八条学園騒動記
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第六百三十話 時代も場所も越えてその十三
「お水を作れる装置もあるから」
「あれもあるから」
「だからね」
それでというのだ。
「お風呂もね」
「今は入られるの」
「そうなの」
「それはいいことね」
「それでサウナもあるから」
折り畳み式のそれがというのだ。
「だからね」
「モンゴルの草原に帰ったら」
「サウナも買ってね」
「それに入るのね」
「ええ、ちなみに今モンゴル人洗濯もよくするけれど」
「常識でしょ」
「昔は洗濯しなかったの」
そうだったというのだ。
「法律で禁じられていたの」
「法律でって」
「その分お水使うしね、ちなみに服で手を拭いていたわ」
「洗濯もしないで」
「だから相当汚れていたけれど」
それでもというのだ。
「洗濯はね」
「しなかったのね」
「清らかなお水を汚すということで」
そうした考えでというのだ。
「だからね」
「法律で禁止していたの」
「そうだったみたいよ」
「お水少なかったとか」
「だって草原だから」
それ故にというのだ。
「見渡す限りのね」
「川少ないのね」
「雨もね」
即ち降水量もというのだ。
「かなりね」
「少ないのね」
「だからすぐ近くに砂漠があったりするのよ」
「草原からちょっと行けば」
そうすればというのだ。
「もうね」
「砂漠なのね」
「私のいた場所でも何千キロか進んだら」
そうすればというのだ。
「砂漠よ」
「それは少しじゃないでしょ」
「それ位馬だとすぐよ」
「すぐって一ヶ月はかかるでしょ」
「それ位はね」
「草原だとなのね」
「すぐよ」
一ヶ月で何千キロ進む位はというのだ。
「私達にとっては。兎に角砂漠はね」
「草原がなるものってことね」
「川がなくて雨が少ないから」
即ち水がないというのだ。
「だからね」
「すぐに砂漠になるのね」
「そうなの、そんな場所だから」
「お洗濯でお水を無駄にするな」
「そうした考えだったのよ」
「そこもワイルドね」
コゼットはあらためて思った。
「つくづく」
「そこでもワイルドなのね」
「文明と社会はあっても」
それでもというのだ。
「やっぱりね」
「草原の生活はワイルドっていうのね」
「自然と一緒に暮らしているから」
「野生っていうのね」
「そう思ったわ」
コゼットの口調はしみじみとしたものだった。
「あらためてね」
「じゃあ私は野生児?」
「まあそうなるわね」
「そうだったのね」
「私から見るとね、ただね」
それでもとだ、コゼットはナンに言った。
「それも暮らしね」
「人のっていうのね」
「そう思ったわ、文明の中で暮らすだけじゃないでしょ」
人の暮らしはというのだ、これは多様性そのもの中に存在している連合にいるからこその言葉であった。
「やっぱり」
「ええ、街や村にいてね」
「そこで暮らしてお仕事するだけじゃないわね」
「だからね」
それでというのだ。
「私もね」
「そう言うのね」
「ええ、それであんたも」
「大学を卒業したらね」
「お国に戻って」
「独立すると思うけれど」
それでもというのだ。
「草原でね」
「暮らすのね」
「遊牧してね」
これは当然だった。
「そう、そしてね」
「そのうえで」
「結婚もして」
「子供ももうけて」
「暮らすわ」
コゼットに笑顔で言ってだった。
ナンは彼女と共にクラスに戻った、そのうえでまた店の仕事に入った。
時代も場所も越えて 完
2021・8・2
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