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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Saga25再臨~Final phase~

†††Sideなのは†††

ルシル君のとんでもない真実が、マリアさん(見た目は十代前半だけど、1万年以上生きる神様だから、さん付けだ。様付けはNO食らったし)から語られた。信じられないような内容ばかりだったけど、もう1つの世界線で別の私たちと過ごしたシャルちゃんの前世シャルロッテさんが表に出てきて、事実だと断言した。

(あの仮定は正しかったことが証明された。シャルちゃんが私たちと初めて会った時に感情を乱していたのは、シャルロッテさんの記憶に引っ張られてるから・・・っていう)

こっちの世界線の私たちが歩んできた歴史は、マリアさんやリアンシェルト達の意思が介入して、本来歩む歴史とは大きく変わっているらしい。あっちの世界線の歴史を見れば、その変わりようはハッキリと判る。思うところはたくさんある。だけど、今は気持ちを切り替えないといけない。

「クロノ、ユーノ。・・・観てたよね?」

『ああ。モニター越しだったが、神器王ルシリオンの生涯の映像はきちんと観ていた』

『うん。・・・パラレルワールド。数多くあるフィクション作品の中での割とポピュラーな題材だけど、ルシルは一度、この次元世界を経験していたんだね』

別室で会議内容をモニターしていたクロノ君とユーノ君に声を掛けたシャルちゃん。モニターに映る2人の表情も声も重い。

『ルシルが背負っているものは判った。約2万年の戦いの果て、最後のチャンスがこの次元世界での堕天使戦争。この機会を逃せば、神意の玉座に在るルシルの精神は消滅し、アースガルドという故郷に封印されているアイツの本体も死ぬことになる』

『そのために、これまで必死にこの世界で戦ってきたんだね。生き続けるために、ルシルの心の中に居る妹さんやお弟子さん、それに・・・』

「シェフィリスさん。恋人の魂も解放するために、ずっと・・・」

はやてちゃんは息を長く吐きながら、デスクの上で組んだ手の甲に額を載せた。“エグリゴリ”を救うだけがルシル君の目的じゃなかった。ユーノ君やはやてちゃんの言ったように“アンスール”の戦友であり、妹であるシエルさん、弟子であるカノンさん、恋人であるシェフィリスさんの魂を内包した創世結界を、ルシル君の故郷アースガルドで展開して魂を解放すること。そっちが最重要な目的なんだろうね。

『ルシルの置かれている状況は同情できる。出来るが、それでもアイツのやっていることは犯罪だ。見過ごすわけにはいかない』

「これだから頭の固い管理局は・・・」

「プレシア母さん」「プレシアママ」

『・・ルシルが自分の真実を僕たちに語ったとしても、僕たちもすぐには信じられなかっただろう。今こうしてテスタメント・マリアより見せてもらっても、受け入れるにはもう少し時間が欲しいくらいだ』

クロノ君はそう言うけど、私たちはもう完全に受け入れてる。だから、ルシル君が悪い事をしていると理解していても、どうしても何とかしてあげたい、って気持ちが生まれてくる。“アンスール”時代、つまり人だった頃から戦場で過ごしたルシル君は、家族も友達も恋人も喪って、最後は“エグリゴリ”によって自分すらも喪いそうになったし、その危機からはまだ脱してない。
“テスタメント”になってからも、神様なんていう肩書より奴隷の方がふさわしいような形でいろんな世界に呼び出されて、作ったり壊したり、生んだり殺したり、さらには殺されることが前提だった契約も何度かあった。それを約2万年も続けて、ルシル君の心が壊れなかったことは奇跡に近い。

『じゃあ、クロノはどうするつもりなの? 僕、ルシルをどうにかしたいとは思わない。出来ることなら、保管室にあるすべての魔力保有物を差し出したいくらいだ』

『馬鹿を言うな、ユーノ』

「じゃあなに? ルシルを徹底的に敵として処理するってこと? わたしは賛同できない。わたしも、シャルロッテ様も、ルシルに感謝してる。ルシルがいてくれたから、今ここにわたしが在る。その恩を返したい」

