魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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最終章:無限の可能性
第265話「天巫女の本領」
前書き
地球に戻って司Sideです。
時系列は前回からの続きなので、優奈も来ます。
「はっ!」
「そこです!」
地球の遥か上空で、司と祈梨の天巫女二人は戦っていた。
世界の抑止力を後押しした後、二人に対して多くの神々が襲い掛かってきていた。
何せ、梃子摺らせる程大量の英雄達を出現させたのだ。
厄介な相手だと思われたのだろう。
「ッ!!」
だが、それは見当違いだった。
司達は飽くまできっかけを与えただけなため、例え負けたとしても召喚された英雄達はいなくなる事はない。
そして、大勢が相手でも司達は負けていなかった。
「貫いて!」
魔法陣とジュエルシードが煌めく。
司や祈梨の祈りに呼応して、圧縮されたレーザーのような砲撃魔法が飛ぶ。
祈りが込められているためか、理力の障壁すら貫く威力だ。
「世界中の心が一つになっている今、天巫女の本気を甘く見ないでください!」
世界中の、襲われている命達が心を一つにしていた。
そして、それは天巫女である司達に“祈り”として届く。
即ち、“敵を倒してくれ”と。
「(これが、天巫女……その、本領……!)」
祈りを込めた攻撃を放ちながら、司は感心する。
今まで、天巫女の力を使いこなしていると思っていた。
否、実際に使いこなしてはいた。
だが、世界中の生命の祈りを束ねるという事はした事がなかった。
「はっ!」
「ッ……!堅い……!?」
一息の下、祈りによる障壁が展開される。
直後に何人もの“天使”が突撃してきたが、その悉くを阻んでいた。
「一人一人の祈りでは届かなくても、それを束ねれば……!」
極光が“天使”達を呑み込む。
一撃一撃が、ジュエルシードをフル活用した時以上の威力だった。
それほどまでに、世界中の祈りを束ねた力が凄まじいのだ。
「これは、私だけの力じゃない。……この世界の、皆の祈りの力だよ!」
天巫女の魔力による、淡い光の力場が展開される。
その領域に敵が踏み込んだ瞬間、“性質”だけでなく動きも鈍くなっていた。
外部からの攻撃も減衰させ、完全に二人の“領域”と化していた。
「せぇいっ!!」
槍を振るえば、“天使”を貫く。
魔法を放てば、理力の壁を打ち砕く。
神界に突入した時は大苦戦した相手が、今では“多少厄介”程度だ。
相手の“性質”も、抑止力と祈りの力で相殺していた。
司一人であれば、もっと苦戦していただろうが、祈梨がそれを補っていた。
「くそっ!これ以上溜めさせるな!」
“天使”のその言葉と共に、さらに数と質が増す。
そう。二人は戦いながらも祈りを集束させ続けていた。
さながら、なのはのSLBのように。
「っ……さすがに、数が多いよ……!」
それを阻止しようと、さらに敵の数が増える。
さすがに、司もその数相手では苦戦を覚悟する程だ。
「ッ!このっ……!」
極光の嵐を駆け抜けるように避け、反撃に同じような極光を嵐を放つ。
即座に障壁を多数展開し、遠距離近距離関係なく攻撃を阻む。
間髪入れずに転移し、膨大な魔力で周囲を薙ぎ払う。
「ぐっ……!」
もう一度障壁を展開し、転移で逃げる。
だが、そこへさらに襲い掛かってくるため、ジリ貧になってくる。
「司さん!」
祈梨はまだ上手く立ち回れているが、ついに司が直撃を食らった。
空中戦なため、何とか地面に叩きつけられる前に転移で復帰する。
「本当に、次から次へと……!」
直接攻撃をシュラインで逸らし、至近距離で魔力を叩き込む。
体を傾けたり、自由落下を利用しつつ、次々繰り出される遠距離攻撃を躱す。
避け切れない攻撃のみ障壁で防ぎ、回避を重視する立ち回りに切り替える。
「(このままだと、押されっぱなしになる。だったら、多少遅れてでも……!)」
極光を放って牽制しつつ、司は次の手を考えた。
このままでは、どの道追い詰められる。
負ける事はなくても、相応のロスが起きる。
それを回避するため、決断した。
「『祈梨さん!』」
「『構いません!むしろ、今までが想定以上だったので、丁度いい塩梅です!』」
念話で祈梨に確認を取る。
祈梨も想定していた事だったので、即座に許可が下りる。
