戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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装者達のハロウィンパーティー2020
前書き
割とギリギリで完成!
去年書かれなかったメンバー4組でお届けします!
『ハッピーハロウィン!!』
10月31日。今年もハロウィンの季節がやってきた。
S.O.N.G.本部は今年もハロウィン一色に飾り付けられ、職員達は各々仮装して歩き回っている。
小物を身に付ける程度の軽度なものから衣装全てを手作りしたコスプレまで、仮装のクオリティは多岐にわたり、本部内は和気藹々とした賑わいを見せている。
そして何より、ハロウィンパーティーの会場である食堂は、去年以上に盛り上がっていた。
何故ならば、今年に入って新たに加わった装者達が居るのだから。
「トリック・オア・トリート!さあ、お菓子を寄越すのデース!」
黒いフードに巨大鎌、死神の衣装に身を包んだ切歌は、ツギハギメイクでフランケンに扮した飛鳥にお菓子を強請る。
「切歌、その行動は想定済みだ」
そう言って飛鳥は、ポケットの中に仕舞っておいたキャンディを手渡した。
「流石は飛鳥さんデス!しっかり者の飛鳥さんなら、絶対お菓子を忘れないって信じてたデスよ!」
「切歌は悪戯するより、お菓子貰う方が嬉しいんだな」
「あったりまえデース!もちろん、悪戯も楽しいデスけど、お菓子いっぱい貰える方がアタシとしては得なのデース!」
「そうか。なら、このチョコレートとクッキーも追加しよう」
「なんデスとッ!?いいんデスか!?」
普段は間食にうるさい飛鳥からの追加トリートに、切歌は大はしゃぎだ。
「ハロウィンだからな。今日くらいは、お菓子食べ放題も大目に見る事にしよう」
「よっ!飛鳥さんフトモモデース!」
「それを言うなら太っ腹、な?」
ぴょんぴょん飛び跳ねる切歌に、飛鳥はクスッと微笑みを浮かべる。
そして、彼女の方へと向けて、開いた右手を差し伸べた。
「……ん?なんデスか?」
「まさか、自分だけお菓子もらって帰るつもりじゃないよね?」
「へっ……?えっ?あ、いや、それは……」
「トリック・オア・トリート。切歌、僕にもお菓子、くれないかな?」
笑顔で迫る飛鳥に、切歌はタジタジと後ずさる。
何を隠そう、貰ったお菓子は1人で全部食べるつもりだったので、自分があげる側になる想定が存在しなかったのである。
調から預かっていた渡す分のお菓子も、うっかりつまみ食いして全部食べてしまっていた。
「き~り~か?お菓子、まさか持ってないなんて言わないよね?」
「えーっと、そのぉ……あうぅ……」
「持ってないなら、悪戯しないとな?」
「あわわわわわ……あ、ああ飛鳥さん、顔が近いデスよぉ!?」
追い詰められる切歌。飛鳥は真っ赤になってあわあわする切歌の顔へと手を伸ばし──
「ふへ……?」
その小さな鼻を、指でつまんだ。
ff
「なんでデスか!なんでデスかぁーッ!!」
「なっ、何を期待していたんだ!?」
「分かってるくせに!飛鳥さんは意地悪デス!!」
不満げな顔の切歌に、グーに握った両手でポカポカされる飛鳥。
流星と調はその光景を、離れた場所から静かに見ていた。
「切ちゃん、やっぱり飛鳥さんに悪戯されちゃってるね」
「うん。しかも兄さん、キス待ちしてたの気付いてたね。ヘタレて路線変更したけど」
「飛鳥さんらしい……。けど、わたしが渡しておいた皆にあげる分のお菓子をつまみ食いした切ちゃんも悪い」
「じゃあ、これでいいのかな」
調は黒いとんがり帽子にゴスロリ、流星は兄と同じくツギハギメイク。
魔女とフランケンなのは、一目で分かるだろう。
「ところで流星さん……その……この服、似合っていますか?」
調はゴスロリの裾をつまんでフリルを揺らす。
流星はそんな調の姿を、帽子の先から靴の先端までじっくりと眺めて口を開いた。
「調ちゃんは何着ても似合ってるよ。けど、今日みたいに君の髪と同じ黒い服は、とても似合っている。調ちゃんの可愛さが、よく引き立ってると思うよ」
「あ……ありがとう、ございます……」
予想以上のベタ褒めに、調の頬が朱に染まる。
恥ずかしそうに帽子のつばで顔を隠す調に、流星は手を差し伸べてお決まりの合言葉を口にした。
「調ちゃん、Trick so Treat」
「あっ、はい!どうぞ!」
慌ててお菓子の包みを渡す調。
しかし、羞恥に頬を染めていた彼女は気づいていなかった。
その言葉の接続詞が変わっていた事に……。
「ありがとう。じゃあ、悪戯しちゃうね」
「えっ……?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする調に、流星はクスクスと笑う。
「Trick so Treat……“お菓子くれたら悪戯するね”って言ったのさ。聞こえてなかったのかい?」
「流星さん……それ、ズルいです……」
「しょうがないだろう?調ちゃん、悪戯したくなるくらい可愛いんだから」
「もう……」
舞い上がってる隙を突かれたせいか、少々不満げな態度になる調。
しかし、その目は満更でもなさそうに笑っていた。
期待と喜び、そして嬉しさと羞恥が混じり合う。
2人を取り巻く今の空気は……
「それで、どんな悪戯をするんですか?」
「調ちゃん、さっきまでお菓子食べてたよね?じゃあ、きっと今の調ちゃんの唇は──」