「私も、シャルに賛成。私が蘇ったのって、間接的に言えばルシルがこの世界に居てくれたからだしね」

「あたしやすずかが魔導師になれたのって、マリアさんが介入してくれたからなんでしょ?」

「向こうの世界の私とアリサちゃん、魔導師じゃないからなのはちゃん達となかなか逢えなかったみたいだし。そう考えると、ルシル君のおかげだよね」

「あたしのお母さんや、ティアナのお兄さんが死なずに済んだのも、ルシルさんが関係してるんだよね?」

「ええ」

シャルちゃん達がルシル君を敵とする考えを持ってるクロノ君に反論しだした。もちろん私だって、友達のルシル君とは敵対したくないし、事情を知ってしまった今は積極的に協力したいとは思う。だけど、局員としての私の葛藤もあるわけで。シャルちゃん達だって理解はしてるはず。感情と理性で、感情が勝ってる状況だ。

『僕だって力になりたいさ。だから、ルシルに魔力保有物を力ずくで奪われるのではなく、こちらからの許可を出したうえで魔力だけを持って行ってもらうようにする』

『それには賛成するけど、魔力を保有しているからこそ貴重な物もあるんだけど、どうする?』

『・・・その辺りは、ルシルに頼み込んで除外してもらうほかないだろう。だが、これにはえらく時間が掛かる。ディアーチェ。最終フェイズの開始まではあとどれくらいなんだ?』

「もうさほどは残っておらん。30分もせずに攻めくるぞ」

「たった30分・・・! クロノ、間に合う?」

『・・・君たちで時間を稼いでくれ。申請はこの会話と並列して行っている。必ず許可を出させる。だから、許可が下りるまで、ルシルにこれ以上の罪を重ねさせるな』

クロノ君の映るモニターからはキーを打つ音が忙しなく聞こえてきてる。今はクロノ君のコネクションを信じるしかない。だけど、そんなクロノ君の頑張りに水を差すような、私たちに最後の絶望を与えるような言葉が、ディアーチェとマリアさんから告げられた。

「急ぐがよいぞ。ルシリオンの最終目標たるエグリゴリ、ガーデンベルグ。アレの居る世界はヴィーグリーズと呼ばれるところでな。今我らが居るここ下位次元世界とは違い、アースガルドやアールヴヘイムと言った魔術が復活している上位次元世界に在るのだが・・・」

「下位次元世界と上位次元世界を隔てる境界線ですが、20年に一度だけトンネルが開きます。次を逃せばまた20年後。ルシリオン様には到底待つことの出来る時間ではありません。そして、そのトンネルが次に開くのは今日、今より3時間後になります」

「それって、つまり・・・ルシル君がこの世界に居られる時間も、残り3時間ってこと・・・なん?」

「はい。開くのは3時間後。開いている時間は、私が干渉能力で安定させるとは言っても最大で1時間。よって、ルシリオン様がこの世界に留まることが出来るのは、残り4時間前後となります。あなた方にとっては残念なことでしょうが、不変の事実です」

マリアさんの言葉に私たちは「そんな・・・」と頭を抱えた。ルシル君との本当の、永遠の別れまで残り4時間。たったの・・・4時間。
シャルちゃんがどこかにメールを送るためか手元に小さなキーボードを展開して、静かにキーを打ち始めた。

「4時間フルで君たちと話し、別れを惜しむことが出来ればいいのだが、ルシリオン君は4時間の間に、妨害してくる君たちを相手にて勝利し、本局の魔力保有物を奪取し、ヴィーグリーズに発ち、ガーデンベルグを斃さないといけないと、大忙しだからね。納得のいく別れが出来るとは限らないと思っていた方がいいかもしれないね」

「許可がどうとか考えず、戦闘なんて無駄な時間を過ごさず彼にサッと魔力保有物を提供して、戦闘に割くはずの時間を別れの挨拶に使った方がいいんじゃないの?」

「アルファの言う通りだわ。私としても、消える前に娘たちと話していたいわ」

ドクター、アルファ、プレシアさんと、クロノ君の案を否定。ルシル君との最後の時間が、ルシル君たちとの戦闘というのも悲しいものだよ。それでもクロノ君は『ダメだ。僕は感情で正義を歪めることは出来ない』と、あくまで規律と秩序を優先することを決めた。

「・・・ならば、子鴉以下うぬらは、ルシリオンとパイモンを瞬殺し、戦闘時間を可能な限り短くするほかない。・・・ルシリオンとパイモンとの戦闘は魔術戦となる。魔術を使えん者、エインヘリヤルはここに残る。おっても邪魔になるだけであろうからな」

