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レーヴァティン

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第百八十八話 連勝その五

「けれどその分もな」
「幕府が求めていたのは年食よ」
「あと少しの税だな」
「そんなのだったから」 
 それでだったのだ。
「幕府の財政は辛かったわ」
「百五十年位赤字だったな」
 二百六十四年に渡る歴史の中でだ。
「結局」
「幕府の失敗は江戸時代初期のままの租税だったからよ」
「財政赤字はな」
「まあ民には凄くよかったけれどね」
「お米以外のもの作ったら丸儲けだったしな」
「そんなのだったから」
 その米、年貢も安かったこともあってだ。
「もうね」
「天領だとお家が大きくてな」
「豊かだったわ」
「そうだったな」
「ただ幕府は常に財政危機だったけれど」
「あれは税制がな」
「どう見ても古かったし」
 泰平の世の中で経済も産業も発展し技術も進歩した、農具も千歯こぎやとうみといったものが出て来ていた。
「しかも幕府の税収をね」
「低く抑え過ぎていたんだな」
「諸藩の手本になるとか言ってね」
「あえて低くしてか」
「常に財政危機だったのよ、産業を興しても」
「国の財政に入れなかったな」
「商業は栄えたけれど」 
 江戸や大坂、京都等でだ。
「それでもね、しかも抱えている旗本や御家人も多くて」
「俸禄もあってか」
「本当に辛かったのよ」
「それは幕府の税制の問題か」
「古くて自分達の財政の健全化を考慮しない」
「それでだよな」
「もっと普通にしていたらね」
 年貢だけを収益にする様なそれを変えていたらというのだ。
「副産物とかお金の方の収入も得ていたら」
「幕府も赤字じゃなかったな」
「そうなっていたわ」
「そうなんだな」
「というかです」
 源三もどうかという顔で言ってきた。
「江戸時代初期の税制システムでそのままいくなぞ」
「幕末までな」
「流石に無理があります」
「あれだけ経済が発展して進歩したのにな」
「泰平であるならば」
 それも只の泰平ではなかった、二百年以上日本の何処でも戦いがなかった奇跡の平和と呼ばれるまでものものだった。
「それでそれなりの政をしていれば」
「経済は発展するな」
「そうなります、そしてです」
「商業は栄えてな」
「産業も興ります」
「それがお百姓さんのお米だけの税制続けるとな」
「町人からも税はあっても」
「少しでしかもお百姓さんもお米だけだったしな」
 年貢として得るものはだ。
「それじゃあな」
「財政が危ういのも当然です」
「初期はそれでいけてもな」
「慢性的な赤字になるのも当然です」
「しかもその年貢も低かったしな」
「勿論飢饉の時は救済策を行います」
「それが勿論っていうのはいいことだけれどな」
 久志はそれは善政とした、そうした際に対策を講じそれを実行に移してきたのは幕府の美点であった。 
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