| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

少年は勇者達の未来の為に。

作者:幽牙
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

鷲尾須美は勇者である 再臨の章
  プロローグ

 
前書き
まずはこの場をお借りして、d.c.2隊長様、主人公の勇者服や一部のストーリー(小学校の園子との出会いなど)を参考にさせて頂き、また許可を出して下さり本当にありがとうございます。

勇者服や似たエピソード等あるかと思いますが、自分なりに話を作っていきます。

ハーメルンから引っ越ししてきました。



銀ちゃんにガチ恋したので死亡キャラ全員生存させます。
西暦編もやります。
主人公にはめっさ頑張って貰います。
ハッピーエンドにしたいです。
それでは、新天地一発目、どうぞ。 

 
その日、聖剣は輝きを取り戻した。
ある少年がこの世に生まれたからだ。
その日、ある神は少年の誕生を祝福した。
その日、ある神は少年の誕生を呪った。
運命は、動き出した。















ーーーちゃんーいーちゃん
お兄ちゃん!
「・・・んお?」

「やっと起きた、朝だよ、お兄ちゃん」

「あぁ・・・おはよ、樹」

妹である樹に起こされ、少年ーー犬吠埼蓮(いぬぼうざきれん)は目を覚ました。
「姉さんは?」

「先に起きてるよ。お兄ちゃんが一番最後、珍しいね、いつも一番早く起きるのに」

「確かに、夜更かしはしてないんだけどねえ」

なんて事を話しながら樹と一緒にリビングへ向かう。
「おはよう」

「あっ!やっと起きたわね蓮!珍しいわね、いつも一番最初に起きてるのに」

「あはは・・・さっき樹にも同じこと言われたよ。そんなに珍しいかな?」

姉である風にも同じ事を突っ込まれた。

「まぁいつも一番だからね。おはよう蓮」

「私達より早起きしてるものね〜」

「おはよう、父さん、母さん」

両親にも挨拶をする。そして朝ごはんを食べる。
学校に行き、勉強して、帰ったら姉さんと樹と遊ぶ。
これが当たり前の日常だと思っていた。ずっと家族は一緒なのだと思っていた。

今日この日までは・・・・



犬吠埼風にとって蓮は、自分や同学年の男子よりもかなり落ち着いた男の子であった。基本的に蓮は樹と一緒に歌を歌ったり、遊んだり、ゆったりしている事が多い弟。そんな彼に甘えて、膝の上に座っている樹の頭を撫でている姿をよく見る。

けれど運動が出来ない・嫌いなわけではなく、誘えば一緒に遊んでくれる優しい弟でもあった・・・その面倒見の良さから小さい頃は蓮が兄だと間違えられた事がしばしばあったのは秘密だ。



犬吠埼樹にとって蓮は姉と同じくらい大好きな兄だった。姉とはまるで正反対で内気な自分をいつも気にかけてくれ、甘やかしてくれる兄。姉の風と蓮の膝の上にどっちが座るかでケンカになった事もしばしば。
自分の言った事には責任を持たせ、風とのケンカで間に入った時、「どっちも悪い!」とデコピン(めちゃくちゃ痛い)をするなど厳しい部分もあったが、そこも好きだった。


誰から見ても超が付くほどの仲良し家族だった。風も樹もずっと蓮が一緒にいてくれるものだと信じていた。

今日この日までは。






ピンポーン・・・・・

夜8時、両親は共働きの為、久々に家族全員で夕食を食べた後の事、インターフォンが鳴った。

「はい、どちら様ですか?」

『大赦の者です。"お役目"の件で参りました・・・』

「・・・!?」

父と母の顔がみるみるうちに青ざめていくのがわかった。そんな両親の顔を見て不安になったのか、風と樹はすぐ隣にいる蓮の手を握りしめ、蓮は二人の頭を撫で、安心させようとしていた。

両親はすぐに玄関へ向かい、大赦の者を家に上げた。ソファに座っていた三人を呼び、座布団が人数分敷かれた居間に座った。いきなり来た宮司のような格好をした怪しい人物に三人は警戒心全開だった。そんな中父は使者と会話を始めた。

「それで、大赦がなぜ・・・お役目、とのことでしたが。」

「はい・・・神樹様から神託が降りました。そちらのご子息、犬吠埼 蓮様に“勇者”の適正、及び“聖剣”様に選ばれた。と」

「蓮が・・・勇者・・・? バカな!勇者は無垢な少女だけのハズでは!? いや、それ以前に勇者を輩出するのは大赦でも伝統ある家からしかできないはずだ!!」

「なぜ男性であるご子息が神樹様に選ばれたのかは我々でも理解出来ておりません。そして勇者輩出についてはご存知の通り・・・その為、ご子息には大赦の伝統ある家柄の1つ、白鳥家へと養子に出てもらうことが決まりました」

「しかも聖剣ですって!?あの剣は今まで誰も動かすことすら出来なかった物でしょう!。その剣が蓮を選んだと!?」

「ありえない事かと思いますが事実なのです。神託では『彼以外にこの(つるぎ)を持てる者はおらぬ』と・・・」

三姉弟は父と使者の話を恐らく半分も理解できていなかっただろう。それでも何か良くないことが起きようとしているのは理解していたし、それが蓮に降りかかろうとしているのも分かった。風は蓮の左手を握りながら使者を睨み付け、樹は蓮の右手を両手でしっかり握りながら静かに泣き、蓮は二人を必死になだめようとしていた。

