とあるの世界で何をするのか
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第二話 取り敢えず、現状確認
食事をとって落ち着いたところで、俺は現状確認をしてみることにした。
(シェーラ、居るか?)
(はい、ここに)
などと言われても、周囲に姿が見えるようなことはない。シェーラはスレイヤーズの世界の魔族で、言うなれば精神生命体であるため、姿を現さなければ誰からも見ることは出来ないのだ。
スレイヤーズを知っている人なら分かると思うが、シェーラは魔族の中でも魔王の下の幹部クラス、覇王将軍グラウシェラーの部下で、主人公のリナに「グラウシェラーの部下で、名前がシェーラなんて安直なネーミング」と言われて反発をするのだが、当のグラウシェラーには「たかが道具の名前にこだわる必要はない」と言われてしまい、最後にはリナたちに滅ぼされてしまうという悲しい魔族である。
そのシェーラが何故俺の部下になっているのかというと、スレイヤーズ本編ではそれでもグラウシェラーのために働くことを選択するのだが、俺が居たスレイヤーズの世界ではグラウシェラーのために働こうとする部分と付いていけなかった部分が分裂、付いていけなかった方のシェーラを俺が拾ったというわけである。
スレイヤーズ世界の魔族というのは、単独で存在するのが難しい。精神生命体であるがゆえに、自分の存在意義に疑問を持つこと自体がそのまま自身の消滅に直結するためだ。というわけで、魔族は自分より上位の魔族にかしずいて自身の存在意義としているのである。そして現在、シェーラのかしずく相手は俺ということになる。
(アリス、居るか?)
(うん、居る)
アリスも周囲に姿が見えることはない。アリスは涼宮ハルヒの憂鬱の世界の情報統合思念体の一部……まぁ、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースなのだが、恐らく涼宮ハルヒの憂鬱には出てこないのではないだろうか。
俺には涼宮ハルヒの憂鬱の原作知識はほとんどないので何ともいえないが、アリスいわく「涼宮ハルヒが望んだわけでもない魔法使いという存在を観測する」ということで俺を監視するために居たらしい、しかし何が原因だったのか分からないが、次の世界に飛ばされても居たのである。そして、何度か世界を飛ばされるうちに、人間の姿をとるより非視認性意識体の状態で存在するほうが都合が良いということで、現在のような状態になっているのだが、当然人間の姿をとることもできる。
どうやら情報統合思念体はどこの世界にも繋がっているようで、原作知識のない世界に飛ばされてもアリスからある程度の知識を仕入れることが出来るので助かっている。
なお、涼宮ハルヒの憂鬱の世界に居た時はアリスの名前は平仮名だったのだが、次の世界へ行ったときにギルド登録の名前を片仮名にされてからは、本人も片仮名のほうが気に入ったらしくずっと片仮名になっている。とはいえ、現在は姿を現すことがほとんどないので名前を記入するようなこともないのだが……。
(二人とも、俺が眠ってる間にこの世界で姿を現したことはあるか?)
(いえ、ありません)
(私も、ない)
(それなら問題ない。この世界には十字教って宗教があるんだが、自分たちの神を冒涜する存在は一切許さないってやつらだから、特に魔族であるシェーラはなるべく姿を現さないようにしたほうがいい。アリスも念のために姿は現さないようにしてくれ)
偏見かもしれないが、俺はこの世界の十字教に良いイメージなど持ってはいない。神のご加護を打ち消せる力を持っているというだけで、主人公を殺そうとする集団なのだ。
(分かりました)
(うん、分かった)
シェーラもアリスも人の姿を取ることはできる。しかし、二人の存在がこの世界でどのように扱われるかは不明だ。
(それではシェーラ、この世界の魔族や魔法に関しての状況を調べておいてくれるか?)
(かしこまりました。それで、一つ報告が)
(なんだ?)
(恐らくこの街に強靭な精神を持つ者が居ます。間違いなく人間ですが、アストラルサイドにこれだけの影響を及ぼす人間は初めてです)
(そうか、この世界にはアストラルサイドに干渉できる人間が居るかもしれないから気をつけるように)
(はっ!)