直後、集束する祈りの一部が、司へと流れ込む。
「すぅ……はっ!!」
気合一閃。
それだけで、迫りくる“天使”達を一気に弾き飛ばした。
先ほどまでと、数段違う存在感を司は放つ。
「ぅ、ぐっ……!」
しかし、それは司にとっても想定外だった。
流れ込む力があまりにも大きく、コントロールが効かないのだ。
「(まずい!慣れるまで何とか凌がないと……!)」
転移も攻撃も、精密な操作が難しくなる。
大雑把になればなるほど、それを掻い潜る敵は多くなる。
そのため、何とかしないと司は思考するが、一瞬遅かった。
「しまっ―――!?」
目の前に、理力の凶刃が迫る。
祈りの力を開放する事で、吹き飛ばす事が出来たのだが、制御が覚束ない事が災いし、僅かに間に合わない。
無論、その時点で防御も回避も間に合わないため、ダメージを覚悟した。
「がっ!?」
だが、吹き飛んだのは攻撃してきた“天使”の方だった。
何かに弾き飛ばされたかのように後方に飛ばされ、下手人を探していた。
司も誰が助けたのか、周囲を見ようとして……その人物が目の前に降りてきた。
「私がフォローするわ。その間に、さっさと制御出来るようにしなさい」
「優奈ちゃん!?」
そう。戦いを終え、援軍にやってきた優奈だった。
衝撃を直接創造し、“天使”を弾き飛ばしたのだ。
「そちらはもういいのですか?」
「ええ。大方終わらせてきたわ。優輝達も、各自別の場所に向かったわよ」
肉薄してきた“天使”の攻撃を全て捌きつつ、優奈は祈梨の問いに答える。
祈梨も周囲の“天使”を極光で薙ぎ払いつつ、司の露払いをしていた。
「……ありがとう、優奈ちゃん」
そして、司が周囲一帯を祈りの力で叩き潰す、
それは、まさに“理不尽な暴力”とも言うべき圧倒的な力だった。
回避もままならず、周囲の神々は上空から叩き落される。
「おっと、させないわよ?」
「くっ……!」
すぐさま転移で復帰し、同時に仕掛けてきた“天使”を優奈が止める。
集束する祈りの力を、一部とはいえど扱う司を厄介と見ている事は丸わかりだったため、優奈もどう動けばいいのかよくわかっていた。
「近づけない……!」
「近づかさせませんよ。私達の“祈り”の“領域”に、そう易々と踏み込めると思わない事ですね。……尤も、そちらの“性質”が抑えられている時点で、出来ると思えないですが」
近接攻撃は優奈が、他は司と祈梨の祈りで防がれる。
展開されていた淡い力場はさらに広がり、より強く敵の“性質”を抑え込む。
世界そのものの“領域”で既に“性質”が相殺されているため、思うように戦えない“天使”が続出していた。
「シッ!」
「そこ!」
そして、当然ながらそんな“天使”を優奈達は見逃さない。
弱った敵からどんどん数を減らしていく。
特に、集束させた祈りの極光は、ほぼ一撃で“領域”を砕く程だ。
それほどまでに、世界中の祈りを集束させた力は凄まじかった。
「ッ―――!?」
……それ故に、その力を阻止するための悪神も現れた。
「せ、制御、が……!?」
多くの神々を屠り、膨大な力の制御にも慣れたタイミングだった。
途端に、集束する“祈り”が乱れた。
「上よ!」
優奈の声に、司は上を向く。
そこには、複数の“天使”と、その主である神がいた。
「くっ!」
すぐさま司が極光を放つ。
同時に、優奈が転移で仕掛け、祈梨はその二人を守るように残りの敵を相手にする。
「なっ……!?」
咄嗟の行動としては、あながち間違ってはいなかった。
しかし、その上で優奈は驚愕する。
神に向けて放たれた司の一撃が、転移した優奈に向かってきたのだ。
「『司!今のどうなっていたの!?』」
「『せ、制御権が奪われたんだよ!』」
「……なるほどね……」
連続転移で何とか躱した優奈は、目の前にいる神がどういった“性質”か見抜く。
イリスの理力を感じられない事から、正気の状態でイリスに加担する悪神の一人だという事はすぐに分かっていた。
「祈りと攻撃、その二つの制御を奪った……なら、その“性質”は“制御”か“支配”。またはその二つに関連するモノ、ね」
考察を口にした瞬間、嫌な予感を感じ取り、飛行魔法を破棄する。
「(今のは……飛行魔法の制御すら干渉するのね……!)」
破棄の直前、飛行魔法の制御が狂った。
間違いなく“性質”が原因だとすぐに理解し、創造魔法で剣を飛ばす。
「(やっぱり、操っているものは奪われると見ていいわね。だけど、かなり抵抗できる。いえ、“奪われる”というより、“上書きされる”感じね)」
