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家猫かと思っていると

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第二章

「この娘も保護されてです」
「そうしてですか」
「野生に戻しますので」
「じゃあこの子達も」
「うちで預かっていいでしょうか」 
 こう彼に言うのだった。
「そうしていいでしょうか」
「どうする?」
 夫は妻に顔を向けて問うた。
「それで」
「そうね、普通の猫じゃないし」
 妻は夫に難しい顔で応えた。
「野生に暮らしている猫ならね」
「それならだな」
「もうね」
「うちで飼うのは無理みたいだしな」
「この人達に任せましょう」
「そうするしかないか」
 こう話してだった。
 二人はこう言ってだ、そしてだった。
 考えた末に四匹を動物園に預けた、子供達も猫達も四匹がいなくなって残念に思ったが仕方ないと結局は納得した。
 それから暫くしてだった。
 キリリュークは二人の家に来てこう言った。
「すいません、失敗しました」
「失敗?」
「失敗っていいますと」
「あの子達、ダーシャを入れて五匹の子達ですが」
 四匹に加えてというのだ。
「冬に野生に戻しますと」
「そうしたらですか」
「よくなかったんですか」
「はい、五匹共無事でも痩せ細って毛もボロボロで帰ってきまして」
 そうなってセンターに戻って来たというのだ。
「彼等は野生に戻って間もなく冬は厳しくて」
「それで、ですか」
「そうなっていたんですか」
「五匹共無事でも」
 このことはよかったがというのだ。
「ですが」
「それでもですか」
「そうした状況で」
「今度は春になって」
 その季節になってというのだ。
「五匹を自然に戻します」
「そうしますか」
「春になってからですか」
「はい、それでなのですが」 
 キリリュークはさらに言った。
「五匹にはマイクロチップを埋めていて」
「それで、ですか」
「どうなるかわかっていますか」
「だからですか」
「これからもですか」
「どうなるか見ていきましょう」
 こう夫婦に話した、そしてだった。
 夫婦は野生即ち自然に戻った四匹それにダーシャのことをキリリュークから定期的に聞いた、そうして彼等が自然の中で幸せに過ごしている助教を知って笑顔になった、一時的であるが家族だったからだ。それは子供達も猫達も同じでその話を聞く度に笑顔になった。彼等がいるべき場所でそうなっているのだから。


家猫かと思っていると   完


                    2021・5・15 
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