レーヴァティン
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第二百二十話 ハイランダーの影その十
「豊臣秀頼さんを匿ってね」
「安全に暮らしてもらう為にか」
「色々造っておいたらしいね」
「だからか」
「色々な仕掛けのあるお城だけれど」
石垣は反り返り登れない様になっておりしかも石垣に伏兵を置きやすい様にもしてあるのだ。そうしたことも考えているのだ。
「その中でね」
「秀頼さんを匿った時もか」
「考えていたらしいね」
「それでか」
「抜け道もね」
「用意していたんだな」
「そうみたいだね、まあね」
淳二はさらに話した。
「残念ながらね」
「秀頼さんは大坂の陣でな」
「そうなったみたいだからね」
「生きてたって話もあるな」
「大坂城の抜け道から逃れてね」
それでというのだ。
「そうした話もあるよ」
「ここでも抜け道だな」
「だからね」
「抜け道は大事か」
「安全の為にね」
即ちいざという時の為にというのだ。
「逃げ道はね」
「あらかじめ置くべきか」
「例え普段は何もなくても」
「何かある時だってあるしな」
「その時に逃げて」
そしてというのだ。
「難を逃れたらね」
「それだけで違うしな」
「生きていればね」
そして身が安全ならというのだ。
「それでだよ」
「抜け道も作っておいて」
「いざって時は使うことだよ」
「用心ってことだな」
「そうだよ、だからローマの宮殿にももうけたし」
「ここでもか」
「あるんだ、それで相手の王様はね」
敵である彼はというのだ。
「それを使って逃げたよ」
「それでスコットランドに行くだろうな」
「今度こそね、ただ自分だけ逃げるんじゃなくて」
ここで淳二はこうも言った。
「家臣や兵の人達もね」
「連れてだな」
「見捨てないで機を見て逃げる様に言ってるみたいだし」
「家臣や兵は見捨てないんだな」
「そのことはいいと思うよ」
「いるからな、自分だけ助かろうとする奴」
久志は嫌な顔をして言った。
「他の人間は見捨てて」
「いるよね、本当に」
淳二もその通りと頷いた。
「そうした奴は論外だね」
「ああ、けれどな」
「敵の王様は違ってね」
「兵にも逃げる様にか」
「言ってるから」
「それで後詰めの兵達も逃げていってるな」
「徐々にね」
そうしているというのだ。
「そうしていっているよ」
「見事な退き方でござる」
進太も言ってきた。
「頃合いを見て守りつつ、宮城の地の利も生かして」
「そうしてだよな」
「退いているでござる、また抜け道があると思われる部屋も」
「守っているな」
「そうしているでござる」
「後詰めの指揮官もしっかりしてるな」
「そう思うでござる」
進太にしてもだ。
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