創造した剣の内半分は操り、もう半分は射出して飛ばしていた。
すると、操っていた剣の制御が奪われ、もう半分を弾き飛ばしていた。
無論、本来ならば創造したモノを消せるはずが、奪われた剣は消せなくなっていた。
「(なら、“支配の性質”の方……!)」
制御を失う時の感覚から、制御に干渉するのではなく、“支配”するのだと優奈は結論付けて“性質”を断定した。
「(遠距離攻撃はなるべく自然な動きに任せた方が無難ね……!)」
魔力などで軌道を操作しようとすれば、たちまちその制御は奪われる。
だが、物理法則に伴った動きまでは支配されていない。
そのため、優奈は弓矢を創造して牽制する。
「『誘導系の攻撃はほとんど効かないと思いなさい!』」
「『了解!』」
すぐに念話で特徴を司に伝える。
祈梨の方も、自身で相手の“性質”を見抜いて行動に移っていた。
「あれだけなら、まだ何とかなる。でも……!」
“支配の性質”の神と“天使”だけなら、まだ簡単だ。
しかし、この場には他の神々がまだ残っている。
連携を取られれば厄介なのは目に見えていた。
「ぬ、ぐっ!?」
「司!!そっちは任せるわよ!!」
判断は一瞬。
即座に優奈は他の神々を相手にする。
転移と加速を利用し、理力の障壁ごと一人の“天使”を貫いた。
そんな優奈の言葉を聞いて、司は“支配の性質”の神達に集中する。
「私も露払いに努めましょう。あの“性質”の影響下で連携を取られるのは厄介ですからね。プリエール・グレーヌも下手に使えません」
優奈の隣に祈梨も転移し、背後に迫っていた別の“天使”を弾き飛ばす。
先ほどまで使っていたジュエルシードは、今は強制停止させられていた。
“支配の性質”によって、ジュエルシードの制御まで奪われてしまっては、さすがに不利になると判断したからだ。
「ええ、頼らせてもらうわ」
背中合わせになり、二人は白兵戦に切り替える。
その時、優奈は司に視線を送った。
それを受けた司は、どういった考えでこの分担にしたのか理解した。
「(私だけで十分。……そう言いたいんだね)」
優奈でも祈梨でも“支配の性質”は相手にできる。
その上で司に任せたのは、この程度乗り越えなければ、勝てないと言うのだろう。
この後待ち受けるのは、司の弱点を突く神だ。
単に“支配”する程度の神は、一人で倒せと優奈は言いたいのだ。
「(……いわば、予行練習。……うん、やるよ!)」
周囲で繰り広げられる優奈達の戦闘をBGMに、戦闘の火蓋が再度落とされる。
初手は愚直な砲撃魔法だ。
誘導は一切しない、直線にのみ進む砲撃魔法。
威力は高いが、避けるのはそう難しくない。
だからこそ、“支配の性質”の神達はあっさりと避ける。
「っ……!」
「(まずは、転移以外の回避を許さない!)」
その砲撃魔法に隠れるように、追撃を放っていた。
回避した所へ分裂する極光を放ち、さらに回避を許さないように魔力弾を弾幕のように放った。
「無駄だ!」
「……!!」
だが、それらの魔法は全て誘導性がある。
そのため、制御を奪われて司へと返っていく。
「(ここまでは読み通り。なら、これはどう?)」
―――“Virage Lame”
予測していた司は転移でそれを躱し、用意していた術式を起動させた。
展開されるのは数こそ多いが、魔力弾だ。
だが、その魔力弾はブーメランのように湾曲していた。
「行って!」
放たれた魔力弾は、弧を描くような軌道で神へと迫る。
しかし、それらの魔力弾に誘導性はない。
飽くまでブーメランなどと同じように、形を利用して軌道を変えているのだ。
「ちぃっ……!」
魔力弾一つ一つがバラバラな軌道を描いているため、回避は困難だ。
そして、誘導性もないため動きを“支配”される事もなかった。
もし、神界で本来の力を発揮していたのならば、誘導性がない攻撃でも動きを“支配”されていただろう。
その事に司は気づいていなかったが、誘導性の有無で相手の“性質”に対抗出来るのならばいくらでもやりようはあった。
「(“支配”される前に、発動させる!)」
祈りを利用した転移魔法で、“天使”の背後を取る。
同時にシュラインを振りぬき、理力の障壁を切り裂いた。
「はぁっ!!」
懐に入り込み、掌底と共に極光を放つ。
制御が乱れるとはいえ、集束させた祈りの一撃は凄まじいままだ。
