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刃こぼれ

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第二章

 二人で夜道をつけていくとだ、ある石のところに来た、そして。
 そこに飴家もいた、飴家は住職と僧を見て驚きの声をあげた。
「あれっ、どうしてここに」
「どうしてもこうしても」
 住職は飴家に唖然として返した。
「観音様の後をつけると」
「わしはお客さんの後をつけると」
 それでというのだ。
「ここに来ました」
「そうだったのですか」
「またこれは」
「妙なことですね」
「全く」 
 お互いにいぶかしんでいるとだった。
 赤子の鳴き声がした、それでだった。
 三人でその場を探すと石の横に赤子がいた、飴家はその赤子を丸い顔で見て言った。
「まさか」
「はい、観音様はです」
 住職は細長い顔で言った。
「この子を」
「守っておられたのですか」
「毎夜。おそらく天から乳を降らせられて」
 そうしてというのだ。
「飲ませていたのでしょう」
「では飴を買っていた女は」
「母親だったのかと」
 住職は飴家に自分の推察を話した。
「そうだったかと。そういえばこの辺りで身重の人が殺められたと聞いています」
「そういえばそうしたお話がありました」
「金を借りて帰る途中で。そしてその金を盗まれたうえで」
「この近くに葬られたとのことですが」
 それでもというのだ。
「そうなったとのことなので」
「その人が死にながらも子を産み」
「葬られた時にこの子は見付からず」
「そしてですか」
「ここにずっといましたが母の情愛で」
 それでというのだ。
「毎晩飴を買ってあげていたのでしょう」
「死霊となりながらも」
「そうかと」
「そうでしたか」
「それで、です」
 住職は一通り話を終えてから飴家に話した。
「この子と巡り合ったのも御仏のお導きです」
「では」
「この子は拙僧の寺で育てます」
「そうされますか」
「はい」
 こう言うのだった。
「その様にします」
「そうされますか」
「御仏のご加護と母親の愛も見ましたし」
 それに感じ入ってというのだ。
「その様にです」
「されますか」
「はい、これより」
 こう言ってだった。
 住職は赤子を引き取った、そしてだった。
 赤子を音八と名付け住職は寺の僧と共に彼を寺の小僧として育てた、飴家もよく顔を出して彼を可愛がった。
 音八はすくすくと育ち十五になった、そうしていよいよ本格的にだった。
 僧になろうという時になって夢の中で観音に言われた。
「そなた、自分の生まれは聞いているな」
「はい、何でも母は殺され」
 音八は観音に答えた。
「それで石の傍にいたとか」
「左様、そなたの父は旅に出ていたが途中崖に落ちて死んだ」
「そうでしたか」
「そなたには両親はいない」
 このことを言うのだった。 
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