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吸血鬼になったエミヤ

作者:炎の剣製
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045話 学園祭編 自覚する差と芽生える覚悟

 
前書き
更新します。 

 


『それでは第二回戦第一試合を始めさせていただきます!』

朝倉の実況で会場が盛り上がる。
片や第一試合で愛衣を一発で場外に吹き飛ばした村上小太郎。
片や謎のフードの男と苛烈な試合を見せたシホ・E・シュバインオーグ。
まだ見た目は中学生と小学生といったところか?
しかし、それでもこの大会では他にもそう言った子達が沢山出ている。
見た目に惑わされるなかれ…。
きっと、この二人の試合……いや、すべての試合で勝利した者達は自分達をもっと楽しませてくれると……。
予選で敗れた者達は直に味わったからこそそう感じる。


『村上小太郎選手は一回戦で女子生徒である佐倉愛衣選手と戦いしましたが、まやもや今度も女子生徒であるシホ・E・シュバインオーグ選手との試合……はたしてどうするか?』

試合が始められる前の朝倉の実況が会場に響く。
当然視線は小太郎に向けられるが、小太郎はそんなたくさんの視線など意に介していなかった。




【決勝で会おう、ネギ!】




ライバルであるネギにそう誓いを立てた小太郎。
それがたとえ敵わないであろう相手であるシホだとしても、



―――それがどうした!?相手が強ければ強い程燃えるやろ!?そしてネギと勝負するんや!そのためには……何が何でも勝たせてもらうで?シホの姉貴!!



という強い気持ちで無言で虎竹刀を構えるシホに集中しながらいつでも仕掛けられるように体中の全神経を研ぎ澄ます。
そして、いよいよ試合の開示の合図が…………




『試合開始!!』


告げられた。
その瞬間、小太郎は最大限の自分自身過去最高での瞬動術をしたと確信しながらもシホの背後を取った……かのように思えた矢先であった。
一瞬の意識の空白。
次の瞬間には小太郎は意識を取り戻して自分が今どういう状況かと確認して分かった事はシホを通り抜けた後方でうつ伏せに倒れていた。

「ッ!?」



いつの間に!?どう攻撃された!?見えんかった!という考えも即座に捨ててすぐに立ち上がってシホから距離を置いてまだぐわんぐわんしている意識になんとか喝を入れて立ち直る。だが足が震えている。

『おおっと!?村上選手、今の瞬間になにをうけたのでしょうか!シュバインオーグ選手が竹刀を……いや腕だけを少し動かしたかのように私の目には映りました!村上選手、頭が揺れて足も震えています!』

朝倉の第三者の実況を聞いて小太郎は今一度シホを見る。
涼しい顔をして竹刀を構えている。
ただそれだけだというのに竹刀を喰らう前とおそらく頭に喰らったのであろう後では印象がまるで違うと悟る。
シホの姿はまるでリラックスでもしているのかどこか隙だらけであるように見える。
しかし、小太郎ははたとそこである答えに至った。

「(わざと隙を作って俺の攻撃を限定して誘導させて逆に隙を突かれて反撃された!?)」

その考えに至って小太郎は目を見開いて汗をひたりと流す。
まさにその通りであった。
シホは元来、衛宮士郎時代から自分から攻撃を仕掛けるのは苦手の部類であった。
いつも相手をするのは格上ばかり……。
やられる事など度々あった。
ゆえに色々な戦術を学び、血のにじむような努力をしてありとあらゆる戦法を先読みする心眼を会得した。
そしてその心眼を駆使して相手の攻撃を自分から隙を作って誘導させることによって誘導させた以外の場所には一切攻撃が行かない様にして鉄壁の構えを取るものである。

「(下手したら喰らって即死もありうる攻撃をいつも刹那の見切りでかわしとる言うんか!?しかもそれをするのがよもや不死の吸血鬼!?)」

小太郎の脳内は困惑で一色になる。
吸血鬼……まして不死者はその特性上どんな攻撃を喰らっても傷口は瞬時に回復してやられない、死なないというある種慢心にも似たような隙を誰かしら持つものというのは知識では知っている。
だからそこに勝機を見出せば倒せる手段さえあれば決して敵わない相手ではないのだ。
しかし、もしそんな人物が鉄壁や回避を選択する戦法を格上格下の相手問わずに取ってくるとしたら……それ以上に恐ろしいものはないだろう。

「へ、へへ……ええやないか」
「……?」

圧倒的な実力の差をたった一度の攻撃で分からされたはずだというのに小太郎は敢えて笑って見せる。
そうだ、シホの姉貴は慢心を絶対にしない……そう確信した。ならば!自分もそれに応えられるように強くなればええんや!と……。
いつか、いつかたとえ遠くとも、険しい道だとしてもいつか辿り着くと……ッ!

