それから 本町絢と水島基は 結末
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第六章
6-⑴
4月になって、水泳部の4日間の合宿があった。水泳に打ち込めるのも、今年が最後と思ってたので、大学対抗で上位に入れるよう、僕は力を入れて練習しているのだが、慎二には、いつもかなわない。素質が無いのかもしれないと、思い始めていた。
食事は、朝昼晩と潮食堂だ。相変わらず親父さんは、「食べろ 食べて力つけろよ」とたんまりと出してくれていた。ある夜、晩御飯のあと、慎二と美波が揃って、合宿所とは違う方に歩いて行った。普段は、言い合うことが多いけど、結局、二人は気が合うのだろう。二人とも、我がクラブのエースなんだから。
今年の入学式には、僕らは勧誘する側だった。相変わらず、慎二は女の子中心に声を掛け、それも、もっぱら、かわいい子を狙っていた。自然と女子達は男の子に声を掛けていたが、もともと水泳部は、あんまり人気が良くないのだ。あんまり、足を止めてくれない。
少し、離れた所で合気道部の連中も居て、絢もしきりに声を掛けている。さっきから、何人かの女の子が足を止めて、説明を聞いているみたいだ。あの道着姿にも憧れみたいなものがあるみたい。全体的に、体育系はあんまり人気がないみたいで、文科系は写真パネルなんかも掲示していて、足を止めて見ている者が多い。あの吉川すずりの居る天文部なんかも、派手に飾っているからか、人気がある。彼女を久しぶりに見たが、化粧をしているのか、眼元もくっきりして、前よりもきれいになっていた。
「美波先輩」と大きな声がした。元気そうな女の子が、美波に駆け寄ってきた。美波も
「美咲ちゃん 久しぶりー こっちへ来たのー 県立に行くって聞いてたから」
「先輩 保健体育で受かっちゃった あこがれの先輩と一緒の方がいいもの」
「そう言ってもらえると、うれしいぃー 又、一緒に、競えるね でも、もう美咲ちゃんに負けるかもね」
美波は、バタフライと自由形なんだけど、高校の時の県大会では、ずーとトップだったらしい。その時、違う学校で1つ下なんだけど、自由形でいつも2位で、美波を追いかけていたのが、高橋美咲だという。だから、美波に憧れ続けているらしい。去年の大学対抗の大会では、1年ながら、美波は2種目で優勝しているから、今年は1位2位かもしれない。
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