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レーヴァティン

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第百九十七話 小田原入城その五

「そこでだ」
「失態を犯す」
「それが怖いのですね」
「そうなのですね」
「そうだ、慢心した軍勢なぞだ」
 例えそれがどれだけ優勢でもというのだ。
「これ程脆いものはない」
「だからですね」
「順調過ぎるのが怖い」
「そうだというのですね」
「そうだ、だからだ」
 それ故にというのだ。
「こうした時こそ怖い、一旦上野と下野そして上総と常陸の境でだ」
「その国々の境で、ですか」
「どうされるのですか」
「ここは」
「兵を集結させて停止させる」
 その様にさせるというのだ。
「そうする、そして落ち着くことだ」
「では頭を冷やす」
「そうさせますか」
「ここは」
「そうだ、勝ちが進んでいる時は波に乗っていれば進むべきだが」
 それでもというのだ。
「若し油断や驕りが生じているならだ」
「戦うべきではない」
「そうなのですね」
「そして今はその危険がある」
「だからですか」
「進軍を止めてだ」
 そうしてというのだ。
「頭を冷やせ、そしてこうしたことが面白い様に進む時こそだ」
「まさに今ですが」
「その今にですか」
「災害が起こったりだ」  
 英雄はさらに言った。
「巨人共が出るものだ」
「好事魔多しですね」
「そう言われますが」
「こうした時こそですか」
「不慮のことが起こりますか」
「そうしたものだ、世の中はだ」
 それはこの世界でもというのだ。
「万事順調にいっていると思った時こそだ」
「何かが起こる」
「そして状況は変わる」
「そうなるものである」
「上様はそう言われますか」
「実際そうだな、お前達も過去そうだった筈だ」
 周りにいる彼等にも言った。
「そうだな、生きていて」
「はい、言われてみますと」
「何事も順調だと思えば」
「常に何か起こってきました」
「それも思わぬことが」
「それでしくじったりです」
「または中断もしてきました」
 周りの者達即ち幕府の要職にいる者達も口々に答えた、英雄が言っていることはまさにその通りであると。
「学問も武芸もです」
「そして世事のことも」
「実にいい具合に進んでいると思えば」
「そこで怪我をしたり思わぬ用が入り」
「中断したり遅れます」
「そうなります」
「世の中は様々な要因で形成されている」
 決して自分一人だけの世界ではないというのだ。
「他の者もいれば災害もあり事故もだ」
「起きますね」
「まさに何時何が起こるかわかりません」
「だからですね」
「今の我等もですね」
「何かが起こるとな」
 その様にというのだ。 
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