「(すまんなネギ……俺はここで負けてまうかもしれん……負けてしまう俺にネギはまた変わらず勝負してくれるやろうか?)」

一瞬の弱気の言葉が脳内に巡る。

「(でもな! ただでやられるほどに俺は、弱くはないんや!!)」

たとえ負けてもいい。
この試合を糧にしよう。いつかの未来に繋げる!そのために!!
小太郎は時間にして一分もしないでその考えに至り、笑みを浮かべながらシホと対峙することを拳を力強く握りこみながらも歓喜した。
戦士は自分の未熟さを、弱さを素直に認める事でさらに強くなれる……小太郎はその境地に立ったのだ。
そんな……小太郎の一種の覚悟をした瞳を見たシホはすぐに察した。

「わかったわ。小太郎、あなたはまだまだ強くなれる……私が強くさせてあげる。だから……!」
「ああ!やけどただではやられんで!いくで!!」

二人は今度は同時に仕掛けた。
小太郎の攻撃は相変わらずシホには当たらず空振りするが、それでも小太郎は笑みをやめない。

「ええな! シホの姉貴、強いやんけ!いつか……いつか絶対に倒したる!強くなるんや!もっと!シホの姉貴だけやない……どんな奴も倒せるほどに強くなって!!」
「いい心構えよ、小太郎!あなたはきっと私以上に成長して強くなる!」
「へへ……シホの姉貴からそう言ってもらえるなんて嬉しいわ……!」

小太郎はもう後の事など一切考えていない。全力を駆使してシホに挑んでいる。
シホもそれに応えるために今出せるだけの動きをして挑んでいる。

『なんということでしょうか……村上選手は攻撃をかわされ続けているというのに笑っています!そして両選手はそんな攻防のラッシュの中でもなにやら会話を繰り返しています!』

そこで解説席の豪徳寺薫は思わず涙を流しながら、

『いいですね村上選手は!自分の弱さを認めてなお果敢に挑む姿は武闘者としてとても素晴らしいものです!シュバインオーグ選手もそれに全力で応えてあげています!いいものが見れていますね!』

その解説とともに会場のあちこちから「村上君がんばれ!」「シホちゃんももう少し手加減してもいいよ!でも手だけは抜くな!」「どっちも全力で頑張れ!」と応援がなされていた。
ネギも「コタロー君頑張れ!!」と叫ぶ。

舞台で戦っている二人にはいまはそんな声援も聞こえていない。
しかしいい気分だと察するに余りある。

『村上選手はもう盛大に汗を流しています!対してシュバインオーグ選手はその細い体にどこにそんなスタミナがあるのか、涼しい顔を維持しています!そしてもう間もなく時間が迫っています!』

朝倉の終了間近の言葉が聞こえたのか、

「さて……それじゃもう決めさせてもらうわね?」
「はぁ、はぁ……ええで。また、バトルしような。シホの姉貴」
「ええ。強くしてあげるわ」

シホは小太郎の気持ちを汲んで無詠唱で無名の武器を錬鉄魔法で纏い、虎竹刀が薄く光らせながら次の一撃を放つために備える。
小太郎も最後の力を振り絞って今自身が出せる大量の分身体を作り出して一斉にシホに襲い掛かった。
そこからは一瞬だった。
シホの姿が掻き消えたと思った瞬間には分身体含めて小太郎本体の身体もその竹刀で体を斜めに叩かれて舞台に落下して、小太郎はその中でなんとか起き上がろうとしても最後には首筋にシホの虎竹刀の切っ先が向けられる。
小太郎は体力もすでに尽きているのであろう、笑みを浮かべながらも、

「俺の……完敗や……」

そう言って体の力を抜いた。
その声を聞いた朝倉は、

『試合終了!!第二回戦第一試合を制したのはシュバインオーグ選手だ!』

瞬間、巻き起こる喝采の嵐。
全力で挑んだ小太郎には「頑張った!」という数々の言葉。
それに全力で応えたシホに対しては「次も頑張って!」という応援の言葉。
さらにはもう立てないほどに消耗している小太郎をお姫様抱っこして会場を後にしようとするシホの姿に、シホ×小太郎というカプ厨が複数湧いていたとかなんとか……。
当然、小太郎はシホの腕の上で暴れていたのはご愛敬。