「え? エインヘリヤルっていうことは、あんた達は一緒に戦ってくれないわけ? ユーリが居てくれたら割とルシルを足止め出来るって思ったんだけど」

「あ、私たちフローリアン家はちゃんと出ますよ? ただ・・・戦力として頼らない方がいいかと」

「アリサ。私たちはルシリオンに召喚されたエインヘリヤルでありますよ」

「敵対行為を取った以上、私たちはすぐに召喚を解除されるでしょうから・・・」

「だからボク達は、接敵と同時に本気の一撃で蒼羽を襲うつもり」

「それだけで墜とせるとは思えないですが、少しくらいは有利になると思います」

「おそらく、私たちが出来るのはそこまでと思うわ」

「ま、私たちは偽者だから消えるのは怖くはないし、問題無しよん♪」

余裕に満ちた笑顔を見せるフローリアン家のみんなが、消されることを覚悟のうえで味方してくれることを知って、アリサちゃん、それに私たちは、「ありがとう!」とお礼を言った。

「となると、今戦えるのってチーム海鳴とフローリアン家だよね? 特騎隊はほぼ壊滅でしょ?」

遠慮なく言ったアリシアちゃんだったけど、特騎隊のみんなからの反論も文句も出てこなかった。シャルちゃんを除く特騎隊のみんなは、“エインヘリヤル・ヴァルキリー”に魔力を奪取されてる。魔術発動には魔法と同じくどうしても魔力が必要だから、戦力外にならざるを得ない状況だ。

「私の干渉能力なら・・・?」

「やめなさい、アルテルミナス。先のテルミナスの人格に対して上手く効果を発揮できたのは、彼女があなたのサポートをしたからです。あなた単独での干渉能力の使用は、もう少し練習を経てからです」

「っ・・・。判りました」

ルミナちゃんも戦力外通告を受けた。暗い雰囲気になる中、「あたし達は戦えます!」って、スバルがビシッと右手を上げた。でも、「やめておいた方がいい。ルシリオン君との戦いでは君たちは足手纏いになる」ってドクターがキッパリ告げた。魔術戦で重要なのは神秘の濃度だけど、神秘が拮抗した場合に次に重要なのは魔力量だって聞いてる。スバル達もいろいろと死線を潜り抜けて来たけど、私たちに比べれば魔力量は十分とは言い難い。

「・・・え? ルシルさんとの戦いでは・・・?」

しょんぼりするスバル達だったけど、すぐにティアナが顔を上げてドクターに聞き返すと、ドクターに代わってディアーチェが「うぬらはパイモン戦に参加せよ」と告げた。スバル達の表情も明るくなって、元気な「はい!」を上げた。

「うむ。さて、今のうちに決めておかなければならぬことがある。ルシリオンと戦う者、パイモンと戦う者、それを決めねばならん」

ディアーチェから、今のうちに誰がルシル君かミミルさんと戦うかのチーム分けをするように言われたことで、相談した結果・・・

「わたしと八神家で、ルシルを押さえる」

「シャルちゃん達以外の私たちでミミルさんを押さえる、だね」

この世界で特にルシル君と関係の強かったはやてちゃんたち八神家とシャルちゃんは、戦闘の最中でもルシル君に伝えたいことがあるだろうということで、そんなチーム分けになった。もちろん私たちも、ルシル君とはいろいろなことをお話したいけど、ここはシャルちゃんとはやてちゃんに任せようと思う。

「・・・さてと。みんな。これから起こる戦いはいろいろと辛いだろうけど、実際クロノが言うように、これ以上ルシルに罪を犯させるわけにはいかない。ルシルにとって、私たちの迎撃は邪魔以外の何物でもないだろうけど、それでも止める。・・・そういうわけで、出撃します!」

シャルちゃんの号令に「了解!」と応じ、迎撃戦に参加する私たちは席を立ち、ミーティングホールの出口へ向かう。

「フェイト、アリシア。頑張っておくれよ。ルシルの奴を助けてやってくれ」

「判ってるよ、アルフ。あっちの世界じゃ(フェイト)のお婿さんだったんだしね」

「ちょっ、やめて、アリシア! 思い出しただけで恥ずかしくなる!」

顔を真っ赤にして恥ずかしがるフェイトちゃん、可愛い。アリシアちゃんはさらに追撃として、「そう言えばさ、フェイトとルシルの結婚後、2人ってどうなったの?」って聞いた。フェイトちゃんはさらに顔を赤くして俯いて、シャルちゃんとはやてちゃんは聞き耳を立てた。