そのため、一撃で“天使”を戦闘不能寸前まで追い込んだ。
「(完全に“支配”された訳じゃない。……当然だよ。今ここにあるのは、この世界にいる全ての存在の祈りなんだから……!)」
“祈り”。それは、言い換えれば“意志”でもある。
だからこそ、集束された“祈り”の制御を、“支配”しきれていないのだ。
例え世界の“領域”で“性質”を相殺されていなくとも、束ねられた“祈り”は決して“支配”されない程に強固なモノとなっている。
「(さっきよりも制御は難しくなっているけど……これなら……!)」
“支配の性質”で束ねた“祈り”の制御は“支配”されずとも乱れている。
だが、今の相手の数は先ほどまでより断然少ない。
先ほどまでは一度に十人前後の数が一斉に襲い掛かっていた。
対し、今相手している“支配の性質”の神は眷属の“天使”と合わせてもたったの六人しかおらず、他は優奈達が引き受けている。
そして、何よりも相性が悪くなかった。
「シュライン!行けるよね!」
〈当然です!〉
シュラインを構え直し、そこへ“祈り”を流し込む。
直後、一人の“天使”が肉薄し、理力の剣で斬りかかってきた。
「ッ!」
それを司はシュラインの柄で受け止め、受け流す。
さらに、その反動を利用してシュラインの穂先で“天使”の喉を切り裂いた。
「はぁっ!」
直後に転移魔法を発動。頭上に移動し、シュラインで脳天から突き刺す。
「っ、と……はぁああっ!!」
突き刺した“天使”を投げ飛ばし、別の“天使”に当てる。
同時に極光を放ち、反動を利用して背後に迫っていた“天使”を蹴り飛ばした。
「ッ……!」
障壁を展開し、また別の“天使”の挟撃を防ぐ。
さらに、障壁の術式を“支配”される前に破棄し、爆発させる。
一部の魔導師も使う、“バリアバースト”だ。
「っ、くっ……!」
下からの攻撃を防ぐも、上空へ吹き飛ばされる司。
だが、タダではやられずに複数の魔法陣を展開。
そこから極光を放ち、追撃を牽制する。
「はぁあああっ!!」
さらに、魔法陣を上に展開。
それを蹴ると同時に、上から迫る神に向けて極光を放つ。
反動を利用しつつ下へと跳び、下から襲い来る“天使”を弾き飛ばす。
「(包囲を抜けた。これで……!)」
今の位置関係は、司より上に神と“天使”達がいる状態だ。
地面までの距離もかなりあるため、自由落下でも時間はかかる。
包囲されておらず、一方向に神達が固まっている状態ならば、司の圧倒的殲滅力のある攻撃を存分に発揮できる。
「煌めけ、人々の祈りよ!」
―――“Pluie de météorites”
巨大な魔法陣を展開。
術式を“支配”する暇も与えず、祈りを極光として放つ。
それも一つではない。
生命の祈りは一つの極光に収まらず、正しく流星群のようにいくつにも分かれる。
雨霰と神達へ極光が襲い掛かる。
「ぐっ、ぉおおおおっ!!」
「甘いよ!」
その魔法は長時間行使できない。“支配”されてしまうからだ。
早々に術式を破棄し……そこを、敵を突いてきた。
転移と共に肉薄し、理力の武器を振るう。
だが、司をそれを読んでおり、シュラインで弾き飛ばし、返しの一撃で切り裂いて弾き飛ばした。
「(全部、捌く!)」
―――“Virage Lame”
さらに次々と“天使”が襲い掛かり、司はそれを迎え撃つ。
自分の周りを大きく旋回させるように、魔力弾を放ち、それを抜けてきた“天使”を先ほどと同じように撃退する。
「こいつはどうする?」
「ッ―――!?」
直後、司を囲うように極光が出現する。
司からすれば、あまりにも唐突過ぎた。
「(展開が速過ぎる!?何が……!?)」
辛うじて転移で躱すが、またもや攻撃に囲まれる。
その時点で、完全に転移で逃げ回る羽目になる。
それも時間の問題……否、もう遅い。
「っづ、ぁ……!?」
ついに転移が間に合わず、攻撃が直撃した。
幸い、祈りの力を防御に変えていたため、致命傷にはなっていない。
しかし、状況を打破しなければこのまま負ける。
「(展開が速いどころの話じゃない!元々理力が万能な事を差し引いても、私が気づいた時には、既に攻撃が目の前に来ている!)」
そう。展開が一瞬なまでならばまだわかる。
だが、司が気づいた時点で既に攻撃が迫っている。
「(まるで、時間を飛ばしたような……ッ、そういう事……!)」
思考の途中で、何をしたのか理解する。
つまり、時間を“支配”したのだ。