それを見学していた楓は小太郎を盗られたような気分の中で、しかし次の自身の相手はシホに決まったことに対して、

「(あそこまでコタローを圧倒するとは……相手にとって不足無しでござるな!)」

と闘志を燃やした。
ネギも、

「(コタロー君も強かったけど、やっぱりシホさんは別格です……!それでも!!)」

と、気持ちを逸らせながらも同じく闘志を燃やしていた。
しかし、それとは別として、ネギは千雨にある説を聞かされていた。
ネットに拡散されているとりとめのない噂話……。
それに関係しているのかどこを見ても『魔法』という単語もチラついている。
まるで誰かが魔法の事をばらそうと裏で動いているかのようで……。
ネギはそんな話題を当然不気味に感じている中で、

『古菲選手は腕の骨折の為棄権となり長瀬楓選手の不戦勝となります。ですのでお次は二回戦第十一試合、ネギ・スプリングフィールド選手 VS 高音・D・グッドマン選手の試合になります』

自分の名が呼ばれたためにネギは今は後回しにして舞台に戻っていく中で、アスナや刹那、そしてシホと小太郎にも声を掛ける。

「アスナさん達すごかったです! コタロー君も……」
「そんな顔すんなやネギ!」
「でも約束……」
「……まぁな。でも、俺は満足してるんや。まだまだ高みがあるなら目指す場所があるっていう明確なビジョンがな!強くなって、そんでネギ!そん時になって正式に勝負を挑んでお前を倒すで、ネギ!」
「ッ! うん!!」
「さて、それじゃネギ先生も頑張ってください。自分は小太郎を医務室に運んでいきますから」
「分かりました、シホさん。あ、でも……後で話いいですか?なんか、その……ネットに魔法の話題が拡散されているんです……」
「……それは本当ですか?」
「はい」

シホはそれを聞いて少し考えた後に、

「わかりました。それじゃ少し考えてみます。今は……」
「ちょ、もうおろしても平気やでシホの姉貴!」
「うるさい。筋肉痛起こしている体で文句言わないの!」
「うう……はずい」

そんな感じでシホと小太郎は救護室へと消えていくのであった。
それから救護室に到着すると待っていたと言わんばかりに、穏やかな顔をしながら千鶴が待ち構えていた。

「小太郎君。大丈夫だった……?」
「心配ないで千鶴姉ちゃん……ちょっと休めばすぐに治るで」
「よかったわ……。シホさんも、コタちゃんの気持ちを汲んでくださってありがとうございます」
「いえ…でも応えられてよかったわ」

それで小太郎も一応ベッドに寝かせた後に、

「それじゃ小太郎も少し休んだらまた戻ってきなさい。ネギ先生が拗ねるだろうから」
「分かっとる。負けてもネギの事は見届けなアカンしな」
「うん」

シホはそれで小太郎に関してはもう不安なことはないだろうと感じている時に、

「シホ様! このタマモ、応援に参りました!」

みこーんと現れたタマモにシホはちょうどいいかな?と思って、

「タマモ、ちょうどよかったわ」
「みこーん……?」

シホはタマモにある事を頼むことにした。



………………



それから少ししてタマモにある事を頼んだシホはまた別れた後に舞台に戻ってくると、そこにはなぜか裸になっている高音とそれを慌ててローブで隠そうとしているネギのあたふたした姿があり、高音はローブを受け取るとともにすごい勢いで叫びを上げながら控室へと消えていく様を見て、

「なにがあったの……?」

と、その場を見ていてネギに食ってかかっているアスナ達に事情を聞いたシホはお決まりの片頭痛を感じながらも、

「うーーーーん……まぁ仕方がないのかな? 高音さんも本気で挑んだ結果だったんだし」
「それはそうだけどさ……」
「でも、それに関連して魔法関係がヤバいわね」

そこにちょうどタイミングよく愛衣もやってきて、

「ネギ先生! シホさん!大変ですー!」

と、ノートパソコンを開いて現在の現状を見せてもらって、その混乱具合にネギと一緒に見ていた愛衣ももう涙目だった。
シホは深く悩みながらも、

「いまはタマモの報告を待つしかないわね……(行方が分からなくなったタカミチの居場所も特定してもらわないとだし……)」

まだ試合でやる事が残っているために超の事をタマモに調べてもらっているシホはもう一度タマモに念話をする。
そして、ひとまずはいまはエヴァと刹那の試合を注視しようという事で気持ちを切り替えたシホであった。


 
 

 
後書き
ちょっと念入りに小太郎目線をアップしてみました。
原作とは違う感じにしましたが大丈夫でしたか……?
エヴァ対刹那までは入らなかったです。 
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