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異生神妖魔学園

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玄徳とシャルロット

街から公園へ移動し、到着した紺子たちは早速コーティアに質問することに。
護身術を食らったみのりはまだ気絶しており、ベンチの後ろに放置されていた。


紺子「で、そいつらは誰?義理とか言ってたけど」

コーティア「そうだな…………話せば長くなるが、まずこのダサいファッションをしているのが『鷹山玄徳』、路地に座り込んでいたところを我が見つけた元不良でな。今は我の家に住みながら教育を受けてるのだ」

竜奈「元不良?何かあったのか?」

コーティア「あー、それはな………」


コーティアは玄徳のことを話そうとするが、話してもいいのか口ごもってしまった。


玄徳「親父、無理しないでくれ。その先は俺が話す」


見かねた玄徳が口を開き、彼がコーティアの代わりに自身のことを全て話すことに。
鷹山玄徳とは何者なのか?種族は何なのか?中年のような男がなぜコーティアの家に住んでいるのか?紺子たちはそんな多くの疑問を抱える。


玄徳「じゃあ早速話すが……『地龍ヶ丘(ちりゅうがおか)学校』を知ってるか?」

辰美「地龍ヶ丘学校?紺子様、知ってますか?」

紺子「いや、全然」


見たことも聞いたこともない紺子と辰美とは対照的に、竜奈が思い出すように言う。


竜奈「私は知ってるが……確かそこって廃校になったんだよな?あまりにも学校としての機能がなく、先生たちが次々と仕事をやめていき、最終的には不良の溜まり場になってしまった所なんだよな?」

玄徳「俺の知らない間に潰れたのか……まあ不良たちがいたのは確かだ。だが俺がいた頃はまだまともだった。俺はそこの番長として名を馳せていたんだ」

紺子「番長!?」

玄徳「だが………今はそんなもんはない。仲間に裏切られたし、学校に通えるだけの金も盗まれたし、中退せざるを得なかったがな」


自嘲するかのような笑みを浮かべ、きれいな青空を見上げる。
すると竜奈がこんな質問をした。


竜奈「では今は学校に通っていないのか?」

玄徳「ああ、今はな。今は親父の家で生活もかねて勉強してる。夏が終わり次第親父が仕事してる学校に行くつもりだ」

辰美「つまり私たちの学園に来るというわけですね」

コーティア「まあ、その約束だしな。すでに学園長にも会わせているし、夏休みが終わった後に入学させるつもりだ」

紺子「夏休みが終わった後って………嘘ォ!?半年だけェェェェ!?」

玄徳「ごもっともだが……もう俺の年齢は15なんだよ(ホントは9万2505歳だがな)」

竜奈「じゅ、15!?」


意外や意外、髭を生やした中年のような男はなんと竜奈と同じく人間の年齢でいう15歳だった。これには竜奈以外に紺子と辰美も唖然とするしかなかった。
だが、紺子はふとコーティアとみのりの会話であることを思い出した。あの会話の中で、コーティアは玄徳同様シャルロットと呼ばれる人間の女の子を『義理』と呼んでいた。となると彼らに親はいたのだろうか。その好奇心に負け、聞いてみることに。


紺子「んじゃあ……さ、あんたには………あー、親とかいたの?」

玄徳「………!」


紺子の質問に玄徳の目つきが変わった。その目はまるで殺したかのような怖い目だった。
聞いてはいけないことを聞いてしまったと思い、睨まれた紺子は恐怖で辰美の背後に隠れてしまった。


紺子「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい―――――」ガクガクブルブル


紺子は泣きそうな顔と声で必死に許しを乞う。


コーティア「玄徳、怖がってるぞ?」

竜奈「紺子は口は悪いが泣き虫なんだ。あまり怖がらせないでほしい」

玄徳「……すまない。嫌なことを思い出してな………」

辰美「じ、地雷を踏んだみたいですね紺子様……」

竜奈「しかし…コーティア先生。その銀髪の女の子もコーティア先生が拾ったんですよね?一体何が?」


銀髪の女の子、シャルロットに目を向ける竜奈。紺子と辰美もシャルロットの方を見る。
シャルロットは呼吸が浅く、両手も震えている。まるで何かに怯えているようだった。


シャルロット「ぁ……ぁぁ…………!」

玄徳「シャルロット、しっかりしろ」


玄徳は優しく声をかけ、シャルロットの頭をなで始める。するとシャルロットは徐々に落ち着いていき、そのまま玄徳に寄りかかった。


辰美「あの子は一体どうしたんでしょうか………?」

コーティア「…………お前たちも薄々気づいていると思うが、シャルロットは人間だ。拾ったのは我ではなく玄徳……玄徳が言うに、《《親に虐待されていたらしい》》」

紺子「虐待!?」

辰美「そんな!?」


なぜ人間であるシャルロットがコーティア(悪魔ダンタリオン)の娘になったのか、なぜ玄徳が拾ったのか聞こうとした途端、玄徳の口からあり得ない言葉が飛び出した。


玄徳「俺も昔からひどく虐待されてたさ。だがシャルロットとは違い、俺はあのクソ野郎とクソアマの息の根を止めた」

竜奈「何だと!?お前、親を殺したのか!?」

玄徳「ああ。学校に通えたのもあのクソ野郎共の金を使ったからだ。あんな奴らを親と呼ぶつもりはねぇ。もちろんこの女の子の親もな」

竜奈「自分が殺した親のお金で通ってたのか…………!?よく警察にバレなかったな!?」

玄徳「近くの住人ががみんなカニバリズムでな。食わせる代わりに俺が殺したことを黙っててもらったんだ。警察が来てもカニバリズムによって襲われて食われたって話も聞いてたしな」


