それから 本町絢と水島基は 結末
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4-⑵
翌日は、朝から順調に売れ、バドミントン部の打ち上げ用予約なんかもあって、1時過ぎには、完売となった。みんなが、片付けは任せろ、言ってこいと後押ししてくれて、演武会場に向かった。体育館を使っていたんだけど、同級生の竹川光喜と茜ちゃんも来ていて、前の方に澄香おねえさんの姿も見えた。そういえば、合気道OBって聞いたことがあった。
絢は、横の方で、ずーと並んでいて、鉢巻をして、横に真っ直ぐの眉も凛々しい。最後の方に全員でやる時に、ようやく出てきたんだけど、なんか頼りないなぁー。
イベントのメインのミスコンが始まっていたので、立ち寄ってみたら、慎二なんかも来ていて、かなりの人が集まっていた。着飾った女の子が10人くらい壇上に並んでいた。
「やっぱり、去年の桂川音海さんは抜群だったんだな まぁ、こん中に吉川すずりとか絢ちゃんが居たら解らないけどな」ボソッと慎二が言っていた。
僕も、そう思う。まぁ、こんなもんだろうなと思っていた。
僕らの打ち上げは、潮食堂だ。かかわったみんな8人が揃っている。校内でやっているところもあったけど、とにかくお世話になったから。慎二は原料の肉代を払って、残った分を全部、親父さんに渡していたが、「コンロのお礼の分だけもらっておくよ あとは、君達で使えよ」と返してくれた。
「水泳部は、いつも合宿でうちを使ってくれちょるから身内みたいなもんだよ」と唐揚げの山盛りを出しながら、言ってきた。
二十歳になったものも居て、女の子だったけどビールも頼んでいた。この地域では、これが普通らしい。その後も、親父さんは炒飯、フライドポテト、肉団子とかふわふわのオムレツも出してくれていた。女子だが部長の碧先輩が、ビールを飲み干して
「慎二はえらい! 先頭になってやったからな 3年、4年の男なんか、自分のことばっかで、なんも助けてくれないし」
3.4年は居ないが、その場に2年の男子も2人いるけど、お構いなしだ。僕は、ひやひやしながら聞いていたが、彼女は、この前の大会も自由形で優勝していて、うちのクラブのエースだ。中学、高校とトップで、同じ地元の美波は崇拝している。
「そうよ 慎二は、いつも馬鹿やっているけど ちょっと、見直した」と、美波がほろ酔いで言ってきた。
「美波は、うわべだけしか見てないからだよ 中身をみないと男に騙されるぞ」
美波は、又、箸を投げつけるふりをした。慎二も、直ぐに腕で防ぐふりをしていた。
「慎二はそうやって、はっきり言うから、いまだに女の子を騙せなくて、彼女出来ないんだよね」
「その言葉、そのまま返すよ でも、それが美波の一番良いところなんだけどね」
「慎二、それ 美波のこと 褒めてんの けなしてんの?」と葵も乗ってきた。
帰り道、慎二と歩いていて、僕は聞いてみた
「慎二、もしかして、美波のこと気になってるんか?」
「そんなことないと思うけどな、自分でもわからん 茜ちゃんみたいにおとなしくて控えめな子が好きなんだけどな 本当にそうなんかと思ってしまってな そんないい加減なことで、付き合ってくれなんて言えないやん 絢ちゃんなら即決やけどな」
僕は、それまで組んでいた肩を突き放して、先に帰った。でも、慎二は本当は僕なんかより、真面目な奴なんだと思っていた。
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