魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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最終章:無限の可能性
第294話「エピローグ」
前書き
最終話です。
最早何を書いても蛇足になりそうなので、ダイジェストで皆の“その後”となります。
「―――じゃあ、私達が過去に行くのも知ってたんだ」
「ああ。確か、祈梨さんが天巫女の力で因果関係の法則を確定させた事で、ヴィヴィオとアインハルト、それと今から少し未来のトーマが絶対に過去に行くようにしたんだ。多分、トーマも帰った先で説明されているんじゃないか?」
ミッドチルダにおける優輝達の家にて、優輝はヴィヴィオとアインハルトと話していた。
「……その因果関係から、優輝さんは自身の事を一部しか話さなかったのですか?」
「そうだな。ユーリ達のようなエルトリア在住の存在ならともかく、僕が神界の神であった事はあの時間では知っていてはいけない。だから、話さないようにしてたんだ」
「初めて緋雪お姉ちゃん達と会った時、色々ぼかしてたもんね」
転生してからさらに数年が経ち、世界はほぼ完全に復興していた。
世界に蔓延る法則こそ未だに神界の神達が代行しているが、建造物や自然などは全てが大戦前の状態に戻ったのだ。
「まぁ、例え知っていたとしても因果による強制力で喋れなかったみたいだけどな」
「……優奈さんや祈梨さんなどですね」
「そうだ。祈梨さんはともかく、優奈に関してはヴィヴィオにもアインハルトにも双子の妹として説明していた。……なら、過去にも存在していると思うはずだからな」
いちいち自身の“可能性”の一つとして生まれたと説明するにしても複雑だ。
そのため、わかりやすく優輝と優奈の関係は双子という事にしていた。
もちろん、司やなのはなど、共に戦っていた者達ならば当然真実は知っている。
そんな中、ヴィヴィオとアインハルトは本当に双子だと思っていた。
それならば過去に行った際、優奈について少しでも言及するはずだった。
しかし、それらを言及するどころか、考えにも浮かんでいなかったのだ。
「全く考えが及んでいませんでした」
「多分、因果の強制力で完全に忘れていたんだろう。過去から戻る際に記憶を封印したのと同じように、因果の強制力で忘れさせられたという訳だ」
「忘れていた自覚すらないのは怖いなぁ……」
過去に行った際の記憶を思い返し、ヴィヴィオは項垂れる。
なお、ヴィヴィオとアインハルトにも記憶封印の処置はあったが、現在では優輝があっさりと解除してしまっているため、全部思い出している。
「さぁ、長々と説明したから遅くなったな。アインハルトは帰った方がいいぞ」
「そうですね。ちょうど暗くなってきましたし……」
「同行は必要か?」
「いえ、大丈夫です」
外を見れば既に夕焼け空だ。
アインハルトは優輝の家にお邪魔している形なので、帰る支度を始めた。
「手ぶらで返すのもなんだし……ほら」
「これは……魔力の……結晶?」
「魔力結晶だ。純度が高いから、アームドデバイスのカートリッジと違って誰でもその魔力を取り込める。まぁ、外付けのリンカーコアみたいなものだ」
「……ありがとうございます」
しばらく結晶を眺めていたアインハルトはお礼を言い、優輝の家を後にした。
それを見計らったように、家の奥から椿と葵がやって来た。
「話は終わった?」
「ああ」
「じゃあ、夕飯を作ろっか」
そのまま夕飯の支度に入る。
しばらくして緋雪と優奈も帰宅し、団欒の場となった。
「……それで、私達の事全部話したのね」
「せっかくだからな。ところで、そっちはどうだった?」
「いつも通りよ。法則の綻びの補修に、その悪影響の排除」
「私はまたベルカに行ってたよ」
今日あった事の話をしつつ、ヴィヴィオも知った事をさらっと流していく。
ヴィヴィオにとってなかなか衝撃的な真実なのだが、気にしてもしょうがないとばかりに優輝達はいつも通りだ。
「特に変わった事もなし、か。じゃあ、次の日曜はどうだ?」
「空いてるよ」
「私も。最悪用事が出来ても許可さえ貰えれば転移ですぐ帰れるけど」
「そうか。……よし、次の日曜は地球に帰ってみるか」
優輝達は管理局に所属している訳でなく、フリーの魔導師に近い。
