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Fate/ONLINE

作者:遮那王
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第四話 キリトの決意

 
前書き
皆さま、あけましておめでとうございます。
年末年始、だいぶばたついておりましてなかなか投稿できませんでした。
今回は物語があまり進んでいません。
やはりちょっと忙しかったので…

とりあえずキリトとあの男が遭遇します!
 

 
第一層がクリアされてから数日が経ち、間もなく第二層もクリアされた。

最初は戸惑いのあったプレイヤー達も、徐々にこの世界での生活に慣れ始め、攻略に力が入ってくるようになった。

俺は第一層攻略後すぐに第二層の主街区「ウルバス」へと足を進め、二層の転移門の有効化を行った。
それからというもの、俺は再びフィールドへとおもむきレベル上げとボス部屋の探索に力を注ぐ日々が続いた。
そして、ボスの攻略には毎回のように参加し、そのたびに他のプレイヤー達から妬みや僻みの対象として見られた。

そんな日々が続いていく内にますます俺という“ビーター”の存在が有名になっていった。

俺が居るのは第二十層。
現在の最前線である。
攻略に参加しているプレイヤー達のほとんどがこの層に集中しているであろう。

俺はいつものようにボス部屋の探索と、レベル上げに精を出していた。
今俺の目の前にいるオオカミ型のモンスター、奴らは俺“達”に牙をむき威嚇をしている。

そして、隣に佇む少女は眉一つ動かさずにオオカミの群れを見つめていた。

“サーヴァント”

ボスモンスターを二体同時に相手取り傷つくことなく討ちとってみせた規格外の存在。
あの時、いくらボスが二体とも俺たちによってHPをいくらか減らされていた後だとしても、たった一人で倒してしまうほど彼女は強力なのだ。

そんな彼女を横目で見ながら、俺はあの日の事を思い出していた。

--------------

第二層の転移門を有効化したその日、あの声の主の事が気になって俺は第二層を突破したのにも関わらず第一層の「はじまりの街」へと足を運んだ。
相変わらずの変わらない風景を見ながら俺は目的の教会へ向かい、

そして教会の中であの男と出会った。

三十代半ばと見える風貌に、泥水の濁ったような眼。身長は180cmを超えており、ガタイもかなりしっかりしている。そしてなにより、全てを見透かしたかのような笑みがその男の表情に張り付いていた。

男の名は“言峰綺礼”。

そう名乗った男の口元は不気味に歪んでいた。

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「少年よ、君は何故サーヴァントを召喚できたのだと思う?」

目の前にいる男は唐突に聞いてきた。
正直そんなこと俺が聞きたいところである。
サーヴァントというシステムなんてベータテストには無かったし、それにコボルド王をなんなく倒したあの力、茅場晶彦が公正を期しているのならこのようなシステムを訳が無いし、バグであってもすぐに削除されるはずだ。
なのに削除されるわけでもなければ、GMからの警告も来ない。
はっきり言って異常だ。

「君は現在、何故と思っているであろう。
 何故、君がサーヴァントを召喚できたのか。
 何故、サーヴァントはあのような巨大なる力を持っているのか。
そして何故、茅場明彦はこのサーヴァントのシステムを付けたのか。
 考えれば考えるほど君の疑問は深まるばかりであろう」

コトミネは饒舌に話を進める。
俺は黙って彼の話を聞く。

「だが、これだけは言える。君は選ばれたのだ、聖杯によって。聖杯は無作為に君のようにマスターを選び出す。そして聖杯は君の願いを選んだ。困惑していることであろう。とりあえずは、ここがゴールという事になる」
「……ゴール?」
「そうだ。君はサーヴァントを召喚し、同時に聖杯戦争への参加権を手に入れた。しかしこれは一歩目に過ぎない。喜びたまえ、若きマスターよ。君の聖杯戦争は此処から始まるのだ」
「ちょ…ちょっと待ってくれ、聖杯戦争への参加?だから聖杯戦争ってのは何なんだ!?そもそも聖杯ってものが一体何かも分からないのに一方的に話を進めないでくれ!」
「ふむ…確かに素人である君には少し説明が必要かな?いいだろう、この聖杯戦争についての大まかなルールは説明しておいた方がいい。後々面倒なことになるのは厄介だからな」

