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物語の交差点

作者:福岡市民
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とっておきの夏(スケッチブック×のんのんびより)
  禁断の邂逅

宮内姉妹は突如として現れた謎の集団と話しをしていた。
その正体は九州・福岡の高校に通う美術部員の御一行。「とっておきの夏」に出会う旅をしているのだという。


ひかげ「へー、福岡から来たんだ」

空「」ウン

れんげ「ひか姉、福岡って遠いん?」

ひかげ「ああ、東京に行くよりずっと遠いぞ」

れんげ「じゃあ沖縄とどっちが遠いのん?」

樹々「うーん、さすがに沖縄よりは近いんじゃないかなあ」

れんげ「そうなんなー。うちはまだ町と沖縄しか行ったことないのん。世界は広いんなー」フヌー


納得したように言うれんげを見て樹々は『賢い子だなあ』と思った。


ひかげ「てか、なんで旭丘(ここ)に来たの?九州にもいい場所がいっぱいありそうなもんだけど」

木陰「この場所が今回の旅のテーマに一番合っていたからよ。そうよね、麻生さん?」

夏海「その通り!今回のテーマは“とっておきの夏に出会おう!”。簡単にいうと未知の世界で未知の領域に触れる旅なんよ」

渚「私はもう出会ったけどね。ほら」スッ


渚はれんげが持っている虫取り網を指さした。


ひかげ「思いだした、タガメだタガメ!!」

れんげ「ひか姉、タガメって珍しいのん?」

ひかげ「珍しいもなにもめっちゃレアな虫だ!国宝級だよ!!」

朝霞「へえ、そんなに珍しい虫なんですね!」

渚「環境省のレッドリストに絶滅危惧種として登録されているぐらいだからね。かくいう私も初めて見たよー!」

空(おお、栗原センパイが珍しくはしゃいでるのだ。)