そのため、以前ほど多忙でもなく、定期的に地球に帰っている。
アリサやすずかのように地球で活動しているメンバーや、高校に進学した聡達などと交流を続けているからだ。
なのは達も不定期ではあるが一か月に数回は帰っている。
「そういう事だからヴィヴィオ、次の日曜は地球に行くぞ」
「うん。また久遠に会えるんだね」
既にヴィヴィオも何度か地球に行っており、中でも久遠と仲良くなっていた。
そんなこんなで夕食は終わり、風呂、寝支度と一日が終わっていく。
「……あまり根を詰めすぎるなよ」
「あら優輝。そういうなら手伝ってくれないかしら?」
「まぁ、代行出来るもの限定ならな」
優奈の私室にて、優奈は今日の仕事に関する書類を纏めていた。
法則の綻びなどに携わる仕事は、常軌を逸脱しているのもあり、報告書が複雑だ。
「お前も今は人間と変わりないからな」
「お互いにね」
「それに、仕事し過ぎるとまた帝が心配するぞ」
「……貴方もずっと似たような状態だったでしょうに」
作業を進めつつ、二人は軽口を挟む。
「……平和になったもんだ」
「ええ。大戦の時と比べるとね」
これまで大戦の後処理に二人は追われていた。
優輝の場合は再会してからだが、それでも忙しさはあった。
それも落ち着き、こうして平和を享受していた。
だから、二人は感慨深そうにその事を語る。
「色々あったが……上手く着地点を見つけられたな」
「そうね。……ありがと、もう終わりよ」
「ああ。じゃあ、お休み」
夜は更けていき、そしてまた朝がやってくる。
日常を取り戻した二人の表情は、どこまでも穏やかだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
~それぞれのその後~
「それじゃあ、地球に行くぞ」
―――志導優輝及びその家族
転生から戻った後、紆余曲折を経てミッドチルダを拠点に活動。
フリーの魔導師として活動し、優奈や緋雪、椿達と同居している。
ヴィヴィオを養子として迎えており、原作と同じように学院にも通わせている。
優奈と緋雪もフリーの魔導師になっており、椿は優輝の使い魔という扱い。
葵は椿のユニゾンデバイスなので、使い魔にはカウントしていない。
また、定期的に地球へと帰り、地球にいる友人等との交流も続けている。
両親はミッドチルダに定住しており、管理局に就職した。
タッグでのコンビネーションが優れている事で一部から注目されていたりする。
現在は安定した日常を送っている。
「はい。これで傷は治りましたよ」
―――聖奈司
現在は地球を中心に天巫女として活動している。
天巫女の力を磨くために、各地でその力を駆使して支援などをする。
地球を拠点にしているため、管理局と地球の橋渡し役を担う事も。
家にも度々帰っており、家族との交流も欠かしていない。
優輝に対しての想いは変わらず、偶に自分から会いに行ったりしている。
ヴィヴィオを連れて戻ってきた際は驚いたが、ヴィヴィオとの仲も良好。
ちなみに、天巫女の力で助けた人達からは“現代のジャンヌ・ダルク”と呼ばれている。
「任務完了。ただいまより帰還します」
―――天使奏
現在はミッドチルダを中心に管理局の武装局員として活動している。
白兵戦における早さから、単独で一部隊以上の功績を挙げている。
また、その強さから臨時で教導官を担う事もある。
地球には不定期だが余裕があれば帰っており、交流は続いている。
優輝への想いも変わらず、度々会いに行ったりしている。
なお、冷静に敵を制圧する事から、管理局では“冷徹な天使”と呼ばれている。
何度か優輝と会っている所を目撃されているため、仲を勘ぐられたりもしている。
「っし、今日はここまでだ。各自、しっかり体を休めておけ」
―――王牙帝
現在はミッドチルダで管理局の教導官として活動している。
主に近接戦や徒手による戦闘を教え、よく武装局員を筋肉痛にしている。
神界大戦の時程の強さは失ったが、それでもフィジカルは人間離れしたまま。
最近は優奈といい感じになっているが、それより先に踏み込めずにいる。
周りの人はそのもどかしさに呆れられていたりする。
かつて抱いていた主人公のような立ち位置ではないが、充実した日々に満足している。
「フェイト、終わったか?」
「うん。もう終わったよ」
―――織崎神夜及びフェイト・テスタロッサ
フェイトは原作通り執務官となり、神夜はその補佐を務めている。
