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レーヴァティン

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第百八十二話 民の心その四

「この領主みたいに重税を課してね」
「邪魔者を消すことはか」
「国内のそうした人達はしなくて」
「天下泰平でな」
「国も豊かになっていったっていうから」
「全然違うな」
「呂后はあくまで敵に対してだけ残酷だったんだ」 
 例えそうした人物だったことは事実でもだ。
「ましてや遊びで犬や猫を殺すとか」
「そんなことはしなかったな」
「あの領主とは全く違うよ」
「そうだよな」
「あの領主はもう殺人狂だよ」
 そう言っていいとだ、剛も言った。
「まあそれでも張献忠よりましかな」
「ああ、中国明代末期のな」
「四川省に入ったっていう奴だけれど」
「その話多分な」
「かなり創作入っているよ」
「そうだよな」
「だってね」
 剛はこの張献忠の話もした。
「人を騙して集めて殺し続けるとかね」
「そんなことしていたらな」
「絶対に叛乱起こるか逃げるから」
「理由もなく惨殺とかな」
「皮剥いだりとかね」
 その殺し方も色々だったと書には書かれている。
「お客さんが帰ったら刺客送って首を取ってその首に囲まれてもう帰らない客だとか言ったりとか」
「かっとして訳もなく殺したりとかな」
「家族や妾さんまで理由もなく殺したとか」
「そんな奴普通に寝首掻かれるな」
「誰もついて来ないから」
「自分が何時殺されるかわからないとなると」
「本当におかしくなった時点で殺されているよ」
 この人物のことは蜀碧という書にある、そのまま蜀の血という意味の言葉だ。
「絶対に」
「しかも他の勢力と争ってたな」
「秦良玉とね」
 明代末期の女性将軍だ、最後まで明に忠義を尽くした名将だった。
「強かったけれどね、この人」
「その相手と戦うとかな」
「それなり以上の武力ないと出来ないよ」
「そんな虐殺にばかり熱中していたら」
 それこそというのだ。
「もうね」
「他の勢力と戦は出来ないな」
「まして相手が名将なのに」
「その時点でおかしいな」
「魯迅も言ってたけれど」
 二十世紀中国の偉大な文豪である。
「皆大人しく殺されたのかな」
「そんな筈ないな」
「この人確かに残酷だったけれど」
「それは事実でもな」
「言われていることは多分にね」
 剛は久志にどうかという顔で述べた。
「創作だよ」
「そうだよな」
「まあそれでもその創作上のこの人よりはね」
「ましなんだな」
「あの領主もね」
 こう言うのだった。
「流石に」
「理由もなく火とを虐殺しないからか」
「というか張献忠の話はちょっと考えたらおかしいから」
 このことがわかるからだというのだ。
「もうね」
「どう考えても創作だな」
「誰だって生首に囲まれて宴会して喜んでる人に近寄らないよ」
「明らかに狂ってるだろ」
「うん、あまりにも有り得ないから」
「その時代四川省の人口が三百万から一万数千になったといいますが」
 源三も言ってきた。 
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