聖女の仮面
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第四章
「全然」
「けれど皆言うけれど」
「それは皆のイメージで」
「実際の本渡さんは」
「私は私だから」
あくまでというのだ。
「それでよ」
「そう言うんだ」
「ええ」
静かで落ち着いた口調で話した。
「恋愛もね」
「するんだ、何かね」
榊原は寅子のその言葉を聞いて言った。
「聖女っていうのは」
「イメージ、言うなら仮面かしら」
こうも言うのだった。
「私は」
「そうなんだ」
「そう、それは」
まさにというのだ。
「皆が私が被っている様に見ていた」
「そうだったんだ」
「けれど私は仮面を被っているつもりもなくて」
「そのままだったんだ」
「その顔は」
本当にというのだ。
「ありのままだから」
「そうだったの」
「そう、だから」
それでというのだ。
「今も榊原君と」
「付き合っているっていうんだ」
「ありのまま」
まさにというのだ。
「そうしているの」
「そうなんだ」
「そう、それでだけれど」
微笑んでだ、寅子は榊原に言った。
「これからも私と一緒にいてくれるかしら」
「というか今も思ってるよ」
榊原は寅子に戸惑いつつも真剣さに満ちた顔で返した。
「これからもね」
「一緒にいてくれるのね」
「僕のでいいのかって」
「そうなの」
「うん、じゃあね」
榊原は寅子にあらためて言った。
「これからもね」
「宜しくお願いするわ」
寅子は榊原に微笑んで応えた、そうして二人で交際を続けた。その時の寅子の顔は聖女のものではなく普通の少女のものだった。
聖女の仮面 完
2020・7・18
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