魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
Saga28最後に至るとき~Farewell day~
†††Sideはやて†††
“T.C.”のリーダーやったルシル君、その融合騎アイリとの戦いを勝利で終えた私たち八神家とシャルちゃんとトリシュ、ミミルさんと交戦したなのはちゃん達は、誰ひとりとして欠けることなくミーティングホールに戻ってきた。
ルシル君の魔力吸収術式で意識を失ってたシグナム達も今はしっかり目を覚ましてるし、ミミルさんとフラメルとルルスと戦ったなのはちゃん達も大した負傷をせぇへんかった。聞いたところによるとミミルさんは、最後の最後までなのはちゃん達の足止めに徹して、魔術を1発たりとも直撃させへんかったとのこと。ただ、王様たちは例外やったらしく、交戦の最中に召喚が解除されたそうや。
(オリジナルやないとしても王様たちは王様たちやった。ちゃんとお別れしたかったな・・・)
「さて。ルシル、アイリ。みんなから1発貰う覚悟は出来てるよね?」
椅子に座らされて、アインスのシーリングバインド(元はルシル君の魔法やね)で拘束されてるルシル君とアイリも、意識を回復してる。私がルシル君を撃墜する直前に見た、ルシル君の泣くのを我慢してる表情はもう鳴りを潜めていて、目と口をキツく閉ざしてる。
「父さん、アイリお姉ちゃん・・・?」
そこに、フォルセティ、そしてヴィヴィオ達チームナカジマ、ルールーとリヴィの面々が姿を見せた。これはシャルちゃんの提案で、いくらルシル君でも子どもには冷たい態度はとらへんやろって希望的観測。その結果やけど、ルシル君の表情は変わらず、アイリは・・・動揺してた。
「フォルセティ・・・」
「・・・父さんも、アイリお姉ちゃんも生きていてくれて、本当に嬉しかったよ。死んだって知ったとき、覚悟はしていたけど僕は・・・たくさん泣いた」
「ごめん・・・ね。ごめんなさい」
アイリは本当に申し訳なさそうに謝ったんやけど、ルシル君の表情はピクリとも変わらへん。そんなルシル君を見てフォルセティは「父さん。どうして、僕を見ず、口を開かないの?」って僅かに怒気を帯びた声で聞いた。
「いや僕だけじゃない。母さんにも、友達のなのはさん達に対しても! 死を偽って、犯罪組織を作って、みんなに迷惑をかけて! 戻ってきたら戻ってきたで、母さん達を傷つけて! 負けたら負けたでだんまりとか! 格好悪いって思わないの!? 僕は、そんな父さんは嫌いだ!」
「あ、あのね、フォルセティ。マイスターは・・・」
「知ってるよ、アイリお姉ちゃん。父さんが実は2万年近く存在してる人で、テスタメントっていう神様の一柱で、今は最後の契約の最中、そしてこのチャンスを逃すともう人として蘇ることが出来ないことも。・・・父さんの真実はショックだったし、その大変さはとんでもないものだって解っ・・・た風なことは言わない」
フォルセティにもルシル君とアイリが生きてるって情報を教えておきたくて、ミーティングホール内の映像を回してた結果、ルシル君の半生を見てしまうことに。口や握り拳を震わせたフォルセティは、なおも表情を変えへんルシル君の真ん前に立って、「でもさ!」って両肩を掴んで、顔を近付けた。
「それは母さんを泣かす理由にはならない!! 母さんはずっと泣いてた! 父さんがいなくなったのは自分の所為だって! 父さんが昔の被疑者と同一人物と気付かなければ、父さんがアイリお姉ちゃんだけを連れて死にに行くことはなかったって! ずっと自分を責め続けた!!」
「っ! フォルセ・・・!」
その言葉に、私は感極まって泣き出してしもうた。フォルセティも涙を流しながら「母さんだけじゃない! シグナムお姉ちゃんも、ヴィータお姉ちゃんも、シャマルお姉ちゃんも、リインお姉ちゃんも、アギトお姉ちゃんも! アインスお姉ちゃん、ザフィーラだって!」ってルシル君の体を激しく揺さぶる。