きっと、甘い。
ff
「マリア姉さん、トリックオアトリート!」
「はい、セレナ。私からも、トリックオアトリートよ」
「じゃあ……はい!このオバケさんは、姉さんにあげちゃいます!」
場面変わって、こちらは楽しげにお菓子を交換し合う姉妹の姿。
姉であるマリアの方は、少し上の方に反った黒い三角耳にフサフサした尻尾。
大きな肉球付き手袋に、ノースリーブのジャケットとショートパンツといった動きやすさ重視の服装。
そう、つまりは人狼だ。
一方、妹であるセレナの方は、首から下をすっぽり覆う巨大カボチャの着ぐるみだ。
脚の生えた丸っこいカボチャが、廊下をてこてこ歩いている後ろ姿は、控えめに言っても可愛らしい。
セクシーな姉と可愛い妹、姉妹で全然違った印象の仮装は、多くの職員達の目を惹き付ける。
もっとも、彼女らを愛してやまない男が居るので、男性職員達は悪戯されてみたいという密やかな願望をゴミ箱に放り捨て、お菓子をどんどん貢いでいるのだが。
「マリィ、セレナ」
と、そこへようやくメイクを終えた彼が現れた。
「ツェルト、やっと来たわね……ッ!?」
「ツェルト義兄さん、待ってまし……ッ!?」
振り返った姉妹は、ツェルトの姿を見て目を見開く。
そこに立っていたのは黒マントに黒ベスト、口から覗く鋭い牙に、カラコン無しでもそれらが映える真っ赤な瞳。
吸血鬼の装いに身を包んだツェルトだった。
「ツェ、ツェルト……その……」
「ツェルト義兄さん、かっこいいです!」
先に口を開き、駆け寄ったのはセレナだった。
「そうか?」
「はい!ツェルト義兄さんのかっこよさが、しっかり引き立ってると思います!」
「ありがとう。セレナもすごく可愛らしいぞ」
そう言って微笑みながら、ツェルトはセレナの頭を撫でる。
そして、マリアの方へと目を向けた。
「マリィはどうだ?似合ってるか?」
「わ、私?そっ、そうね……」
妹に先を越され、一歩出遅れてしまったマリアは、急に話を振られ吃ってしまう。
マリアは改めて吸血鬼ツェルトを凝視し、彼を褒める言葉を探す。
しかし、つい口をついて出たのは……
「似合ってるんじゃないかしら……」
あまりに素っ気ない、ツンとした答えだった。
(わああああああ何言ってるのよ私ッ!もっとこう、あるでしょう!素直にツェルトを褒める言葉がッ!)
自分で言ったことを後悔するマリア。
しかし、ツェルトはそれを見越していたかのように、不敵に笑った。
「どうやら、マリィは素直になれないみたいだな」
「ッ!?ツェルト……?」
ツェルトはマリアの方へと近付くと、その顎に手を添える。
「そんなマリィには、おしおきが必要だよな?」
「な……何を……ッ」
「君の血を貰おうか、可愛いオオカミ女さん♪」
そう言ってツェルトは、マリアの瞳を真っ直ぐに見つめると……その唇を奪った。
「ッ!?~~~~~~~ッ!?!?!?」
「っぷあ……甘いかったぞ」
口を離し、ニンマリと笑うツェルトに、マリアは両手で口元を隠す。
「なっ、なななななななにするのよッ!?」
「いや、マリィがこういうのを求めてそうな顔してたもんでつい、な」
「そんなわけ……」
「まあ、感想は後でゆっくり聞くことにするさ。周囲の目がない所で、な」
「ッ!!」
耳打ちで、ウインクと共に放たれた殺し文句。
直後、マリアの顔がポンッと赤くなった。
「あ!マリア姉さんだけズルいです!」
「セレナにはまだ早いぞ」
「ズールーいーでーすー!わたしもツェルト義兄さんに口説かれてみたいです!」
そう言って、ツェルトの袖を引っ張るセレナ。
オーバーヒートしていたマリアは、慌ててセレナに目線を合わせると説得を試みる。
「セレナにはまだダメよッ!こういうのはもっと大人になってから、なんだから!」
「わたし、本当は姉さんと2歳違いなんです!もうちゃんと大人なんですからッ!」
「そういう事じゃないのよッ!」
「2人とも、喧嘩するんじゃない」
姉妹喧嘩が始まりそうな流れに、ツェルトは仲裁に入ろうとする。
しかし、帰ってきたのはまさかの答えだった。
「ツェルト義兄さん、わたしの事も口説いてくれますよね?」
「ダメよッ!ツェルト、あなたからも止めてくれるわよね!?」
「えっ……?」
自分も口説かれてみたい、と駄々をこねる義妹。
それを慌てて止めようとする過保護な彼女。
どちらの主張を取るかの判断を迫られ、ツェルトは思わず後ずさった。
「ツェルト!」
「ツェルト義兄さん!」
「む、むぅ……」
傍から見ればラブコメ漫画、あるいはラノベの1ページのような光景。
俗に言う「修羅場」とも言える状況。
ツェルトは決断を迫られる。
だが──
(さーて、どうしたものかな……)
顎に手を当てて思案するツェルトの顔は、何処か楽しそうでもあった。
“Trick and Trick”
灰髪赤眼のヴァンパイアは、菓子よりもっと甘い物がお好みらしい。
ff
「恭一郎くん、どう……かな?」
「未来、さん……」
未来の装いに、恭一郎はゴクリと唾を飲んだ。
紫を基調に黒が入り、革製のベルトが巻かれたドレスは胸元が開いている。
背中にはコウモリのような羽。腰のベルトには針金入りの尻尾。
口元から覗く牙、両手には手袋。
そして頭には、弧を描く2本の角が付いたカチューシャが。
そう、未来の装いは見ての通り、小悪魔である。
最低限の露出でありながら、恭一郎は今の彼女の姿に……どことなく妖艶さを感じていた。
(ヤバい……。今日の未来さん、スケベすぎる……ッ!?)
