、召喚士の嬢ちゃんと二人組はいなくなっていた。
「ランスさん………」
キャロが駆け寄ってくる。
「すまねえ、エリオ頼む。俺は中の奴らを運び出してくるからよ」
抱えていたエリオをキャロに引き渡し、半壊した隊舎の中へ。
少し進み、外から見えなくなったところで
「畜生が…………!」
俺は、自分の不甲斐無さを呪った。
side フェイト
戦闘機人二人を相手しているが、戦況が良くならない。それより、気になることがあった。
「スカリエッティは何処にいる!どうして彼はこんな事件を起こす!」
「お望みならば、すぐにでもお連れいたしますよ」
「もちろん、貴女が我々に協力していただけるならですが」
何をふざけたことを………!
「彼は最悪の犯罪者だ!協力などするものか!」
私を憐れむような目で見ながら、短髪の戦闘機人が言う。
「哀しいことを言わないでください。貴女やあの少年にとってドクターは生みの親のようなものではないですか」
「貴女方の命はドクターがプロジェクトFの基礎を作ったからこそ「黙れ!」……」
長髪の戦闘機人の言葉を遮る。
聞いていたくなかった。あの男が生みの親だ、などと言う戯言は……
「仕方ありません。後日ゆっくりとお話をしましょう」
長髪の方がそういうと、周囲に謎の粒子が現れる。彼女たちはそれに包まれていく。
「ああ、それともうお気づきでしょうけど……」
短髪の方がそこまで行った時、彼女たちのところから光があふれた。
そのあとには彼女たちの姿はなく、
―――――――貴女では、私たちには勝てません―――――――
最後に彼女が残したであろう言葉だけが響いていた。
side オットー
咄嗟の判断によりお嬢様に転移をお願いしたことでギリギリ帰ってこれたが、
「ディード、ダメそう?」
「うん……完全に破壊されてる。それに、何か分からないけど修復妨害みたいなのもかかってる」
ディードの武装は破壊され、六課の破壊も出来なかった。
「油断してた……」
衛宮ランス。この前までの情報では、戦闘技術が異様に優れている魔導師、程度の認識だったが、
あの槍、ディードの武装をやすやすと砕くなんて異常だ。何かあるに違いない………
そういえば、あいつ確か……
そう思い、ガジェットに撮らせていた映像データを確認する。
その中には……
「ゲイ………ボルク!」
やはりだ。武器の名前を叫んでいるであろう奴の映像が。
それに………
「クランの猛犬をなめるんじゃねえよ!」
どうやら自分の通称であろうことを言っている。
こいつの正体を掴む手掛かりになるかな……?
side はやて
「いかかだったかな?ミッドチルダ管理局地上本部の諸君。ささやかながらこれは私からのプレゼントだ」
何がプレゼントや……
「これは技術促進を妨害し続ける管理局に対しての技術者からの恨みの一撃、とでも思ってくれたまえよ。とはいえ、私も人間を、命を愛するものだ。今日も無駄な血を流さず、人道的、合理的に敵を制圧できる技術を証明することが出来ただろう?」
確かに、私たちは何もできなかった……
「今日はここまでにしておくが、この技術が欲しくなったらいつでも私宛に依頼をしてくるといい。格別の条件でお譲りしよう。フフ、フハハハハハハハハハハハ!!」
今回は全て後手に回ってしまった、だが!
「まだ、終わりやない……機動六課は、まだ終わっていないんや………!」
まだやるべきことが残っているのだ。六課は終わるわけにはいかない……!
後書き
ようやく陳述会編が終了しました~
長かった………
後書きに書くことがあんまりなくなってきた………
ここからシリアスが続いていくので思い切って後書きでギャグでも……
と、これは要望がなければ没にしますが。
と言うわけですので、前書き、後書きでネタをやってほしい、とかいう要望があればやるかもしれませんのでよろしくお願いしま~す
それでは~
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