「父さんにも理由はあるんだろうさ! エグリゴリとの戦争が終わったら、父さんはいなくなる! どんな結果でも父さんと母さん達は別れることになる! でもだからって、死を偽るなんて酷いじゃないか!」
「ふぉ、フォルセティ? マイスターだってホントは――」
「アイリお姉ちゃんは今は黙ってて!」
「・・・はい」
「結局は父さんが逃げただけだ! 逃げて引っ掻き回した! 逃げたこと、それが父さんの罪だ!」
フォルセティがそこまで言ったところで、フラッとよろめいた。普段の冷静なフォルセティなら、全力戦闘でも20分は息切れせずに戦えるように鍛えられてる。そんなフォルセティも、感情任せに叫んだことによる酸欠に陥ったようや。
「「フォルセティ!」」
真っ先に駆け出したんはヴィヴィオやった。膝から崩れ落ちそうになったフォルセティを抱き止めてくれたんやけど、ヴィヴィオも成長して大きなってるとはいえ、フォルセティも大きなって身長も体重もそれなりのもんや。そやからヴィヴィオも咄嗟に抱き止めたことで踏ん張り切れず、一緒に倒れ込みそうになったのを、「よっと!」と私が抱き止めた。正直な話、私の身体能力はヴィヴィオよりすごく劣ってる。それでも愛する息子と、その親友の娘を支えるられる。
「ちょっ、アカン、思った以上に重・・・!」
うん、思いだけでは無理やった。そやけど私が一瞬でも2人を支えることが出来たことで、ヴィヴィオが重心をしっかり整えてくれて、倒れ込む結果にはならへんかった。
「はやてさん、ありがとうございます」
「いやいや。恥ずかしい話、ヴィヴィオが復帰してくれへんかったら倒れてた」
みんなも続々と私たちの元に集まって、呼吸の安定を見せるフォルセティに心配する声を掛ける。そんな中でアイリも「フォルセティは無事なの!?」って大きな声で心配してくれた。そやけどルシル君だけは無言を貫いてた。
「「あんたねぇ!」」
殺気立ったアリサちゃんがルシル君の胸倉を掴んで、アルフが後ろからルシル君の頭を掴んで、フォルセティに向けさせた。そこまでされてもルシル君は、まるで眠ってるかのように一切表情を変えへん。この辺りで私の中であれ?ってなった。
「ありがとう、ヴィヴィオ、母さん・・・。すぅ・・・ふぅ・・・。ねぇ、父さん。父さんは確かに悪い事をしたよ。それでも、協力を申し出るべきだったと思う。母さん達なら、父さんの真実を伝えなくても助けになってくれてたはずだよ。それでさ。母さん達に怒られても、責められても、父さんにとっては辛いかもだけど、一緒に力を合わせればよかったんだよ。母さんも、お姉ちゃん達も、なのはさん達もみんな、優しいんだから」
「・・・フォルセティ。・・・ルシル君。せめてフォルセティに何か・・・何か一言だけでも話したって。お願いや」
それでもルシル君は一言も発さへん。これはいよいよルシル君がただ無視してるだけやないって気がしてきた。それは他のみんなもそうで、「様子がおかしくない?」ってざわざわしだす。アリサちゃんやヴィータに続いてアリシアちゃんもルシル君に詰め寄って、両頬をぎゅーっとつねったり引っ張たり。シャマルが脈を計るために腕を取ったり、アギトが胸に耳を当てて心音を聞こうとしたりする。
「・・・え? え? ちょっと待って! 脈が無いわ!」
「し、心臓も止まってる!」
「あ・・・それは・・・」
シャマルとアギトの言葉に私たちは絶句した。シャルちゃんはすぐに「バインド解除!」して、ルシルを床に横たえさせた。そして医務官であるシャマルが心臓マッサージや人工呼吸を始めたのを私は見ながら、「私が・・・殺した?」って考えに恐怖した。
「待ってください、主はやて! アイリ。お前は今さっき、あ、それは、と何かを言いかけたな? 何を言おうとした?」
アインスの問いに、私たちの視線はアインスとアイリの2人に向けられた。何かを話そうと一度は口を開いたアイリやったけど、何か迷ってるようでまた口を閉ざした。そんなアイリにフォルセティが「アイリお姉ちゃん・・・」縋るような目を向けた。
