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胸が薄くてもいい

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第三章

「なかったわ」
「嘘みたいだ」
 辻は優のその言葉に驚いて返した。
「それは幾ら何でも」
「本当によ、胸ないから」
「胸なんてどうでもいいよ」
 辻は優に真顔で答えた。
「そんなことは」
「いえ、それはね」
「それは?」
「胸を気にし過ぎだよ、僕は胸よりも他のものを見てだよ」
「胸見ないの」
「胸はどうでもいいよ」
 辻は言い切った。
「本当にね」
「じゃあ何がいいの?」
「何がって外見のことだよね」
「ええ、私胸ないのに」
「顔奇麗だし髪の毛だってツヤあってさらさらしてるし」
 辻はすぐに優のそうしたところを話した、それも真顔で。
「すらりとしたスタイルで脚も長くて奇麗だよ」
「じゃあ胸は」
「今言った通りだよ」
「どうでもいいのね」
「僕胸フェチでもないし」
 このこともあってというのだ。
「だからね」
「私にそう言うのね」
「うん、それでどうかな」
 辻は優に真顔で問うた。
「お互い大学に合格したら」
「その時は」
「そう、告白していいかな」
「お互いそうなったらよ」
 優は真顔で辻に答えた。
「その時はね」
「うん、それじゃあ」
 辻も真顔で頷いた、そうして優も彼も受験勉強に励んだ。そして合格発表の後でで優は早紀に言った。
「信じられないけれど」
「お互い合格して?」
「いや、それは有り得るってね」 
 その様にというのだ。
「思ってたけれど」
「胸がなくてもっていうのね」
「ええ、いいなんてね」
「だから言ってるでしょ」
 早紀は優に真顔で返した、今二人は早紀の家で合格を祝って乾杯している、早紀も同じ大学に合格したのだ。
「胸がなくてもなのよ」
「いい人いるの」
「そうよ」
 実際にというのだ。
「だから本当に十人十色でね」
「それでなの」
「胸がなくてもよ」
 優そして自分の様にというのだ。
「それでもなの」
「いいっていう人がいるの」
「そうよ」
 実際にというのだ。
「そのことはね」
「そうなのね」
「何度も言うけれどそうなのよ」
「ううん、やっとね」
「わかったでしょ」
「実際に告白されて」
 そうしてというのだ。
「本当にね」
「それは何よりよ」
 早紀は微笑んで優に答えた。
「あんたがそのことがわかってね」
「それでなのね」
「ええ、それで告白受けたの?」
「受けたわ」
 即座にだ、優は早紀に答えた。
「そうしたわ」
「そうなのね」
「だって二人共合格したから」
 それでというのだ。
「そうしたわ」
「そうなのね」
「胸はいいのね、これまでコンプレックスあったけれど」
「だから好みは人それぞれよ」
「そういうことね、じゃあ今から」
「辻君と付き合っていくのね」
「約束だからね」 
 それが為にというのだ。
「そうするわ」
「わかったわ、じゃあそっちも頑張ってね」
「そうするわ、大学の勉強と一緒にね」
「そうしてね」
「そして今はね」
「こうして一緒に乾杯ね」
「そうしましょう、合格して胸のこともわかって」 
 そしてというのだ。
「最高の気持ちだから」
「そうした時こそ飲まないとね」
「ええ、だから飲むわ」
「私もよ、じゃあ胸のない者同士で」
「飲みましょう」
 二人で笑顔で話してだった。
 そうして飲んでいった、もう優は胸のことは気にしていなかった。それでもいいと言ってくれた相手と付き合うことになったのだから。


胸が薄くてもいい   完


            2021・3・9 
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