転生特典は失ったままだが、神夜はそれをケジメとしてそのままにしている。
そのため、魔導師としての力量がかなり落ちている。
尤も、それでも武装局員を務められる程度には強い。
魅了の事があっても好いてくれたフェイトと付き合い、今は同棲している。
その内結婚するだろうと、身近な人達に思われていたりする。
「人の事言えないけど、帝君もなかなかスパルタだなぁ」
―――高町なのは及びその家族
原作通り戦技教導官となって活躍している。
ただ、ヴィヴィオを養子に取ってない分寂しいのか、地球との交流を続けている。
ヴィヴィオが幼い時に母親代わりを務めていたため、原作通りママと呼ばれている。
教導の際、稀に家族を呼んで魔法を使わない戦術での臨時講師をしてもらう事も。
遠近両方に加え、空戦陸戦もこなす事から、専ら“管理局の白い魔王”と呼ばれている。
帝と合わせ、教導してもらえればどんな無能でも一端の武装局員になれると話題。
「リイン、そっちの書類持ってきてぇな」
―――八神はやて及びその家族
原作通り海上司令となり、活躍している。
現在はベルカ地区に拠点を構えており、ヴォルケンリッターと共に日々活動している。
階級や保有戦力の関係上、はやて自身はあまり自由に動けなかったりする。
騎士ゼストが生存しているため、アギトとは家族になっていない。
ただし、シグナムと相性がいい事もあり、交流はしている。
なのは達と同様、地球との交流は原作よりも行っている。
「それじゃあ、今日の霊術講座始めるよ!」
―――アリシア・テスタロッサ及びその家族
現在はミッドチルダを拠点に活動している。
霊術を教える特別教導官として管理局に所属し、日々霊術を教えている。
偶に椿やアリサ、すずかなどを臨時講師として呼んだりしている。
プレシアは研究職に復職し、強力な魔導師兼研究者として活躍中。
アルフはフェイトに、リニスは司の使い魔なのでそちらについている。
あまり家族が家に揃う事はないが、日々は充実している。
「ふー……今週も疲れたわ」
「お疲れ様。この後お茶会でもする?」
―――アリサ・バニングス、月村すずか及びその家族
現在も変わらず地球を拠点に活動。大学にも入学している。
大戦に関わった事と、霊術を扱える事から何かと頼られたり英雄視されている。
原作よりもなのは達と連絡を取り合っているため、日々その連絡を楽しみにしている。
また、それぞれの家族が管理局と地球の橋渡しを担っている。
ちなみに、サークル等には入っていないが、何かと助っ人で呼ばれたりしている。
「走り込みはここまでです。次は素振りといきましょう」
―――現世在住の式姫達
元々江戸から生き残っていた式姫は、引き続き現世で暮らしている。
山茶花(シーサー)のように定住地がある者はそこへ戻り、他は各地を転々としている。
蓮(小烏丸)や鞍馬などの一部の式姫は退魔士の指導役になり、鍛えている。
優輝達とは若干疎遠になったが、暑中見舞いなどハガキ程度の連絡は取っている。
余生に飽きるまでは現世で生き続けるようだ。
「まさか、今になって現世とやり取りできるようになるなんてね」
「大戦で残ったものも、悪い事ばかりではなかったようだね」
―――有城とこよ、瀬笈紫陽
現在は幽世に戻り、のんびりと暮らしている。
幽世の大門が開き、さらに世界の法則が乱れた事に対する影響への対処を行っている。
神界大戦の影響で現世と幽世の関係性が若干緩くなっている。
一定の制限があるとはいえ、現世と幽世の行き来が可能となった。
そのため優輝達や式姫達とも頻度は少ないが交流し続けている。
「……またこの手紙……掌返しもいい所だわ。本当に」
「確かに……鈴さんの話だと、これは酷いですね……」
―――土御門鈴、瀬笈葉月
現在は土御門本家の支援を受けつつ、二人で活動している。
鈴は住んでいた分家から掌返しの手紙を何度も受けているが、悉く無視している。
葉月は成り行きで鈴と共にいるが、特に不満はないようだ。
幽世とも連絡が取れるようになったため、とこよ達との交流も続いている。
優輝達とは若干疎遠になったが、那美を通じて近況報告などを偶にしている。
なお、極稀に霊術を専門に扱う人物としてアリシアに呼ばれる事がある。
ちなみに、デバイスのマーリンは式神を応用してある程度自立活動が可能となった。
