二度の新婚旅行
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第一章
二度の新婚旅行
松波尊は妻となった理恵腰まである黒髪を後ろで束ねた鋭い目と小さな唇を持つ一七〇近いすらりとした長身の彼女と共に新婚旅行に行こうと自分達が住むマンションの部屋の中で話した。彼は背は一七二程でやや茶色がかった髪の毛を短くしていてはっきりした目の面長の痩せた青年だ。彼の職業はサラリーマンであり妻はOLである。
「この時の為に二人で貯金したからな」
「六十万あるわね」
「これだとな」
六十万もあればというのだ。
「もうな」
「かなり贅沢な旅行が出来るっていうのね」
「ああ、豪華なホテルに泊まってな」
そうしてというのだ。
「美味しいものを食べて」
「最高級のディナーね」
「それであちこち行ってやって」
「贅沢な旅を楽しめるのね」
「それが出来るだろ、海外にでも行って」
尊は笑って話した。
「贅沢な旅を楽しむか」
「そのつもりなのね」
「ああ、そうしような」
「旅行のことは私に任せてくれる?」
理恵は夫の言葉を受けてこう申し出た。
「そうしてくれる?」
「理恵にか」
「ええ、そうしてくれるかしら」
「何か考えがあるんだな」
「ちょっとね」
理恵は尊に微笑んで答えた。
「そうなの」
「どんな考えなんだ」
「それは後のお楽しみよ」
「旅行の時にか」
「そうしていいかしら」
「まあ楽しい旅行になるならな」
それならとだ、尊は理恵に答えた。
「それならな」
「ええ、それじゃあね」
「理恵任せるな」
「それじゃあね」
こうしてだった。
新婚旅行のことは理恵に一任された、そしてだった。
後日理恵は尊にこう言った。
「ハウステンボスに行きましょう」
「あれっ、海外じゃないのか」
「ええ、あそこにね」
長崎のそちらにというのだ。
「行きましょう、それで長崎市にもね」
「行くんだな」
「そうしましょう」
「何で海外じゃないんだ」
尊は自分が言ったのにとだ、理恵に口をややへの字にさせて述べた。
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