戦国異伝供書
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第百二十二話 大友家動くその三
「しかしな」
「それでもですな」
「神社や寺は戦のあとで修理する」
「元に戻しますな」
「その様にしますな」
「うむ」
家臣達に強い声で答えた。
「そうする、今は壊させるに任せるしかない」
「無念ですが」
「そういうことですな」
「今は」
「戦に勝つまでは」
「まずは高城に寄せる、そして高城を攻めれば」
その時にというのだ。
「報が入り次第じゃ」
「兵を集め」
「そうしてですな」
「出陣ですな」
「そうしますな」
「その時にな、それまでは動いてはならん」
決してというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「まだ動きませぬ」
「その様にします」
「頼むぞ、しかしな」
義久はさらに言った。
「大友殿はまことにおかしくなられたな」
「ですな、耶蘇教に溺れ」
「他の教えを粗末にするなぞ」
「それでは家中がおかしくなるのも道理」
「左様ですな」
「そうじゃ、社や寺を壊すなぞ許せぬが」
日向島津家の領地のそれはというのだ。
「しかしな」
「今は我慢ですな」
「耳川で雌雄を決することを考えれば」
「そうするしかありませぬな」
「今のところは」
「そうじゃ、我慢も戦のうちじゃ」
動かぬこともというのだ。
「武田殿も言っておられるな」
「動かざること山の如し」
「風林火山にもありますな」
「だからここは、ですな」
「我等も動きませぬな」
「そうしますな」
「そうじゃ、しかし動けば風の如しじゃ」
その時が来ればというのだ。
「武田殿の旗にはそうあるという」
「風の様に素早く動き」
「そうして進む」
「その様にしますな」
「ここは」
「そして林の様に静かでな」
その進みはというのだ。
「耳川まで進む、そしてな」
「戦となれば」
「火の様に激しく」
「そうして攻めますな」
「そうする、だから今は動かぬ」
まさに山の如くというにだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「その様にしましょう」
「今は動かず」
「山となりましょう」
「その様にな、わしの言葉を待て」
主である自分のというのだ。
「動くというまでな」
「動く時は必ず来る」
「その時を待てばよいですな」
「今の我等は」
「それも戦ですな」
「戦は戦の場でのみするものか」
義久は家臣達に問うた。
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