「また聖王教会に呼ばれたんですか?」
「はい。ですので、ディアーチェ達にも伝えておいてください」
―――ユーリ・エーベルヴァイン及びエルトリア在住組
現在もエルトリアを拠点に活動している。
エルトリアは未来から漂流してきた次元世界なため、管理局の保護下に置かれた。
現在のエルトリアと区別すべく、“第1時空漂流世界”と認定された。
戦乱以前の古代ベルカの生き証人なため、ユーリはよく聖王教会に呼ばれている。
サーラもエルトリアに住む事になり、復興も完全に終わった。
優輝達との交流も続いており、のんびりと暮らしている。
「ククク、さすがは理力。研究してもしつくせないとは……!」
―――ジェイル・スカリエッティ及びナンバーズ等
現在はエルトリアに居候させてもらっている。
元々次元犯罪者として指名手配されていたが、神界大戦での活躍で刑が軽くなった。
監視付きではあるが、研究者として活動している。
ゼスト達は既に解放しており、今は疎遠になっている。
ナンバーズ達は一部のメンバーは原作通りの立ち位置に落ち着いている。
ただし、ナカジマ家に入った訳ではなく、今も姓はない。
理力について研究するようになり、今はその奥深さに夢中になっている。
「ではユーノ司書長、次はこれを頼む」
「またかい!?」
―――クロノ・ハラオウン、ユーノ・スクライア及び管理局
現在は原作通りそれぞれ提督、司書長の立場に落ち着いている。
神界大戦の折に管理局にも大きな打撃が与えられた。
その影響か、上層部の腐った部分が露見し、管理局は大きく変わった。
特に、最高評議会とレジアス中将の辞任が大きいとも言える。
結果、マッチポンプのような犯罪は大きく減ったが、人材も減ってしまった。
人手不足には変わりないが、かなりクリーンな職場になった。
尤も、一部の役職はブラックのままだが。
「突然連絡してきてどうしたのよスバル?え、暇かって?一応、今日は休みだけど」
―――ティアナ・ランスター、ティーダ・ランスター及び元機動六課
基本的に原作と変わらない立場に落ち着いている。
ティーダはティアナに霊術を習得させた事で、式神として傍にいる。
その事から精神的な余裕があるため、原作よりも力量がある。
また、ティアナは管理局における霊術の試行運用第一人者だったりする。
霊術の有用性を示した事で、管理局でも霊術を扱うようになった。
ティアナ以外のStSメインメンバーは優輝達との関わりは薄め。
ちなみに、フィールドを活かした戦術ではティアナが最も優れている。
「久遠、夕方には戻ってくるようにね」
「うん。わかった」
―――神咲那美、久遠
現在も八束神社に在住&アルバイト。
大きな戦闘を経験したからか、那美はかなり落ち着いた女性へとなっている。
久遠も各方面の人と出会ったからか、人見知りがだいぶ軽減された。
今では近所の子供と狐な事は隠しつつ遊んだりしている。
ヴィヴィオとも仲良くなっており、地球に来た日は率先して会いに行っている。
「すまん玲菜!勉強を見てくれないか!?」
「また!?もう、仕方ないわね……」
―――大宮聡、小梛玲菜及び優輝達の友人
現在は完全に日常に戻っており、二人は同じ大学に進学している。
優輝の友人だけでなく、アリシアやなのは達の友人も一部は交流が続いている。
しかし、大学までになると疎遠になった友人もいるようだ。
優輝やなのは達などが地球に来た時は会いに行ったりしている模様。
ちなみに、聡と玲菜は幼馴染カップルとして大学内で結構知られている。
「しばらくは様子見ですね」
「そうですね」
―――ミエラ、ルフィナ及び神界の神達
現在は次元世界の狭間を利用して、そこを拠点としている。
世界の法則を運営するため、あまり人目に触れない場所を選んだようだ。
主の戻ってきたミエラとルフィナも普段は優輝達と会っていない。
必要最低限の交流のみ取っており、あまり人々とは触れ合わない。
しかし、最近は運営も安定したため、何度か地球やミッドチルダにも姿を現している。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「久遠ー?どこに行ったのー?」
休日。定期的に地球に帰る日で、優輝達は地球に戻ってきていた。
ヴィヴィオは八束神社へと遊びに行き、久遠を探す。
「どうして今日は付き添ったの?最近はヴィヴィオだけでも行かせてたのに」
