八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五百九十一話 巨匠の嫉妬その九
「ヤクザ屋さんだよ」
「雰囲気がね」
「けれどあの外見で」
そのヤクザ屋さんにしか見えないそれでというのだ。
「あの先生折り紙部の顧問で」
「繊細らしいね」
「随分奇麗に折り紙をして」
そしてというのだ。
「穏やかで生徒思いで」
「優しい先生だね」
「外見はああでも」
「それでもね」
「まあね」
ジョルジュはこうしたことも言った。
「人は見かけによらない」
「それはあるね」
「例え怖そうな外見でも」
「実は凄く優しい」
「そうした人本当にいるから」
「あの先生もそうだね」
「そういうことだね」
まさにというのだ。
「つまりは」
「そうした人ってことだね」
「要するにね」
「まあ逆にね」
ジミーは考える顔で述べた。
「一見いい人に見えて」
「実は違う」
「そうした人もね」
「いるね」
「人は見かけによらない」
「そのことも事実だね」
「まあベートーベンさんは」
ジミーは笑ってまたこの音楽家のことを話した。
「そうした人って言われても」
「ああ、あの肖像画だとね」
「そうだって思えるね」
「それはあるね」
「もう如何にもね」
まさにというのだ。
「気難しそうでね」
「尊大でね」
「頑迷で癇癪持ち」
「そんな人だね」
「しかもどの要素もかなりのレベルっていうのは」
「わかるね」
ジョルジュも笑って言った。
「あの肖像画見たら」
「お付き合いしにくい人だってね」
「思えるね」
「そうだね」
「まああの肖像画実は」
ジョルジュはこの時代でも誰もが知っているベートーベンの肖像画について話した、音楽室にあるそれだ。
「まずいもの食べて嫌なお顔になった時の」
「そのお顔だったんだよね」
「大好物のチーズマカロニ食べて」
「それがまずくてね」
ジミーも話した。
「それでだったね」
「嫌なお顔になった時で」
「特別なお顔だね」
「それでも大概な人だったみたいだけれどね」
肖像画はその人間性を思わせるものでもというのだ。
「けれどね」
「その実はね」
「そうした時の肖像画だってね」
「言われてるね」
「まあそこはあれにしても」
ジョルジュは肖像画のことからさらに笑って話した。
「それでもね」
「お付き合いしにくい人だったのは確かだね」
「実際お友達少なくて」
「高潔さを認める人はいてもね」
「家庭を持ちたくても」
終生結婚を強く望んでいたという。
「結局持てなくて」
「甥御さんを養子にしてもね」
「そうそう、それでもね」
ジョルジュはベートーベンと甥の関係についても話した。
「やたらとガミガミ言ってね」
「最初は折り合い悪かったらしいね」
「やたら口五月蠅かったらしいから」
「それもわかるしね」
「そうした人だってね」
「だからだね」
「最初甥御さんとも仲悪くて」
このことも伝えられている。
ページ上へ戻る