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レーヴァティン

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第百八十二話 民の心その十

「相手にとっちゃそうだな」
「策は成功した」
 正は源三のそれがと述べた。
「無事な、では後はな」
「ああ、もう攻めていくか」
「敵の城や山のことはわかった」
 マップが手に入り地の利を知る者が降ったからだ。
「まさに時が来た」
「それじゃあな」
「攻め入る時だ、ここで俺達が攻めるとな」
 そうすればというのだ。
「敵軍はさらに動揺する」
「俺達に降る将兵や家臣が増えるな」
「さらにな、もう戦よりもだ」
 それこそというのだ。
「敵にとっては領主の粛清の方が恐ろしい」
「しかし俺達なら殺さない」
「それならどちらを選ぶか」
「自明の理だな」
「そうだ、だからだ」 
 それでというのだ。
「今こそだ」
「攻める時だな、じゃあ投降を促しながらな」
「兵を進めるぞ」
「そうするか、全軍いいな」
 久志は自分が率いるその軍勢に対して告げた。
「敵に降る様に言いながらだ」
「山に入りますね」
「そうしてですね」
「進撃していきますね」
「地図を見て案内人に先導されてな」
 こちらに降った彼等にというのだ。
「進んでいくぞ」
「わかりました」
「ではこれよりです」
「山に入りましょう」
「そして城まで進みましょう」
「そうするぞ」
 久志は自ら足を踏み出した、それに全軍続いてだった。
 山を完全に囲んだうえで山に足を踏み入れた、そうして自分達に降れば命も他のことも保証すると言うと。
 敵兵は次々に降っていき帝国軍はこれといった戦をすることなく順調に山を登っていった。その中で。
 久志は山の中程まで来たところでそこに本陣を置いて言った。
「何かな」
「ここまではやな」
「楽に進めたな」
「そやな、やっぱりな」
 美奈代は久志に話した。
「敵の内輪揉め、領主の粛清がや」
「効を奏してるよな」
「ああ、けど殺された人達はな」
「どうなったかだよな」
「どうも領主は魂も消そうとしたが」
 それがというのだ。
「家臣達は決してへんらしい」
「命令に逆らってるんだな」
「もうそれだけ領主が人望なくしていてな」
「命に従わない様になってるんだな」
「そうなってるわ」
「私もそう思ってです」
 策を出した源三も言ってきた。
「この度の策をです」
「考えたか」
「粛清を誘発させることは」
 源三は顔を曇らせて述べた。
「私としては」
「好きなことやないか」
「ハイドリヒの様で」
 ナチスの親衛隊大将だった者だ、冷酷かつ残忍でそれでいて頭が切れ謀略家としても知られていた。 
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