アストラルサイドというのは精神世界だ。人間や動物の体は物質世界に存在しているのだが、精神はアストラルサイドに存在していて、アストラルサイドに干渉することで精神的ダメージを与えることが出来る。魔族という精神生命体であるシェーラや情報統合思念体の一部であるアリスは、このアストラルサイドに存在している。
スレイヤーズの世界ではアストラルサイドに対しての攻撃が出来る人間も居たが、それ以外の世界ではアストラルサイドに直接攻撃できる方法を持つ人間は存在しなかったので、シェーラの存在は大きなアドバンテージだった。しかし、この世界には精神系の能力者もそれなりに居るのだ。そういった精神系能力者はアストラルサイドに何らかの干渉をすることが出来る可能性もあると思ったほうがいいだろう。もしかしたら、シェーラの存在を認識できる能力者が居るかもしれない。
(あ、そうだ。ついでに、俺の精神に干渉してくる輩が居たら防いでもらいたい)
(はい)
忘れるところだったが、精神系能力者は他人の精神に干渉できる場合が多い。精神の干渉がアストラルサイドから行われるとすれば、シェーラなら防ぐことが出来るはずである。
(あまりにもしつこいようなら、『お食事』してもいいぞ)
(分かりました)
この『お食事』というのは、魔族にとっての食事という意味である。魔族というのは人間の負の感情を糧として生きているので、人間に恐怖や苦しみ、悲しみといった負の感情を抱かせることで食事をしている。つまり、あまりにもしつこく俺に精神干渉をしてくる奴には恐怖などを与えてもいいということだ。
一つ言っておくと、基本的に俺はシェーラに対して、『人間に負の感情を与えるお食事』を禁止だと言ってある。その代わり、俺がシェーラに魔族として存続に必要なだけの魔力を与えているのだ。しかし、シェーラも魔族として負の感情の『お食事』をしたいこともあるだろうと思って、その都度『お食事』の対象を指定している。もちろん、普通に生活してる中で発している負の感情を楽しむ分には文句は言わないし、恐らくこの学園都市では負の感情に困ることもないだろう。
(次はアリスだが、この学園都市のシステムを把握しておいてくれ)
(分かった。それで、私も一つ報告)
(ああ)
(この街全体にナノマシンが浮遊してる。センサーで人間を監視してどこで何が起きてるのか、全てが分かるようになってる)
(一応、知ってる。俺がこの世界に飛ばされてきた時に、即座に対応できたのもそいつのおかげなんだろう)
(うん、そう。そして、今、この部屋にも6つ浮いてる)
(なるほど、シェーラにも言ったがこの世界にはアリスの存在を認識できる人間がいるかもしれないから気を付けておいてくれ)
(うん)
コンピューター制御された機械はアストラルサイド方面での干渉が出来ない、少なくともこの学園都市ではアリスが絶大な威力を発揮してくれるだろう。恐らくアリスなら初春さんにだって負けないはずだ。
これでシェーラとアリスの確認、そしてこの世界の情報収集に関してはいいだろう。あとは俺の力に関してだが……
(アリス、最初にやってもらいたいことがある)
(はい)
(この部屋と周囲のナノマシンを、監視者に気づかれないよう掌握できるか?)
