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さすが呉島主任だ!

作者:豚汁@
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#1 ノブリス•オブリージュ

……ここは…どこだ?



地面に横たわっていた体を起こし、辺りを見る。かなり長い時間横たわっていたのだろうか。体のあちこちが痛みを訴えている。目覚めたばかりで辺りも薄暗いからだろうか、ほとんど何も見えない。様に暗中模索という言葉が似合うであろう状況。辺りにはホコリのようなものが漂っていて、空気を吸うとくしゃみや咳が出て苦しい。有害な物質が含まれている可能性もある。とりあえず、出口を探そう。
俺は探り探り真っ暗な空間を進んでいく。あまりにも暗いため、方向感覚がおかしくなる。ただひたすら歩く。並の人間ならば、不安で心が押しつぶされそうな状況だ。それでも歩く。しばらくするとドンチャンと誰かが騒いでいるような声が聞こえてくる。誰かがいるのかも知れない。
「おい!誰かいるのか!」
返事は帰ってこない。聞こえていないのだろうか。それとも偶然人の声に聞こえたのだろうか。まぁ、可能性としては前者の方があり得る。なぜならば、先ほどから楽しそうに騒ぐ人々の声が止まないからだ。食器を叩くような音も聞こえる。さっきからやけに蒸し暑い。宴会でもやっているのだろうか。騒がしい声や音に耳を澄ませ、進んでいくと突然、明るい空間へと出た。

「っく…」

思わず目を覆ってしまう。それもそうだ。暗い空間から明るい空間へ急に出れば目がまいってしまう。
目が慣れたところで辺りを観察しつつ、自分の置かれた状況を整理する。辺りには繁華街の様な雰囲気の空間が広がっている。いや、恐らく本当に繁華街だろう。先程の笑い声は俺の正面に立っている居酒屋のような店の客達のようだ。本当に宴会をやっているとは。行き交う人も普通の人間ばかり。ここは実験施設でもなければ別の惑星でもないごく普通の普通の何処にでもあるような繁華街。なぜ俺はあんな場所で倒れていたのだろうか。
俺は壁にもたれかかり、地面に座った。

「おい、そこの兄ちゃん!あんた人間かい?珍しい格好してるね」

突然、気さくそうなおばちゃんに声をかけられる。年齢はおそらく50代前半だろう。着物姿で座り込んだ俺の前に立っていた。『珍しい格好』確かにそうかも知れない。何故かこの辺を通る人達は半数以上が着物を着ている。また、俺の目に映る人の中でスーツ姿の人など誰もいない。まぁ、単にスーツが土で汚れてるからからかってきただけの可能性もあるが。しかし『人間かい?』という問いはどういうことだろうか。まるで人間が珍しいような言い方だ。わざわざ初対面の人に言うような質問でもない。

「まぁ、人間だと思うが。しかしどういう意図があってその質──」
「「始まった!」」

俺の問いかけを突然物凄い歓声がかき消す。そして歓声の割にはものすごい打撃音。喧嘩か?

「ほらほら早く行かないと!」
「ちょ、なんなんだあれは」

おばちゃんに手を強引に引っ張られ、人混みの中へと押し込まれる。しかしこのおばちゃん、やけに握力が強い。そして爪が長い。結局手を振り解くことができず、最前列へと並ぶことになった。

目の前には2人の少女がものすごい目つきで荒い息をしながらお互い睨み合っている。頬が若干火照っている辺り、酔っているのだろうか。しかし彼女達を見る限り背の低い方は未成年に見える。ここは未成年の飲酒は禁止されていないのだろうか。だが人々の使う言語は日本語。ここが日本のどこかだと思うから普通に未成年者飲酒禁止法に当たる気もするが。

「今日こそ」
「決着を!」

がなるような叫び声で俺の視線は再び少女達に戻される。しかし一人分のセリフを2人で言う辺り、かなり仲が良さそうに見えるのだが、2人からはそれ以上の気迫を感じる。野次馬達は一歩引き下がった。一体何が始まると言うのだろうか。

「いくぞ。萃香!」

そう言って背の高い方の少女が取り出したのは…過去の遺物、『戦極ドライバー』
俺は思わず目を見張る。
ありえない、一体何故それを持っている?こんなに平和な繁華街で。
戦極ドライバーは俺が海外を渡り、回収してまわっている。こんなに普通の繁華街にベルトが流れているとは想像もつかない。
戦極ドライバーはヘルヘイムの脅威がさった今、それは必要のないものだ。

『クルミ!』

ロックシードのシステム音声で俺の意識は現実に引き戻される。気がつけば背の高い少女はドヤ顔でロックシードを構えている。
腰には見たことのないライダーの横顔がライダーインジゲーターに描かれている。頭上にはクラック。そしてクルミ型のアーマーパーツ。
俺はもう1人の方に目をやる。当然、背の低い少女もベルトを腰に装着している。そして手に持っているロックシードを開錠した。

『パ イ ン』

2人はベルトを操作し、アーマーパーツが降り切る前にお互いの名?を叫びながら走り出した。

「萃香あああああ!」
「勇儀いいい!」

クルミボンバーとパインアイアンがぶつかり、激しい音が辺りに響く。

「まだまだぁ!」

背の低い少女はそういうと俺の視界から消えた。そのかわり周りに霧が発生している。
馬鹿な。戦極ドライバーにそのような機能は搭載していないはず。

「あまい!」

一瞬、攻撃のために背後に姿を表した少女をパインアイアンでノールックでヒットさせ、怯んだ一瞬の隙をつきストレートを放った。拳はクリーンヒットし、仮面が半壊し、背の低い少女は吹っ飛んでいった。
これにまた俺は違和感を覚える。確かにパインはパワー系のアームズだが仮面を破るほどのパンチ力は無いはずだ。彼女達の戦極ドライバーには何か仕掛けがあるのか?

「よっしゃ!」

「負けたー…」

どうやら勝ち負けは変身が解けたらというルールだったようだ。
おっとこうしてはいられない。どこで戦極ドライバーを手に入れたのか。そしてさっきの見たことのない技は何なのか。必ず突き止める。

俺は少女達に歩み寄る。




  
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