「のちに女の子の双子、男の子ひとりが生まれましたね。そして、子どもや孫に看取られて、享年89歳の幸せな人生を終えました。ルシリオン様も、契約したフェイトさんの命と同一化していたので同時刻、同じベッドの上で静かに息を引き取りました」

「そうなんだ~。幸せに過ごせたんならいいや、うんうん。ちなみに、なのはとはやては――」

「それは聞かなくてもいいよ!」「聞かんでええ!」

アリシアちゃんが今度は私とはやてちゃんに攻撃を仕掛けてこようとしたから、2人は慌てて止めに入った。フェイトちゃんとルシル君の結婚式で、2人の投げたブーケを私とユーノ君が受け取ったことで、シャルロッテさんにからかわれた。そこから先の未来を聞く勇気は、違う世界線だからといっても私には違いないから無い。ユーノ君も苦笑いしてるし。

「「もう! アリシアちゃん!」」

「ごめん、ごめん! ・・・よしっ! 緊張は解けた! 行こう! リニス、私の使い魔になるっていう話、私たちが戻ってくるまでに決めておいてね! プレシアママも、また後で!」

「プレシア母さん、リニス、アルフ。いってきます!」

「ええ。いってらっしゃい。気を付けるのよ」

「しっかり考えておきます」

「フェイト、アリシア。それにエリオとキャロもフリードも。気を付けるんだぞ!」

「「はい! いってきます!」」「きゅくるー!」

フェイトちゃん達は、プレシアさんとリニスさんとアルフと手を振り合ってから、ここミーティングホールの出口を潜った。

「すずか君、アリサ君。戦闘許可が下りた今のパイモンは強い。気を付けて行ってきたまえ」

「無様な戦闘を見せないようにね、月村すずか」

「もちろんだよ、アルファ! ドクター、みんな。いってきます!」

「いってくるわ!」

すずかちゃんとアリサちゃんも、ドクターやシスターズ、個人的に因縁があるアルファに見送られながら出口を潜った。

「スバル、ティアナ、帰ったらゲーセン巡り! 約束だよ!」

「うん!」「判ってるわ」

見送りのデルタとハイタッチを交わしてからスバルとティアナも出口を潜った。

「はやて。コレ、持って行って。ルシルから貰った、魔術師化できる神器。きっと必要になる」

「ルミナ・・・。おおきに。ありがたく使わせてもらうな」

ルミナちゃんから指輪に紐を通した神器、“ヒミンバル”を受け取ったはやてちゃんは、一度胸に抱いた後で首に掛けた。そして「八神家、行くよ!」って、アインスさん達を伴って出口を潜った。

「マリアさん。個人的な話、いいですか?」

「はい。構いませんよ。どこでしましょう?」

「こちらでお願いします」

ルミナちゃんとマリアさんも出口を潜って、フェイトちゃん達とは反対方向に歩いて行ったのが見えた。そんなルミナちゃん達を目で追っていたら、『なのは』って、「ユーノ君」に呼ばれた。

『その、頑張って。応援してる』

「ありがとう、ユーノ君。いってきます」

『いってらっしゃい。・・・じゃあ、僕も僕でやれることをやってみるよ』

「うん。ユーノ君も頑張ってね」

『ありがとう。それじゃ、また』

ユーノ君の映るモニターが消えて、さぁ私も出ようと歩き出したところで、「なのは」って呼ばれたから、「シュテル。どうしたの?」って振り返った。

「・・・いずれまた、試合いましょう。きっと、我々はまた再会できます」

「うん。そうだね。またいつか・・・」

私もシュテル、ディアーチェ達と一緒に出口を潜り、特騎隊のみんなと何か話し合ってから最後に出てきたシャルちゃんと合流。先に外に出て廊下で待っていてくれていたフェイトちゃん達とも合流して、本局保管室へと向かう。
保管室へ向かうまでの間、私たちはほぼ無言だった。何せ、これから戦うのは親友であり戦友でもあるルシル君だ。模擬戦なんかじゃなくて、本気の撃墜のし合いになるかもしれない。

(ステアちゃんっていう女の子に変装してたルシル君とも戦ったけど、あの時のルシル君は本気ではあっても全力じゃなかった。・・・なりふり構わず来るだろう今回の戦い、シャルちゃんも言ってたけど辛いものになるだろうな・・・)