話が終わった頃には紺子たちの全身に寒気が走り、鳥肌が立っていた。
だがすぐに切り替えると、竜奈が種族について聞いてきた。


竜奈「もうひとつ聞きたいが、お前の種族は何なんだ?」

玄徳「そうだな………まず俺はハーフだ。エジプト神話の『セベク神』とマヤ神話の悪神『カマソッソ』のな」

辰美「セベク神?」

竜奈「悪神カマソッソ?」


玄徳の体に生えたワニの尻尾とコウモリの翼。セベク神と悪神カマソッソとは一体何なのか。
その疑問に答えるかのようにコーティアが説明し始めた。


コーティア「セベク神はバステト神の全猫と同じくエジプト神話に出てくる神だ。全猫は名前の通り猫の神だが、セベク神はワニの神。見た目がワニだから尻尾もワニなんだ。悪神カマソッソはコウモリの悪神だ。とにかく、玄徳はそいつらの血を引いている。まあ、そいつらに虐待されていたせいでその血も毛嫌いしているがな」

紺子「じゃあその女の子は?」

玄徳「この子か。数日前だったかな…親父のお使いでスーパーで夕飯の買い物をしてた時だった。買い物を終えて帰ろうとしたら、シャルロットがいてな。ひどいケガだったから残ってた金で包帯やら消毒液やら買って応急処置してやったんだ。で、その後親元に返そうかと思ってた矢先、あっちから来たんだが…………雰囲気から察してやめた。それは単純な理由だった………この子も俺と同じように『虐待』されてたからだ…………!」



ガシャーン



淡々と話していたが、玄徳の声には怒気が混じっていた。同時にその場にあったゴミ箱が玄徳の尻尾によって倒され、凹んだ。
またかと言わんばかりに呆れるコーティア。倒されたゴミ箱を立て直すと、凹んだ部分を魔術で元通りにした。


玄徳「で、俺があいつらを説得してやった(あいつらに暴力を振るった)。そしてこの子を保護して今に至るというわけだ」

コーティア「ちなみにシャルロットという名は我がつけた名前だ」

紺子「先生がつけたのかよ」

竜奈「しかし玄徳といいシャルロットといい、その者たちの親は最低だな。聞いただけで虫酸が走ったぞ」

コーティア「それだけじゃない。シャルロットが家に来て悩みもできた」

辰美「悩み………ですか?」

紺子「幸せな悩みか何かか?」

コーティア「いや…シャルロットが玄徳のことを………『旦那様』と呼んでな………」

紺・辰・美「「「旦那様!?」」」


予想より斜め上だった。3人は唖然とし、玄徳を白い目で見る。


玄徳「ご、誤解してるようだが家に連れて帰ったら突然『旦那様』って呼ばれたからな!?」

シャルロット「旦那様ぁ……」

コーティア「玄徳にフォローするが、決してロリコンじゃないからな?ホントに玄徳を旦那様と呼んでるだけだからな?ただ……あの子の愛情表現が………………あまりにも官能的で………………」

紺子「あ///」


うっかり口を滑らせてしまった。官能的という言葉に反応した紺子と竜奈が思わず顔を赤らめた。


竜奈「な…な…なんとハレンチな!?///」

シャルロット「ふぇ?何かおかしいの?」

玄徳「少なくとも常識とは思えない……」

コーティア「たぶん今までの欲望が爆発して今のような状態になったと推測できるが………なぜにこうなったんだ………」

紺子「は、ハハハハ……」


もはや苦笑するしかなかった。
駄弁っているうちに時間は刻一刻と過ぎ、コーティアは公園の時計を見上げる。


コーティア「おや、もうこんな時間か。少ししゃべりすぎたようだ。玄徳、シャルロット、帰るぞ」

玄徳「おう」

シャルロット「うん、お父様」


公園から立ち去るコーティア一家。彼らが去っていくのを見届けると、3人はベンチに座る。


紺子「……ロリコン先生の尾行をするはずがコーティア先生の話になっちまったな」

辰美「コーティア先生に義理の息子と娘がいたなんてホント驚きましたね……」

竜奈「しかし地龍ヶ丘学校の元番長か………どこかで聞いたことがあると思っていたがあいつだったのか」

紺子「竜奈先輩は知ってるの?」

竜奈「ああ。あの学校の不良たちを束ねた番長だとどこかで聞いたんだ。まさか中退していたとは…………」

紺子「…………ところで気絶してるみのり先生はどうすんの?」


振り向くと、みのりはベンチの後ろで未だに倒れていた。


竜奈「とりあえず家まで運ぼう。その後解散だ」

紺子「あいよ」

辰美「わかりました」


気絶したみのりを3人は複雑な気持ちで家まで運ぶ。到着するとみのりの服のポケットから家の鍵を取り出し、ドアを開け、玄関に寝かせた。
やがて辰美と竜奈はそれぞれ自分の家へ帰っていったが、紺子は自転車が壊れた上に前輪もパンクしていたため、一海に電話で頼んで迎えに来てもらったという。 
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