普段は物静かな渚だが、珍しい虫との邂逅(かいこう)にわずかながらテンションが上がっている。空はそれを敏感に感じ取っていた。


ひかげ「わ、私も初めて見た!! え!? あ!? これどうする!?」


一方のひかげはテンションの振り幅がメーターを完全に振り切ってしまったようだ。


ケイト「焦ってはイケマセーン!()いては事を仕損じマース!!」

れんげ「落ち着くん!ひか姉はしゃぎすぎなん!!」

ひかげ「はっ!…め、面目ない」


ケイトとれんげの呼びかけでひかげはようやく我に返った。


れんげ「とりあえず捕まえてみるん」

ひかげ「あっ、口には気をつけろよ。刺されたら腫れるからな!」

れんげ「き、気をつけるん………!」


無造作に手を伸ばしてタガメを捕まえようとするれんげにひかげが忠告した。


渚「へえ、昆虫の知識があるんだね」

ひかげ「ま、まあ虫取りの極意を幼馴染に教えるくらいには…」


それを見て感心した渚が話しかけると、ひかげは照れたような笑顔を見せた。
同じ昆虫愛好家として2人は早くも意気投合したようだ。


れんげ「おおー!」


忠告に従いタガメを側面部から持ったれんげが感嘆の声をあげた。


葉月「あっ、思ったより大きい…!」

れんげ「すごいんなー。カブトムシより大きいん!」

渚「水生昆虫のなかでは日本最大級だからねえ」

れんげ「なー、これ飼えるん?」

ひかげ「育てるなら餌とかも捕まえないと。けっこう大変だぞー?」

れんげ「そうなん?じゃあこいつは逃がしてあげるん」

ひかげ「え、なんでだよ!? もったいない…」

れんげ「ひか姉が『飼うのは難しい』って言ったん!だからもっと飼育が上手になってから飼うん」

渚「うん、賢明な判断だね」

夏海「そこまで考えとるったい!すごかあ!!」


渚と夏海が感心して言った。


れんげ「その代わり写真を撮ってほしいのん!記念写真なん!」

ひかげ「OK!じゃあ後で私も撮ってくれよ」

れんげ「了解なん!!」


ひかげがズボンのポケットからケータイを取りだしたときだった。


空:おお、携帯電話だ。

葉月「あら、おしゃれな携帯ね」

夏海「しかも最新の機種やん!」

ケイト「ハーイ、私も久しぶりに取りだすトコロを見マシタ!」


ぞろぞろと美術部の一年生メンバーがひかげの周りに集まってきた。


ひかげ「え、なに?なんですのん?」


これには流石のひかげも困惑ぎみである。


夏海「あっ、ごめん。あたしら普段そげなもん(そんなもの)持ち歩かんけん、携帯電話を日常的に持っとる人が珍しかとよ」

葉月「文明の利器から離れた生活をしているから、つい…」

空:私たちは非文明人なのだ。

ひかげ「そうなんだ…ほら、れんげ。撮るぞー!」

れんげ「あい!」


パシャ


れんげ「次はひか姉の番なー」

ひかげ「おー、頼んだ」


パシャ


2人はそれぞれいい表情で写真におさまった。


れんげ「なんでウチが捕まえたんにひか姉も自慢げなポーズなん?」

ひかげ「自慢するからに決まってんじゃん」

空「」ハッ!


そのとき、空が何か思いついたように持っていたショルダーバッグからスケッチブックと鉛筆を取りだした。


葉月「梶原さん、どうしたの?」

空:タガメ…スケッチする。

ケイト「Oh! 空の必殺技“Sketch”デスネ!コノ技をかけられたが最後、相手は身動きが取れなくなり更には時間も取られマース!」

夏海「それって必殺技でもなんでもないような…」

渚「空君、スケッチはさっき撮った写真を見せてもらえばいいんじゃないかな。暑いし、まずはタガメを逃がしてあげようよ」

空:分かった。あとで写真見せてくれる?

れんげ「了解なん。じゃあ逃がしてあげるーん!」


そっとタガメを用水路に放してやる。タガメはあっという間に潜っていき、水底の土の中へと消えていった。


ひかげ「それにしても(あち)いなあ。写真も撮ったし、駄菓子屋にでも自慢しに行くかあ」

ケイト「Oh! 駄菓子屋ト言エバ、ニッポンのソウルフードストアですネー!」

れんげ「お姉さんたちも一緒に来るん!」

夏海「えっ、よかと(いいの)?」

ひかげ「ここで会ったのも何かの縁だしさ。一緒に行こうよ」

空:駄菓子屋、楽しみ………。 キラキラ

朝霞「ありがとうございます。嬉しいですねえ」

木陰「そうね、こうやってすぐ仲良くなれるんだもの。田舎ってこういうところがいいわよね」

れんげ「これで話しは決まったん!ひか姉、早く駄菓子屋行くーん!」


一行は駄菓子屋に向かった。



ーー
ーーー


れんげ「それでなー、ひか姉の言うとおり珍しい虫が本当にいたのん!」


れんげ御用達(ごようたし)の駄菓子屋「かがや」。老舗の駄菓子屋だ。
れんげはその店主である加賀山(かがやま)(かえで)に件の写真を見せながらタガメを捕まえた話しをしていた。


楓「おー、タガメか。すごいじゃん」

ひかげ「はっはっはー!そうだろそうだろー!!」


感心しきりの楓にひかげもすっかり得意顔である。


れんげ「そして遠いところから来たお姉さんたちにも会ったん!」

樹々「初めまして…」ペコリ

楓「あ、どうも」ペコ


まだぎこちない笑顔を見せつつ樹々がお辞儀をする。楓も同じように会釈を返した。


ひかげ「れんげ、どうだ?私だってちゃんと夏海も知らないような極秘スポット知ってただろー。少しは見直したかー?」

夏海「えっ、あたし!?」

一同「……えっ?」


突然名前を呼ばれて驚いた夏海に固まる一同。


ひかげ「えっ、なに?君も“夏海”って名前なの?」

夏海「うん、あたしは麻生夏海!10月の生まればってん(だけど)漢字は“夏の海”って書くんよ」

れんげ「なっつんと同じ字なん!」

楓「なんだ、まだ自己紹介してなかったのか」

葉月「そういえばまだでしたね」

ひかげ「うん、思った以上に意気投合しちゃってさ…」


一同はここでようやく自己紹介をまだしていなかったことに気づいた。


楓「そうなのか。ちょうどいい機会だし、ここらで自己紹介しておいたらどうだ?」

れんげ「じゃあまずはウチから自己紹介するのん!」


こうしてようやく自己紹介タイムと相成った。




ーーー初めて訪れた場所で出会った人たちとの交流。
美術部メンバーは早くも「とっておきの夏」に出会いつつあった。
 
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