俺はここからしばらくコトミネの話を聞いた。
聖杯戦争とは殺し合い、たった一つの願望機である聖杯を巡るバトルロワイヤル。
そしてその聖杯を求める人々によって召喚される使い魔。
それこそがサーヴァント。
サーヴァントとは何らかの偉業を成し遂げ、世界に認められた存在。
故に人間よりもはるかに強力な力を持っている。
そして彼らを縛るために必要だと言われている令呪。手に刻まれたそれはサーヴァントの主人になった証であり、三つの絶対命令権なのだそうだ。

大まかにではあるがそう説明を受けた。

「少年よ。此度召喚されたセイバーは最優ともいわれるクラス。生かすも殺すも君の腕しだいというわけだ。もっとも、素人の君ではその力を出し切れてはいないみたいだがね」

コトミネは笑いながらそんなことを言ってきた。
俺は先ほどの説明を受けている最中、サーヴァントのステータスを此方でも確認することができると説明を受けた。
試しにメニューウインドウにいつの間にかあったサーヴァントステータスの画面を見てみると、

【CLASS】セイバー
【マスター】Kirito
【真名】―――――
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E
【クラス別スキル】対魔力A・騎乗A
【保有スキル】直感A・魔力放出A・カリスマB
【宝具】
『――――――』

こう表示されていた。
何やら真名や宝具と書かれている部分はよく見えなくなっているのだが、それは今いい。
問題はステータス。
話を聞くには最も優れているほど“A”に近づき、最低は“E”だそうだ。
セイバーのステータスはすべて“E”。

話を聞くによるとサーヴァントも俺たちと同じように戦う事によって経験値を積み、そしてステータスを上げることができるらしい。

そして最後に言われた言葉、この言葉が今でも俺の中で響いている。

「果たして君がこの聖杯戦争…、生き残ることができるかは定かではない。だが、いかなる時代、いかなる歳月が流れようと、戦いをもって頂点を決するのは人の摂理。さあ君はその力をもって最強を証明したまえ」

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戦いをもって頂点を決するのは自然の摂理。

コトミネのその言葉が俺の胸の中で反響している。
現在俺はこのデスゲームで強くなるために必死で戦い続けている。
だがそれはあくまで自分が生き残るためである。決して人を殺そうとか力試しのためにレベルを上げているわけじゃない。

だがコトミネは言った。

戦え、殺し合え、最強を証明しろ。
それこそが人の自然の姿なのであると。

何故俺がこの聖杯戦争の参加者となってしまったのかは分からないまま。
けれど俺がこの殺し合いに否応なしに参加させられてしまったのは事実だ。

そう考えているうちに、目の前のオオカミが俺に向かって突進を仕掛けてきた。
考え事をしていた俺は、少し焦りながらもそれを受け流し、横腹に剣を突き刺す。
すると叫び声とともにオオカミはポリゴン状となって消えてしまった。
他のオオカミたちも同様に数に物を云わせて突っ込んでくる。
俺はそれに慌てず、冷静に対処しながら着実に数を減らしていった。

そして再び彼女を見ると、俺が一体倒すうちに彼女は三体ものオオカミを見えない剣で切りつけ、そして消滅させていた。

彼女とはこれまで何度も共に闘ってきた。なので今更驚くことはない。
なのだけれど、相変わらず彼女のスペックは明らかに俺達プレイヤーとはケタ違いであるとここに証明された。

三十分後、オオカミたちは全て駆逐され辺りには俺とセイバーしかいなくなった。

「マスター、考え事をしながら戦うのは危険です。あまり油断しないでください」

彼女はそう言うと構えていた剣を降ろした。

何らかの偉業を成し遂げたという存在、それこそが英霊。
だとすると、先ほどまで目の前にいた彼女も何か過去に偉業を成し遂げていたのか。
彼女も聖杯に何らかの願いを叶えるためにこの聖杯戦争に参加しているのだという。
彼女が叶えたい願いとは何なのか、それは俺には分からない。

だけど、

「俺は死なない。絶対にクリアして現実に帰ってみせる」

その言葉は、俺に背を向けている蒼いサーヴァントにも聞こえているであろう。


今俺が優先すべきことはこのゲームをクリアすること。
そして何としてでも現実世界に帰るのだ。

俺がサーヴァントを召喚したのは、幸運なのかそれとも不運だったのかは正直分からない。

だけど、今は生き残らなければならない。
生きて生きて生き抜いて、そしてゲームクリアをするのだ。

そう俺は誓い、ゲーム攻略のために再び足を踏み出した。
 
 

 
後書き
はい、ちょっと短いですが今回は此処まで。

とりあえず次回は黒猫団の話か、アスナのオリジナル話を入れたいと思います。

 
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