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戦国異伝供書

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第百十八話 水色から橙へその一

               第百十八話  水色から橙へ
 政宗は自分の話を終えて口を大きく開けて笑って言った。
「思えばわしも若かったですな」
「いや、まだお若いですぞ」
 羽柴がその政宗に面白そうに笑って返した。
「伊達殿は」
「そう言われますか」
「天下の名立たる方々の中では」
「ではわしはまだ青二才、いや」
 政宗はここでは面白そうに笑って述べた。
「水二才と言うべきか」
「お家の色ですな」
「それにかけてみました」
「それは面白い、しかし伊達殿は今は」
「仙台においてです」
「政に励んでおられますな」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「領地を豊かにせんとしております」
「そうでありますな」
「戦がなく政に励めば」
 それでというのだ。
「これが中々身に入り」
「領地を豊かにせんとですな」
「それで頭が一杯になっておりまする」
「そうでありますな」
「それが今であます、この者達もいるので」
 政宗は自分の後ろにいる片倉達も見た、そこには伊達家の重臣達が揃っていてそうして控えている。
「しかとです」
「ご領地をですな」
「治めていきまする」
「それは何よりですな」
「しかし伊達殿も随分と色々ありましたが」
 今度は柴田が政宗に言ってきた。
「お母上とは」
「はい、今も母子仲良くです」
「過ごされていますな」
「そうしておりまする」
「それは何よりですな」
「どうも天下ではそれがしと母上が不仲だの言われていますが」
 それでもとだ、政宗は柴田に話した。
「これといってです」
「そうしたことはないですな」
「はい、ましてやです」
 政宗はさらに話した。
「それがしが母上に一服盛られたなぞ」
「そうした話はですか」
「ありませぬ」
「噂ではありますが」
「あくまで噂でありまして」
「そうした話はない」
「左様であります」 
 政宗はこのことは確かな声で答えた。
「そうしたことは全くなく」
「それで、ですか」
「今もです」
「仲良くされていますな」
「そうです」
「それは何よりですな」
「はい、もうそれがしの話すことはありませぬ」
 それは一切というのだ。
「ですからこれで」
「後はですな」
「聞かせてもらう側に回ります」
 そうだというのだ。
「再び」
「そうですか、では」
「次のお家になりますな」
「あと残るは」
 庭が言ってきた。
「もう本願寺とです」
「当家ですな」
 島津義久が言ってきた、四兄弟だけでなく島津家の主な者達も揃っている。皆橙の衣に冠という恰好だ。 
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