尤も、今の状況では自分以外の全ての時間を“支配”とまではいかない。
それでも、司の時間を止める程度には“支配”できたのだ。
「……むしろ、今までそれをしてくる神がいなかった事が驚きだね」
守りを固め、攻撃を防ぎつつ司は呟く。
最早、回避は不可能に近い状態だ。
衝撃等も守りを貫いて司を傷つけている。
このままでは敗北する……そのはずなのに、司は落ち着いていた。
「地に瞬く、生命の祈りよ……」
司を守る障壁が破られ、その度に張りなおす。
その間にも、何度も司の時を止められ、猛攻を受けていた。
だが、そこに変化が訪れる。
「星に願いを……!“星天を照らせ天の祈りよ”!!」
司に“祈り”が集束し、眩い光に包まれた。
それに神が気づいた時にはもう遅かった。
「ぅ、ぁああああああああああああああっ!!?」
光が膨れ上がり、それを前に神は何も出来なかった。
集束した“祈り”が、逃がすまいと神達をその場に縫い付けたのだ。
加え、“支配”していたモノ全てが“祈り”によって解き放たれた。
回避もできず、司の行動も阻止出来なくなった神達は、そのまま光に呑まれる。
「………」
光が収まった時には、周囲に誰もいなかった。
だが、司は下を睨むように見た直後、転移で移動した。
「はぁっ!!」
シュラインの一突きと共に、極光を上空へ向けて放つ。
その先には、瀕死になっていた“支配の性質”の神がいた。
「―――――」
司の攻撃を耐えたとはいえ、既に瀕死。
追撃を耐える事も出来ないまま、今度こそ確実に倒し切る事に成功した。
「……ふぅ……これが、悪神の力……」
勝利したとはいえ、洗脳されただけの神との違いに司は戦慄していた。
世界そのものの“領域”によるバックアップがなければ、勝てるかわからない戦いになっていたと思える程だった。
「……大丈夫。感覚は掴んだ」
それでも、大丈夫だと司は自身を奮い立たせる。
この戦いは、飽くまで前座。
本当の戦いは神界に突入してからなのだ。
そのためにも、今恐れ戦く訳にはいかなかった。
「(それに、これなら上手くいく)」
もう一つ、司にとって大丈夫だと思える理由があった。
先日の間に考えておいた、弱点を突く敵への対策だ。
その対策の一端を、司は今回の戦いで使っていた。
結果、これならば行けると、自信の後押しにできたのだ。
「……あっ、そうだ。優奈ちゃんと祈梨さんは……」
ふと、二人はまだ戦っているはずだと、視線を向ける。
“支配の性質”の神達以外を請け負っているため、多勢に無勢かもしれない。
そう考えての心配だったが……
「……そりゃあ、違う存在になっても元は優輝君だもんね……。祈梨さんも、天巫女としては私よりも上だし、心配する程じゃなかったね……」
そこには、完全に優勢になっている優奈と祈梨の姿があった。
一度ほとんど全滅させたのだろう。今いる敵は、見覚えのない者ばかりだった。
「『終わったわね?だったら、こっちに戻ってきなさい』」
「『了解。優奈ちゃんはこのまま私達の護衛?』」
肩透かしを食らっていた司に、優奈の念話が届く。
「『ええ。後は貴女達が神界に突入する最終段階を終わらせるまで護衛よ』」
「『ありがとう』」
例え、今回の“支配の性質”のような神がまた来ても大丈夫。
そんな思いの下、司は二人と合流しに向かった。
後書き
“支配の性質”…文字通り、様々なモノを支配できる。洗脳のような事も出来るが、現在は世界そのものの“領域”で相殺され、割と弱体化している。
Virage Lame…“旋回する刃”。所謂、ブーメランのように飛ばす魔力弾。カーブを描くが、誘導性はない。
バリアバースト…原作にも出てくる魔法。防御魔法を爆発させる事で、ダメージを与えつつ距離を取る事を目的とした魔法。
Pluie de météorites…“流星群”。極光を流星群のように大量に放つ技。イメージはDB超の映画に出たスターダストフォール。
星天を照らせ天の祈りよ…FGOにおける美遊のオマージュ。ただし、効果は祈りによる広範囲殲滅魔法。集束させた祈りを利用しているため、威力は計り知れない。加え、様々な祈りを集束させている影響か、攻撃対象は金縛りに遭う。回避不可の広域攻撃となっている。
現在の司と祈梨はDBに例えると元気玉が形を成して戦っているようなものです。
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