「・・・ごめん、マイスター。アイリは・・・」
「アイリ。お願いや」
「はやて、みんなも。今すぐにベルカに向かって。そこに、本物のマイスターが居る。そのマイスターはね、エインヘリヤルなの。だから、死んでるんじゃなくて機能が停止してる感じ。・・・見て。シグナム達の魔力を奪ってなんとか保ってたけど、もう構築維持の限界で消滅する」
アイリのその言葉に私たちは「え?」って、シャマルが心臓マッサージしてるルシル君に視線を向けた。アイリの言うようにルシル君の体が霧散し始めた。“エインヘリヤル”ってことを知らずにこの状況になったら絶対に取り乱してたな。
ルシル君が“エインヘリヤル”としたら、目の前に居るアイリは?って疑問が浮かぶ。シグナムが「アイリ。お前もエインヘリヤルなのか?」って問うと、アイリは「違う。本物だよ」って首を横に振った。アイリはずっとルシル君と一緒やった。それこそ一緒に死を偽るほどに。それがここに来てルシル君と別行動。ホンマに異常事態や。
「本物のマイスターは、今頃はマリアがもう持って行った魔力を手にして、境界門が開くのを待ってると思う」
「もう持って行ったって・・・、え!? マリアさんが奪う役だったわけ!? そう言えば、いつの間にかいなくなってる! ルミナ! 最後に話をしてたのはルミナだよね!?」
「え、あ、うん。境界門を安定させるために、先に戻るって聞いたんだけど・・・。うぁー、ようやく会えた母親が神様だったことにも驚いてるのに、最後の最後で嘘を吐かれるなんてショックすぎる!」
ルミナちゃんの母親発言も気になるところやけど、マリアさんは盗みを働いたうえで戻った。作戦の全貌を知ってるアイリがそう言うんなら、もういろいろと手遅れなんやろう。シャルちゃんが「じゃあ、アイリとエインヘリヤルのルシルの役割って・・・」って項垂れる。
「うん。シャルの考え通り、マリアが保管室から魔力を奪うまでの時間稼ぎ。だから勝つ必要なんてなかったし、負けてもこうして時間稼ぎすれば問題なしってことになってる」
「プレシア母さんとリニスは、そのことを・・・?」
「いいえ。知らないわ」
「私たちに与えられた作戦以外の作戦については何も聞いていませんでしたから」
「じゃあ、ドクターやアルファ達も?」
「ああ。知らなかったよ」
「ただ、神器王がエインヘリヤルだってことは知っていたわ」
「アルファ。どうして教えてくれなかったの?」
「聞かれなかったからよ」
「とことんわたし達を逆撫でするような真似を・・・! クロノ! ルシルがやってくれた! 実は――」
シャルちゃんがクロノ君に通信を繋げて報告するのを横目に、私は「アイリ、大丈夫?」って目線を合わせてそう声を掛けた。するとアイリの目が潤み始めて、「ごめんなさい」って謝った。私はアイリを胸に抱いて、よしよしと背中を撫で擦る。
「ルシル君もひどいなぁ。ずぅっと一緒やったアイリを、最後の最後に置いてけぼりにするんやもんな」
「違うの・・・。マイスター、もうボロボロなの・・・。残ってる記憶も、最初の次元世界、今の次元世界、マリアと出会った世界の3つだけ。マイスターが魔力を欲してるのは、ガーデンベルグに勝つためじゃなくて、はやて達の記憶を保ったまま、アースガルドに帰るため。はやて達との思い出を魔力として消費しないために、魔力を欲してる」
アイリがそこまで言うてから私から離れると、なおも零れる手の甲で涙を拭ってから床に正座した。そんで私たちを順繰りに見た後・・・
「フォルセティの言う通りだよ。マイスターが逃げさえしなければ、こんな滅茶苦茶な状況にはならなかった。責められるのは当然のことだよ。そんなマイスターを諫めず、止めなかったアイリも同罪。どんな罰だって受ける。・・・虫のいい話だってことは理解してるつもり。でも、お願いするしかないの。マイスターを、ルシルを助けてください。これが本当の本当に最後だから。マイスターを独りぼっちのままで行かせないであげてください」