恭一郎はナイトとしての理性を総動員し、湧き出す劣情に抗う。
しかし、それは彼にとって試練というより苦行であった。
(いやいやいや、未来さんその服中々エッチじゃないかな!?その胸元なんでそんなに空いてるの?谷間見えちゃうよ!?それにそのドレス、なんでベルトだらけなの!?かなりキワドいと思うんだけどそれは自覚してやってるのかな!?胸元のすぐ下からお腹まで巻きついてるし、フリルの所にも付いてるよね!?それに肩から胸下に繋がってるのを見るところ、羽を固定してるのもそのベルトだよね!?さり気なく胸を強調してるのちょっとどうかと思うんだけど!?あとその付け牙、あざとくない!?可愛くてちょっと指で撫でてみたいだなんて何を考えてるんだ僕は!!落ち着け落ち着け煩悩退散煩悩退散ッ!!)
「恭一郎くん?どうしたの?」
「……ハッ!いや、何でも!!」
この間、僅か0.3秒。
恭一郎の心はとても穏やかではいられなかった。
(今の僕は騎士なんだッ!誘惑なんかに負けるものかッ!)
自らにそう言い聞かせ、着込んだ鎧に恥じぬよう姿勢を正す。
すると、未来はふと何かに気付いたように呟く。
「もしかして……気になっちゃう?」
そう言って未来は、スカートの裾をヒラヒラさせた。
「ッ!?」
「ふふ……図星だよね♪」
未来の口角が上がっている。
小悪魔らしく、蠱惑的な笑みで恭一郎を見つめ、わざとらしく誘惑してくる。
恭一郎は慌てて目を逸らし、拳に握る。
「そっ、そんな事は……」
「じゃあ、どうして目を逸らしているのかな?」
「ッ!?」
あっさりと図星を突かれ、恭一郎はフリーズする。
恭一郎の心を見透かしたように、未来は彼の耳元へと顔を寄せた。
「実はね……ドレスの下、違う衣装なの」
「……え?」
恭一郎の耳元で、未来は息を吹きかけるように囁く。
「ドレスを脱ぐとね、下はサキュバスなんだよ。見てみたい?」
「未来さんの……サキュバス……!?」
ゴクリ、と生唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた気がする。
理性がグラつく。欲望が首をもたげる。
理性と欲望が葛藤し、揺れる恭一郎。
汗が頬をつたい、息が詰まりそうになり、ようやく口を開けようとしたその時……。
「なんて、冗談だよ♪」
未来は悪戯っ子の笑みを浮かべ、そう言った。
「恭一郎くんの恥ずかしがる顔が見たくなっちょって──」
「未来さん」
未来の肩がビクッと跳ねる。
恭一郎の声のトーンが低くなったからだ。
「どうしたの、恭一郎くん?」
「Trick and Treat」
「……え?」
「お菓子か悪戯か、選ばせる余地も与えてくれなかったんだ。なら、両方貰ってもいいよね?」
そう言って恭一郎は、未来の身体を抱き寄せる。
「恭一郎くんッ!?」
「ちなみにTreatはお菓子じゃなくて、君の唇で払ってもらうから」
「えっ!?えっ、えッ!?」
「お仕置、させてねもらうね♪」
恭一郎はそう言って、困惑した顔の未来を見つめて、笑う。
小悪魔な姫を守護するナイトは、押しに弱いが押し返す。
果たしてこの後、未来がどうなったのか……それを知るのは2人だけである。
後書き
いかがだったでしょうか?
それでは皆さん、HAPPY HALLOWEEN!!
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