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戦国異伝供書

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第百十五話 孤立無援その四

「武田家や上杉家ともな」
「戦うのですか」
「あの両家とも」
「うむ、そしてわしが見るにな」
 政宗はさらに話した。
「織田殿が勝つ」
「そうなりますか」
「あの武田家も上杉家も破れますか」
「織田殿に」
「そうなりますか」
「うむ、織田家の兵は尾張や上方の兵が多くてじゃ」
 それでというのだ。
「兵は弱い、しかしな」
「優れた将帥が綺羅星の如く揃い」
「兵の数自体は多く」
「そして鉄砲や長槍が多く」
「具足も他の武具もよいですな」
「だから勝つ」
 信長、彼がというのだ。
「武田家にも上杉家にもな、そして毛利家とも戦うであろうが」
「水軍が強いあの家にもですか」
「勝ちますか」
「では西国の覇者になられますか」
「箱根から西を一つにされますか」
「そうなるであろう、しかしそれはまだ先であると思うが」
 それでもというのだ。
「わしもうかうかしていられぬ」
「全くですな」
「織田家は動きはじめると速いです」
「朝倉家もあっという間に降し」
「各地で蜂起した一向一揆も虱潰しに倒しました」
 伊勢や近江、土佐、加賀、紀伊、摂津で起こった彼等をだ。
「そして残るは本山の本願寺のみ」
「石山のみとしました」
「実に速いです」
「まさに風の如しです」
「その速さを見るとな」
 まさにというのだ。
「おそらくじゃ」
「これからもですか」
「瞬く間にことを進められる」
「そうされますか」
「織田殿については」
「政は腰を据えて戦は速い方じゃ」
 それが信長だというのだ。
「だからな」
「西国はですか」
「瞬く間に統一されて」
「そしてですか」
「大きな勢力になられますか」
「今以上にな、だからな」
 それでというのだ。
「わしとしてもな」
「急がれますな」
「奥羽の統一を」
「そうする、早く芦名家以外の家を軍門に降し」
 そしてというのだ。
「それからな」
「芦名家との戦に入りますな」
「会津のあの家と」
「そしてあの家を降せば」
「北にですな」
「一気に進む、会津も手に入れれば我等は百万石となっておる」
 それだけの力を備えているというのだ。
「それだけの力があればな」
「もう奥羽の他の家は敵ではありませぬ」
「一気に一つに出来ます」
「そしてそれからは」
「関東にですな」
「入りそして北条家と雌雄を決することになるが」
 しかしというのだ。
「それでもな」
「それでも?」
「それでもといいますと」
「言ったであろう、当家は今敵が多い」
 片倉と成実に再びこのことを話した。 
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