そんな緊張感が私たちの間に漂っている中、「なんか、さっきから他の局員と誰ひとりとしてすれ違わないんだけど・・・」って、シャルちゃんがそわそわと周囲を見渡した。ルシル君との激突が待ってるっていうことで気付くのが遅れたけど、確かに全然すれ違わない。今の時刻は普通に就業時間中だから、こんな無人のようなことにはならないはず。そんなことを考えてると・・・

「ルシル君・・・!?」「ルシル・・・!?」

“テスタメント”の正装とも言える格好――神父服、フード付きマント、目出し穴の無い仮面を身に着けたルシル君と、大人姿な「アイリ!」と、「ミミル、ルルス、フラメル!」の5人が、目の前の角から現れた。

「・・・パイモン、ルルス、フラメル」

「はい~」「ん」「あいよー!」

ルシル君は私たちに一瞥もくれることなく、この場をミミルさん達に任せてアイリと一緒に保管室へと通じる廊下を進もうとする。

「子鴉どもはルシリオンを追え!」

「うん! シャルちゃんも早く!」

すぐにデバイスを起動した私たちは、歩き去ろうとしてるルシル君とアイリを護るように立ちはだかるミミルさんとルルスとフラメルと対峙して、シャルちゃんとはやてちゃんたち八神家がミミルさん達の側を通り抜けられるよう援護するために即行動。

――ソニックムーブ――

――スプライトムーブ――

まず、フェイトちゃんとエリオとレヴィが高速移動でミミルさん達に突撃して、シャルちゃん達の行く手を確保しようとする。私も“レイジングハート”をエクセリオンモードにして、「アクセルシューター!」をスタンバイ。

――跳ね返す揺ぎ無き水塊(ブークライム)――

私たちとルシル君とを隔てるように発生したのは水の壁。全力で走り抜けようとしてたシャルちゃん達は止まることが出来ずに水の壁に激突。普通なら入り込むんだろうけど、「きゃあ!」と、ボヨンと勢いよく跳ね飛ばされて尻もちをついた。

「あいたた・・・。ミミル!」

「ここから先は通行止めよ~。ルシリオン陛下の仕事が終わるまで、私と踊ってもらうわね~」

――高貴なる堕天翼(エラトマ・エギエネス)――

雄クジャクの尾羽のような綺麗な翼が20枚と放射状と展開されると、ミミルさんの存在感が圧倒的なものになった。

「ルルス~、フラメル~。いくわよ~」

「はい!」「ほーい!」

――ユニゾン・イン――

ルルスとフラメルが光の粒子になったかと思えば、ミミルさんの胸に吸い込まれて行った。それは、さらなるミミルさんの強化が行われてしまったことを意味する。セミロングの白い髪が真っ赤になって、全身から漏れ出てる魔力の濃度が一気に濃くなった。瞬時に理解した。これは勝てないって。

――封鎖防壁――

水の壁が消失すると同時に展開されたのは魔力防壁。展開された瞬間にチラッと見えたけど四重の壁になってるみたいで、あれを突破するだけでもとんでもない労力が掛かりそう。

「狼狽えるではないわ! ルシリオンめ。我らを敵とすら見ず、召喚を解かったことを後悔させてやるわ! 呆ける暇はないぞ、貴様ら!」

「です! 私たちが壁を壊します!」

「私たちだって負けてられない! シャルちゃん達はいつでも追い駆けられるように準備を!」

ミミルさんに妨害されないように引き付けながら防壁を破壊する。やる事は単純、でも難度MAXの作戦。そう考えていたんだけど・・・。

「行って!」

――実数干渉――

背後からルミナちゃんの声が聞こえたと同時、魔力障壁すべてが一瞬で消滅した。何が起きたのか判らない。だけど、シャルちゃん達は振り返ることなく駆け出した。ミミルさんが慌てたようにシャルちゃん達に振り向こうとしたから・・・

「シュート!」

「プラズマランサー! ファイア!」

「ジャベリン・メテオ!」

「フローティングアイス!」

「イジェクティブファイア!」

「クロスファイアシュート!」

「ディバインバスター!」

「ルフトメッサ―!」

フローリアン家を除く私たちは一斉攻撃をして、シャルちゃん達の離脱をサポート。私たちの攻撃を受けながらもほぼ無傷なミミルさんは、シャルちゃん達の背後を護るためにすずかちゃんの創った氷塊へと攻撃・・・するより早く、今度はフローリアン家の一斉攻撃を受けた。
 
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