恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百五話 ガルフォード、駆けるのことその十
彼女達は隙を見せないのだった。寝食も入浴も共にする。
その中でだ。風呂の中でだ。
蔡文姫は湯舟の中でだ。共にいる韓浩に尋ねる。
「ねえ。いつも感じるでしょ」
「確かにね」
真剣な顔でだ。韓浩も答える。
「狙っているわね」
「だからね。一人になればね」
「その時に来るわね」
「来るわ」
蔡文姫の言葉もだ。にこりともしていない。
周囲を警戒しながらだ。それで話すのだった。
「確実にね」
「そうね。そう思うと」
「二人でいるのは」
「正解ね」
こう話すのだった。
「まさにね」
「そうね。とりあえずは華琳様が都に戻られるまでは」
「一緒にいましょう」
「それとだけれど」
ここでだ。韓浩はこうも話した。
「司馬尉への警戒だけれど」
「彼女の屋敷の前には兵達を多く置いているわ」
そうしているというのだ。
「何しろ。何をするかわからないから」
「露骨に謀反を企てたりはしなくともね」
「謀反ね」
蔡文姫の目がここで光った。それで言うのだった。
「そこまで考えているのかしら」
「謀反を起こし己が皇帝に」
「まさかと思うけれど」
「けれど華琳様達を全て排除したら」
そうなればだ。どうなるかというのだ。
「最早阻むものはないわ」
「その場合はというのね」
「皇帝になれるわ」
摂政であり太子にもなった劉備まで排除すればというのだ。
「そう、なれることが問題だから」
「劉氏以外の者が」
「司馬尉が謀反を起こしそれが成功したならば」
「皇帝になりこの国を牛耳る」
「それは防がないといけないわ」
韓浩は湯舟の中でだ。己の側にいる蔡文姫に話した。
「そう思うと貴女の策は見事よ」
「うふふ、有り難う」
韓浩の言葉にだ。蔡文姫はにこりと笑って応えた。
「そう言ってもらえると嬉しいわ」
「流石は麗羽殿の幕僚の一人ね」
「軍師達は水蓮達が主だけれどね」
袁紹の軍師といえば田豊達だ。このことは絶対と言っていい。しかしだ。
この蔡文姫も知略と内政手腕で袁紹を助け続けている。だから韓浩も今言うのだ。
「それでもなのね」
「貴女も頑張ってるじゃない。だから」
「だから?」
「ちょっと今は羽目を外して遊ばない?」
くすりと笑ってだ。蔡文姫に言ったのである。
「御風呂の中でね」
「御風呂の中でって」
「今二人だし」
急にだ。韓浩の目に妖しいものが宿る。
「だから。二人きりだから」
「貴女そっちの趣味だったの」
「だって。華琳様にお仕えしているから」
女以外は寝屋に入れない曹操だというのだ。
「それに麗羽殿だってそうでしょう?」
「そうよ。あの方もね」
「それならよ。お互いにね」
「悪くないわね。けれどね」
「けれど?」
「今は止めておきましょう」
くすりと笑ってだ。蔡文姫は韓浩に言った。
「今はね」
「気が乗らないのかしら」
「御風呂の中でそういうことをしたら」
どうかというのだ。
「熱くてゆだっちゃうじゃない」
「だからなのね」
「一緒に寝るから」
蔡文姫が言うのはこのことだった。
「その時にね」
「そうね。身体を奇麗にしてからね」
「肌を重ね合いましょう」
そうした話をしてだった。二人は今は遊ばなかった。
そうして風呂から上がり褥の中でだ。二人は共に遊ぶのだった。
第百五話 完
2011・8・18
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