土下座して、そうお願いした。私はフォルセティをヴィヴィオに預けて、「そんなことせえへんでええ!」って、すぐに駆け寄ってアイリの頭を上げさせた。それでも「アイリにはこんなことしか出来ない」って頭を下げようとした時、リインとアギトがアイリを両側から抱きしめた。
「バカやろう。妹の必死な願いを聞き入れねぇ姉が、この世のどこにいるってんだ」
「一応、八神家の一員としてはリインの方がお姉ちゃんなので、妹をしっかり助けるですよ」
「アギトお姉ちゃん、リイン・・・。ありがとう」
姉妹が抱き合って泣いてるのを、私も泣きながら見守ってると、シャルちゃんが「・・・クロノ。聞いてた?」ってモニターに映るクロノ君、それにユーノ君を横目で見た。
『ああ。保管室の調査はこちらに任せてくれ。・・・しかし許可を取るべく奔走していたが、全部無駄になったと思うと泣きたくなるな』
『ルシルの方が一枚上手だったね。まさか自分のエインヘリヤルを寄こすなんて想像もしなかったよ』
「で、これからわたし達、ベルカに向かおうと思うんだけど」
『特騎隊と元特務六課に関しては、君とはやてに決定権がある。元六課組は現在、特騎隊の補助戦力として合併されているからな。出撃することに関しては何も問題はないよ。ロッサとも情報を共有しているため、スムーズの事が進むはずだ』
「了解。感謝するよ、クロノ。ロッサにはあとでキッチリ連絡するよ。・・・はやて、アイリからベルカのどこに行けばいいか聞いておいて。ベルカと言っても世界1つだからすごい広いんだし」
そう言って私たちから離れてアコース監査官に通信を入れるシャルちゃんに「了解や」って答えて、改めてアイリに向き直る。アイリは私からの言葉を待たずに「シュトゥラはアムル領、領主館。そこがアイリ達T.C.の本拠地だよ」と教えてくれた。真っ先に反応したんは、「シュトゥラ・・・!」の王族イングヴァルト家の直系、アインハルトと、「シュテルンベルク始まりの地・・・!?」と驚くトリシュやった。
「うん。元はリアンシェルトが用意してくれてたところでね。4年前、リアンシェルトに勝った後、パイモンが案内してくれて、それからはそこでT.C.の活動をしてた。ごめん、アインハルト、トリシュ。アイリ達、クラウス達やエリーゼ達の思い出の場所を、悪い事に使ってた」
「え、あ、い、いえ。・・・お役に立てているのなら大丈夫です?」
「どうして疑問形?」
「あと、実はここ怒るところ」
アイリが頭を下げるとアインハルトはお辞儀して、ルールーとリヴィがツッコみを入れた。陰鬱な雰囲気なミーティングホールやったけど、アインハルトの天然のおかげでちょう晴れたかも。ただ、トリシュやシャルちゃん達ベルカ組が顔を見合わせてるのが気になった。
「えっと、ひとまず、アイリ。私たちをアムル領に案内してくれるか? アイリ、転移魔法とかで来たんやろ?」
「う、うん。ベルカに航行船の便なんてないしね。えっと、座標はね・・・――」
シュテルンベルク邸の中庭の座標を教えてくれたアイリ。本局からシュテルンベルク邸へはスカラボのトランスポートで行けるとのことで、私たちはすぐに行動を開始。シュトゥラに降り立ってみたいってゆうアインハルトや、フォルセティらチームナカジマにルールー、リヴィも一緒することになったんやけど・・・。
「プレシア母さん・・・?」「プレシアママ・・・?」
「私はここまでよ、アリシア、フェイト、アルフ」
「そうだね。私も、これで失礼させてもらうよ」
