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江戸腫れ

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第二章

「江戸にいる間はな」
「白米を食うな」
「他のものはよい」
「そうしてだな」
「ふんだんに食う」
 そのうえで職務に励むというのだ、こう言って実際にだった。
 富松は秋田藩江戸屋敷で務めながら朝昼晩の白米を楽しんだ、おかずの漬けものだの味噌汁だのはどうでもよく。
 白米を食いまくった、そしてその美味さを楽しんだが。
 身体がだるくなってきた、それで同僚達に言った。
「近頃どうもな」
「身体がだるい様だな」
「力が入らぬな」
「そうなってきたか」
「これはあれか」  
 伝え聞くその話をした。
「江戸腫れか」
「そうではないか」
「気をつけるがいい」
「江戸腫れは厄介だぞ」
「それで死ぬ者もおるからな」
「そうだな、ここはより白米を食ってな」
 同僚達の言葉を受けつつ述べた。
「それでだ」
「力をつけるのだ」
「白米程よいものはないからな」
「たんと食うのだ」
「やはり食ってこそ病に勝てる」
「そうだな、より白米を食おう」
 江戸腫れを感じてそうすることにした、それで一層白米を食ったが。
 富松の江戸腫れはさらに酷くなった、動くことは出来るが。
 足がむくんできた、それでこう言った。
「ううむ、歩けるうちにな」
「秋田に戻りたいか」
「そうしたいか」
「あと少しで務めが終わる」
 江戸屋敷でのそれがというのだ。
「殿が戻られるからな」
「それで、であるな」
「あと少し持っていて欲しい」
「そう思うな」
「どうせ死ぬなら故郷で死にたい」 
 その秋田でというのだ。
「だからな」
「あと少しで務めが終わる」
「死ぬにしても秋田でだな」
「生きていれば秋田で養生したい」
「故郷でだな」
「江戸はこの上なくよく白米も美味いが」
 それでもというのだ。
「やはりゆっくり養生するなら」
「故郷に限る」
「馴染んだ自分の家でな」
「だからだな」
「秋田に戻るまで歩ける様でいたい」
 こう言った、そしてだった。
 彼は何とか歩けるまま江戸での務めを終えることが出来た、それでだった。
 藩主の佐竹義和について行ってそのうえで秋田に戻った、最初は歩くのも辛く周りも心配していたが。
 江戸を離れるにつれて次第に身体がよくなってきた、足のむくみが取れてきて身体のだるさもなくなってきた、それで同僚達に道中の休憩の時共に饅頭を食べつつ話した。
「不思議とな」
「よくなってきたな」
「随分辛そうだったのが」
「それが治ってきておるな」
「ようやく歩ける位だったのが」
「うむ、歩くのも苦でなくなり」
 饅頭を食いながら話した。 
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