(そのくらいなら簡単……周囲100m掌握完了)
(なら、今から俺がそこのベッドで寝てるという風に、この部屋を監視する全てのナノマシンを誤認させてくれ)
(了解、完了。もう、この部屋で何をやってもナノマシンには認識されない)
(そうか、ありがとう)
俺の力を確認するのに、アンダーラインで見られていては困るのだ。特に他の世界の魔法をアレイスターに知られるのはなるべく避けたい。
まず確認をしたいのは当然魔法なのだが、その前に確認をしておかなければならないのが俺のパラメーターだ。かなり前に行ったフォーチュンクエストの世界で、その世界に大勢居る神様の中の一人(神様なのに一人でいいのか?)という存在から貰った力なのだが、対象を決めれば俺だろうが他人だろうがパラメーターを見ることができ、好きなように操作することもできる能力だ。
俺のパラメーターは世界を転移するたび初期値にリセットされるのだが、今回は年齢が低めということもあってパラメーターも若干少なめだった。それを、俺が毎回設定している基本値にして、体の動きなどを色々確認してみる。体が小さい分の違和感はあるが、ちょっとしたケンカ程度の戦闘なら問題ないだろう。なお、俺の基本値は一般人の平均の10倍程度に設定してある。といっても、例えば握力の一般平均が60kgとして、俺が600kgを出せるというわけではなく、せいぜい100kg程度のものだったりするのだ。つまりパラメーターが10倍であっても出力が10倍になるわけではないということで、そこそこ鍛えた人並みの強さくらいにしかなってないのである。
次にようやく魔法に関しての確認だが、この場でドラグスレイブ級の魔法をぶっ放すことなど出来るわけもなく、アクアクリエイトやらライティング辺りで試してみる。ほぼ思ったとおりの水の量だったり明るさだったりしたので、この世界において魔法の威力はいつも通りでいけそうである。ついでにレビテーションも使ってみたが普通に浮くことができた。なお、魔族の力を借りて使う魔法が違う世界で使えるのかという疑問は、これまでの世界ですでに実証済みなので、多分この世界でも使うことが出来るだろう。
ついでに言うと俺が使える魔法はスレイヤーズ世界の魔法だけではない。ドラゴンクエスト風やファイナルファンタジー風の世界にも何度か飛ばされていて、ドラクエの魔法もFFの魔法も取り敢えず使えるようになっているのだ。しかし、飛ばされた世界がドラクエやFFの何作目なのか分からなかったし、もしかしたらアニメ化や漫画化された作品の世界だったのかもしれないのだが、名称は確実にドラクエやFFの魔法だった。また、ドラクエやFF以外にも、いくつかのRPGっぽい世界で魔法を習得している。
魔法の次に確認しておかなければならないのが空間操作だ。空間操作というのは文字通り空間を操作する能力なのだが、これが結構使える力で使い道はいくらでも存在している。例えば瞬間移動が出来たり、どこぞの猫型ロボットの出す扉状便利道具のような離れた空間を繋げることが出来たり、同じくどこぞの猫型ロボットが便利道具を収めてる場所のような収納も出来るし、擬似的なバリアを張ることも出来る。取り敢えず、簡単な空間転移を確認して、特に問題ないようだったので作成空間の中身を確認した。
作成空間というのは俺が作り出した空間のことで、作り出したサイズの分だけ収納が出来る空間である。今までにいくつもの空間を作成してきたし、新たな空間を作成する事だってできる。しかも、その空間内の時間の流れすら調節できるのである。そして、この空間に入れておけば次の世界に持ち越しが出来ているので、寝る前には俺の持ち物をこの空間に入れる習慣が付いている。
今まで作ってきた作成空間の中身を一通り確認し終わると、新たに空間を作成してみる。当然のことではあるが作成も設定も削除も問題なく出来た。
「しかし、毎回アンダーラインを誤魔化さないといけないのは大変だな」
思わずつぶやく。魔法はともかく空間操作で収納するのは寝る前の日課みたいなもので、無意識にやってしまう可能性が高い。それ以前に、収納時だけ誤魔化したとしても、あったはずのものが無くなっていたり、また出てきたりしたら分かってしまうのではないだろうか。
(アリス、今日のところはこのくらいにしておこう。俺がベッドに入ったら誤認させているのを解除してくれ)
(分かった)
まだそろそろ夕焼け空になろうかという時間だが、考え事はまた明日ゆっくり考えることにして俺はベッドに入った。というか、ナノマシンには俺がベッドで寝ているように誤認させていたので、そのまま寝続けている風に装ったほうがいいだろう。
こうして俺は眠りに付いたのだった。
後書き
微妙に原作と設定が違うかもしれませんが、その辺は『設定改変あり』ということでご勘弁を^^;
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