プレシアさんとドクターがそう言うと、2人は脚から霧散し始めた。それにリニスさんも。ウーノさん達が一斉にドクターの元に集まって、「やっぱり消えちゃいやです!」と涙ながらに吐露する。ドクターは人間として死ねたことに誇りがあるって言うて、歳を取らへん使い魔のような存在にはなりたないって考えや。ウーノさん達も渋々やけどそれに納得してたようやけど、いざお別れが来たら・・・って、ことなんやろうな。ゆっくりと消え始めたドクターは「ほら、笑って送り出してくれたまえ」と苦笑いを浮かべて、ウーノさん達の頭を順に撫でる。
「アイリさん。私は、アリシアの使い魔として残ることにしました。・・・お願い出来ますか?」
「あ、うん。じゃあ・・・コレ、飲んでくれる? で、飲んだ後はそちらの魔法での使い魔契約をすれば大丈夫、ってマイスターが言ってた」
アイリは身に着けてる局の青制服のジャケットのポケットから、ビー玉サイズの虹色に輝く宝石を取り出して、手の平に乗せた宝石をリニスさんに向かって差し出した。そやけどリニスさんの脚はもうふくらはぎ辺りまで消失してるから、アリシアちゃんが代わりに受け取って、「リニス。あーん」って口に運んだ。
「アリシア。そこまでしてもらわずとも・・・」
「あーん」
「あ、あーん・・・」
笑顔を崩さずに宝石を差し出し続けたアリシアちゃんに、リニスさんも諦めて大人しく宝石を飲み込んだ。そしてアリシアちゃんとリニスさんは、使い魔契約を果たした。リニスさんの消えていた脚も元に戻り、その存在感もハッキリしたものになった。
「「「リニス!」」」
「わわっ!? もう。フェイト、アリシア、アルフ、いきなり全力の抱き付きなんて危ないですよ」
「ご、ごめんね、リニス。でも・・・!」
「うん、嬉しいだもん!」
「そうだよ! 嬉しさを止めらんないよ!」
そんなフェイトちゃん達を優しい目で見守ってるプレシアさんが「これでもう、思い残すことはないわ」と安堵の息を吐いた。プレシアさんは今にも消えそうなほど体が薄くなってる。
「プレシア母さん!」「プレシアママ!」「「プレシア!」」
「アリシア、フェイト、どうか幸せに。アルフ、リニス。私の愛娘たちを、お願いするわね」
「はい!」「うん・・・!」
「子ども達に見送られて逝けるのは・・・やはり親として幸せなことだわ」
それがプレシアさんの最期の言葉やった。泣き笑いを浮かべるフェイトちゃん達に見送られながら、プレシアさんは消滅した。プレシアさんの消滅を見届けたことで、フェイトちゃんとアリシアちゃんは泣き崩れた。
「プレシア女史の言う通りだね。家族、それに友人たちに見送られて、ジェイル・スカリエッティという人間の生を終える。その様を、意識のハッキリした状況で迎えることが出来る。ふふ。私は最期の最期までいい体験をさせてもらい、幸せだったよ。・・・では、私の娘たち、友人たち! 敵か味方か判らないが、別の世界線の次元世界でまた会おう!」
もう音もせえへん白衣をバサッと払ったドクターは、最期までドクターらしいニヤリとした笑みを浮かべて消滅した。残る“エインヘリヤル”は、アリシアちゃんの使い魔となったリニスさんを除いて“スキュラ”のみとなったんやけど、消える兆しはあらへん。
「ところで、デルタ達は大丈夫なの? 早く使い魔の契約をした方がいいんじゃ・・・?」
「そこはもう大丈夫だよ、スバル。デルタ達、スバル達がパイモンに苦戦してるのを見ながら、ルーテシア達と契約を済ませたんだよ♪」
「お姉ちゃんがイプシロン、ゼータと、私がアルファ、ベータ、ガンマ、デルタと契約したんだよ」
「4人も!? 大丈夫なのリヴィ!?」
「ものすごい魔力消費じゃない!?」
「心配してくれてありがと、エリオ、キャロ。4人まとめて一緒に戦闘みたいなことは多分無理だけど、日常生活を送る程度なら問題ないと思う」
「アルファ達には今後、アルピーノ姓を名乗ってもらう。私やリヴィアの姉妹として、ホテルアルピーノに働く同僚として、一緒に過ごしていこうって考えてる」
“スキュラ”の問題はいつの間にか解決してたようね。あとは、私たちがベルカはシュテルンベルク邸に赴いて、ルシル君と・・・ルシル君と、永遠のお別れをするだけや。
ページ上へ戻る