「ん?まぁ、ちょっとな」
普段、優輝達はヴィヴィオに付き添わない。
最初こそ付き添っていたが、今のヴィヴィオなら不審者程度は撃退出来る。
その事から、一人でも大丈夫だと判断していた。
だが、今日は緋雪の言う通り優輝達は付き添いで同行していた。
「……こういう時の優輝って、絶対なにか隠しているわよね?」
「だねー」
はぐらかす優輝に、椿と葵は呆れたように視線を向ける。
「バレバレじゃないの」
「どうせすぐに理由は分かるからいいだろ」
優奈は理由について知っているため、からかうように優輝を小突く。
「今日は那美さんもいないし、山奥にでも行ってるのかな?」
「もしくは、近所の子供と遊んでいるとか?あの子、人見知りがだいぶ緩和されていたし、ここから離れていてもおかしくないもの」
「それはありそうだねー」
何度も呼びかけながら探すヴィヴィオを見ながら、緋雪達は憶測を言う。
「……それで、本当にいるのかしらね」
「優奈だって、感じ取ったんだろう?」
「私は微かに、ってだけよ。貴方と違って、転生の気配までは分からないもの」
小声で緋雪達に聞こえないように優輝と優奈は話す。
すると、近くの茂みから草を掻き分ける音が聞こえてきた。
「あ、久遠!」
「久遠と……もう一人?」
茂みから見える狐耳に、ヴィヴィオが駆け寄る。
その時、椿が久遠以外にもう一人いる事を察知する。
「っ……!?」
「あれ?久遠、その子は?」
息を呑む緋雪達。
それを余所にヴィヴィオは久遠が連れている少女について尋ねた。
「さっき、見つけた」
「見つけたって……迷子?」
「多分」
その少女は、ヴィヴィオよりも僅かに年下ぐらいの背丈だった。
長い銀髪に加え、血のように赤い瞳。
幼い見た目になったとはいえ、その容姿に緋雪達はあまりにも見覚えがあった。
「………!」
「え、え?どうしたの?」
故に、緋雪達はいつでも動けるように構えていた。
それに気づいたヴィヴィオはその突然の臨戦態勢に困惑している。
「……本当にいたわね」
「言った通りだろう?」
そんな中、優輝と優奈は平然と件の少女へと近づく。
「……名前を聞いてもいいかい?」
膝を曲げ、視線を合わせて優輝は少女に問う。
優奈はその間、臨戦態勢の緋雪達を落ち着かせるために手で制していた。
「……イ…あ、えっと、アイリス……です」
少女は優輝をじっと見つめ、何度か逡巡した後、そう名乗った。
姓はなく、言い直した様子から明らかに普通ではないと思われる。
それでも、優輝は優しく微笑みかける。
「うちに来るかい?」
「……!はい……!」
親の事や、事情を聞かずに優輝はそう語りかけた。
本来ならば事案とも取れる発言だ。
しかし、少女……アイリスは顔を輝かせて了承した。
「お、お兄ちゃん。その子ってもしかして……」
「ああ。緋雪達の想像した通りだ」
緋雪達もここまで来れば何となくわかる。
彼女こそが、あのイリスの転生体なのだと。
「ほら」
優輝が手を差し伸べ、アイリスがその手を掴む。
かつては争った仲だが、今はそのしがらみもない。
“性質”に囚われずに優輝と触れ合えるようになったからだろうか。
その記憶があるのだろうか、アイリスはどこまでも穏やかな笑みを浮かべていた。
―――無限に連なる“可能性”の道筋。
―――この再会は、その一つでしかないだろう。
―――故にこそ、“可能性”は続いていく。
~Fin~
後書き
という訳で、完結です。
最後のイリスの転生体(アイリス)の記憶に関しては自由に想像してください。
完全に失っているのか、一部だけ覚えているか、何も忘れていないのか、そこまでは敢えて描写せずに終わらせました。
初めて投稿を始めた小説故、途中で書き方が二転三転としましたが、ようやく完結しました。なお、別で始めた小説が既に二つも完結しているという事実……(´・ω・`)
設定の練りこみ、描写の甘さなどが多々ありましたが、本来読み専でしかなかった自分からすれば、まだやりたい事を詰め籠めた方だと思います。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!
本編はこれで終わりですが、もし気が向いたら番外編とかを投稿するかもしれません。
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