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それから 本町絢と水島基は  結末

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11-⑸

 「絢 大学に戻る前、一度、沖縄に行ってこい 春からの就職先だけど 向こうの水産加工会社だ 電話では、お前のこと、頼んだけど、一度、挨拶に言っておかないとな 向こうだって、面接位はしておきたいだろうし」

「おとうさん そんな、いきなり ウチ、なんも、聞いてへんやん」

「わかっている これは、ワシの言うことを聞いてくれ 心配だし、訳のわからんところに、お前を行かせるわけにいかない カンコー水産は、仕事仲間だから、信頼できる。藤沢さんも、良く知っているところだ。」

「そんな ウチ 食品なんて 全然知らんよ 何も出来ひんよ」

「だから、行って来いって言うんじゃ 何が、出来るんか、確かめてこい 絢に出来ないことなんかあるものか と、ワシは思ってる」

 - - - - - ☆ ☆ ☆ - - - - -

 私は、空港からタクシーで、カンコー水産に行った。玄関を入ると、30過ぎ位の女の人が、迎えてくれて、会議室みたいなところに通された。すぐに、お父さんと同じ位の歳の人が入ってきて

「やぁ よく来てくれましたね 神谷です。君のお父さんとは、お互い、社長になり立ての頃からの付き合いでな こんなに可愛い娘さんが居たなんて知らなかったよ 連絡をもらった時はな、うちも、会社を大きくしていくのに、やらなければならないことが増えてきてな ちょうど、人が欲しいと思っていたんだよ 細かいことは、後で来る、息子の誠一郎に聞いてくれ」

「私 食品会社のことなんて、知らないんです。それで、父からよく聞いて来いと」

「今朝、藤沢さんからも、電話あってな 頭が良くて、素直な娘だから、直ぐに仕事は覚えると思うし、おたくの会社なんかには、もったいないぐらいだよと、言っていた。それに、彼氏のことも聞いている。県の職員になるんだって?」

「おじさん、そんなことまで」

「自分の娘のような言い方だったよ あの社長が人を褒めることは滅多にないという話だけどな」

 その時、年配の男の人と若い男の人が、入ってきて、私の横に来て挨拶しだした。私、あわてて立ったら、椅子を倒してしまって

「あっ すみません 本町絢と言います あわててしまって、ウチ、ドン臭いんでごめんなさい」

「あー 落ち着いてください 大丈夫ですから 私は、総務の田所と言います よろしく」

「私は、営業と仕入担当の神谷誠一郎と申します どうぞ、お掛けください」と、若いほうの人が言ってくれた。

 その後、絵のこととか、合気道のこととか聞かれた。なんで、沖縄に来たいのかは、聞かれなかった。おそらく、この二人は承知しているんだろう。そのうち、社長さんと総務の人は席をはずした。

「仕事の細かいことは、誠一郎から説明します。私は、ちょっと、失礼します」

 その後、先に工場を案内しますと言われて、白衣に着替えて、中に入って行った。工場の中はひんやりしていたが、熱で加工する場所では蒸気で、かなり室温は高い。全体で30人程が働いているということだった。

「割と年配の人が多くてね、若いものは数人しか居ないんだ。昔ながらのやり方が多くてね、これからの食品会社としては、至らない部分がかなりあるんだ。この辺りでは、優秀な人は、大きな会社か、東京に出て行ってしまうから、なかなか、良い人を雇えなくてね。僕も、高校を出て、直ぐに、ここに入ったものだから、役所とか大きな会社との話は苦手でね。あなたが、来てくれたら、基準書とか整備して、慣れてきたら、売り上げ出荷関係もやって欲しいと思っています」

「あのぅ 私、製造会社のことなんて、まるでわかりませんし、そんなこと出来るか、どうかわかりませんが」

「わかっています。でも誰でも、最初は戸惑いますよ。そういう方面を勉強してきた人でも、それは、一緒ですよ。そんなのは、入ってから、勉強してもらえば良いんです。社長も言っていたけど、その人の性格で選べば良いって 僕に、後は任すと言っていたのだから、多分、社長はあなたのことを気に入ったんだと思いますよ」

「そうなんですか 出ていかれたから、私、ダメだったんだと」

「それは、違いますよ 社長は、人と約束があったから 夕方、戻ってきます。 それまで、居てくれますよね お願いします。 引き留めておくように、出る時、言っていたそうですから 帰りの飛行機 予約してあるんですか?」

「いいえ 何時になるか、解らなかったから」

 その時、誠一郎さんの電話が鳴って、しばらく話していたか゛、話の途中、私を見て

「本町さん 今夜は泊っていけますか 社長の家に泊りなさいって」

「はぁ でも どうすれば、良いでしょう 父に聞いてみないと」








 
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