「勝手な・・・あまりに勝手すぎる・・・!勇者に選ばれたから養子に出せだと・・・!?納得できるわけないでしょうっ!」

「それでも納得して貰わねばなりません。あなた方もお役目の重要性と必要性が理解出来ているハズ。神樹様の為、何よりもこの世界の為、ご子息の力が必要です。勇者になって貰わねばならないのです」

使者は声色を変えずに淡々と話す。
大赦で働く者として神託がどれ程重要な事か、よく知っている。それでも納得など出来なかった。
夫婦の視線が後ろにいる子供達へと向いた。風はいまだ風は蓮の左手を握りながら使者を睨み付けていた。樹は怯えているのか、蓮にしがみつき震えていた。そして肝心の蓮は、不安そうな目で両親と姉妹を見ていた。
両親が視線を下に下げた。何故この子なのか、何故死ぬかもしれないお役目にこの子がつかねばならぬのか、何故、何故、何故ーーーー


神樹様はまた(・・)この子を家族と引き離すのか。とーーーー



勿論、出来る事なら断りたい。だが出来ないのだ。神樹様に選ばれ、既に大赦の伝統ある家に養子に行くことは決まっている。家柄で言えば犬吠埼家は遠く及ばないのだからこの決定はどう足掻いても変えられない。そして勇者としてのお役目は、大赦に所属する者ならば誰もが知る最重要案件。そして、聖剣に選ばれるという異常事態。勇者になって貰わねば、聖剣を手に取って戦って貰わねば世界が滅ぶのだ。例えそれが、いつか終わりを告げるかりそめの平和だとしても。











「じゃあ・・・行ってくるね。」

使者が来訪してから数日、犬吠埼家全員が家の前に集まっていた。

弟が、兄が行ってしまう。連れ去られてしまう。訳の分からぬうちに、自分達の前から。もしかしたらもう二度と会えないかもしれない。そう思うと、姉妹から自然と涙があふれてきた。
視界がにじむ。ああ、だめだ。せめて心配しないように泣かないで送ろうと、姉と、妹と決めたのにーーーーー
ふいに二人が抱きしめられる。蓮だ。

「ごめんね・・・姉さん、樹」

ギリギリだった涙がたまらずこぼれだす。もうダメだ。耐えられない。

「ふっ・・・ぐぅっ・・・れんん・・・」

「姉さん・・・僕がいないからって樹とケンカしちゃ・・・ダメだよ?」

「わかっ、ひっ、てるわよぉ・・・」

「おに、ひっ・・・お兄ちゃ・・・」

「樹、しばらく帰れなくなるけど・・・姉さんと仲良く・・・ね?」

「わかっ、ったよぉ・・・」

嗚咽交じりに返事をする。抱きしめられているので顔は見えないが、蓮の声も、身体も震えていた。
両親はすまないと、ごめんなさいと、泣きながら三人を抱きしめ、謝った。自分達の無力さを感じながら、力いっぱい抱きしめた。





そして、無情にも別れの時間がやって来た。



「じゃあ、行ってきます」

そう言って蓮は大赦から来た高級車に乗って去っていった。家族はその車が見えなくなるまで見送り・・・見えなくなった所で家族は泣き崩れ、抱きしめあった。せめて、生きて帰って来てくれ。と祈りながら・・・

もしこれが藤森、高嶋といった名家ならば、諸手を振って喜んだのだろう。神樹様に選ばれたのだと。喜ばしいことだ、と。
だが犬吠埼家は大赦に所属していたとはいえ普通の家庭だった。自分達の子供が選ばれるなんて想像もしていなかったし、あまりにも唐突過ぎた。喜びなどありはしなかった。あるのはただの悲しみだけだった。


それは蓮にも言えることだった。大赦へと向かう車の中で蓮も泣いていた。声は上げなかったが、泣いていた。
正直言って、お役目も、聖剣も蓮にはどうでもよかった。ただ、家族と一緒にいられればそれでよかった。
だがーーーー














『勇者として戦わねば、世界が終る。』









使者の帰り際に蓮にだけつぶやかれた言葉は的確に、蓮の心を傷つけた。








自分が戦わねば・・・世界が終る・・・?







父さんも母さんも・・・姉さんも樹も・・・いなくなる・・・?





       




                 ダメだ・・・・・









それだけは絶対に・・・!















蓮はただ一つ心に決めた。

必ず、守り抜く。

家族を、かけがえのないものを、未来を。


その為なら、たとえ、何があろうとも・・・・・



















この日から夫婦はより大赦に勤めた。せめて、息子の助けになることが出来たらと。風はより樹に構い、大切にするようになった。蓮の願いだから。せめてこれぐらいは、と。樹は少しでも前向きになろうと思った。いつか帰って来た兄に、自信をもって迎えることができるように。
神世紀297年。夏休みが終わる、丁度1週間前の出来事。
 
 

 
後書き
モナド欠片も出てきてねぇな?次には出します。
後、蓮君なのですが別に闇堕ちとかそういうのはありません。決意ガンギマリなだけです。戦い以外では普通の男の子として書いていこうと思ってます。
いかがでしたでしょうか。


これが初めての小説の為、誤字、脱字や、文章中におかしいところがございましたらガンガン指摘してください。(心はガラスなのでなるたけ優しい言葉でお願いします)

感想や質問お待ちしております。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