宇宙戦艦ヤマト2199~From Strike Witches~
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出航編
第5話 星の海を駆けし魔女
前書き
今回はオリジナル回です。
西暦2199年2月11日 冥王星 ガミラス軍基地
冥王星の何処かにある基地の司令部で、シュルツ達ガミラス軍指揮官は、木星に展開する監視衛星から送られてきた映像に愕然となっていた。
「ズピストが…一体何が起きたというんだ!?テロン艦隊は浮遊大陸で一体何を使ったというのだ!?」
木星の一部が抉り取られた様な様子がモニターに映し出され、シュルツがあんぐりとした表情でそう呟く中、副官がオペレーターに尋ねる。
「テロン艦隊は今どこにいる?」
「はっ…現在、ズピストから離れ、ゼダン付近の小惑星帯に移動しました。どうやら小惑星内部に隠れた模様です」
「小惑星帯か…となると、そこで何らかの補修を行ってから、ここに来る可能性も高いな。ここは一つ、艦隊を出して敵の戦力を調べる必要があるか…?」
「――でしたら、我が艦隊がその任務を担う事としましょう」
すると、そこに1人の軍服姿の男が現れ、シュルツ達に話しかけてきた。地球人とそう変わらぬ肌に茶色い空間服姿のシュルツ達とは異なり、その男は緑色を基調とした、昔のカールスラント帝国軍のそれに似た制服を身に纏っており、何より肌はブルーベリーの様に青かった。
「ヒルパ少将閣下、閣下の艦隊が向かわれるのですか? この星系の攻略作戦はあくまで我らが部隊が―」
「…シュルツ大佐、君は少し思い違いをしている様だ。我らの任務はあくまで別銀河系へ遠征している部隊の督戦。貴様の武功を奪わなくても、私は十分すぎる戦果を上げている。が、あのテロンの艦隊だけは別だ」
男―アンドル・ヴァム・ヒルパ少将は、シュルツに対してそう言いながらモニターを見つめる。彼はガミラス軍第11警務艦隊司令官で、辺境星系の攻略部隊が無事に作戦を遂行しているのか、そして本国に逆らう様な動きを見せていないかを調査・監督する任務を担っており、指揮する戦力も相当の数を有している。それらを使って、テロン艦隊を撃破しようというのだ。
「あの艦隊は我らの把握していない新兵器を開発し、保持している可能性がある。貴様らでは手に余る可能性を考慮し、我が艦隊が直接赴いて撃破する。シュルツ大佐は引き続きテロン攻略作戦に当たる様に…ドメル将軍より直々に賜った力量を無駄にするなよ」
ヒルパ少将はそう言いながら、司令部を後にしていく。その後ろ姿を見送りつつ、副官が話しかける。
「ヒルパ少将、ゲール少将とは全く異なるタイプのお方ですね」
「ああ…フィルブーク中将の下で戦ってきた経験のある人だ。肌の色が違えど、それを理由に差別してはならない事を学んでいるからな。閣下の期待を無駄にしないためにも、滞りの無い様に作戦計画を進めるしかないだろう」
シュルツはそう言いつつ、副官達と今後の作戦進行について話し合った。
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同刻 木星・土星中間地点 小惑星帯
木星と土星の間には、火星・木星間のアステロイド・ベルトより密度は薄いものの、相当数の小惑星が点在している。その中の一つの影に、「大和」と「天城」の2隻は身を潜ませていた。
2隻の周囲では十数人のウィッチが97式空間戦闘攻撃脚〈コスモファルコン〉を装備して、特殊爆薬で小惑星から切り出した岩塊を運び、「天城」の周囲に纏わせていた。
そして「大和」の上部、先代「大和」でかつて昼戦艦橋が置かれていた場所である司令官室では、有賀と真田が沖田に報告していた。
「ワープ中断に関しては、自動キャンセラーの働いた形跡がありました。予定ルート上に我々には感知不能な障害物を察知し、回避した可能性が高いです」
「感知不能な障害物か…ワープ航法はどうやらこちらの認識と常識ではまだ扱いの難しい技術の様だな…」
有賀の呟きに、真田は深刻な表情を浮かべながらタブレット端末を見つめる。
「ええ…それに波動砲も、今後はどの様に使うべきなのか、しっかりと考えないといけませんね…相手が同様の兵器を使って来てもおかしくないですし…」
「しかし、今の問題は「天城」だ…波動砲の発射の影響がこの様に響く事になろうとはな…」
沖田はそう呟きつつ、「天城」の方に目を移す。波動砲発射の際に、大量のエネルギーをエンジンから別のエネルギーに変換しつつ移動させた影響か、「天城」メインエンジンのコンデンサーが高熱で溶解し、緊急交換を必要とする事態に陥ったのである。
しかし問題はここからで、このコンデンサーには地球では採掘出来ない、土星や木星の衛星鉱山から掘られ、低重力環境下でしか精錬する事の出来ない希少鉱物、しかもその中でも土星衛星群でしか得る事の出来ない『コスモナイト90』を使用しており、そして「大和」にも「天城」にも、修理に足るだけの備蓄は積まれていなかった。そこからも現在の地球の資源的な逼迫振りが伺える。
「コンデンサーを修理するためには、どうしても土星衛星群の低重力圏下で精錬されたレアメタルインゴットが必要となる…が、この隙を突いてガミラス軍が攻め込んでこないとも言い切れないからな…」
「ですが、どのみち今後同様の事態が起きた場合、補給できるかどうかは全くの不明です。「天城」はともかく本艦の艦内工場は規模が小さいですので、今後の修理に備えてのスペアパーツを作れる分は確保した方がよいかと思います。ここで余計に日程を消費するより、途中で航行不能になった方が恐ろしい事態を招きますので」
「となると、大幅な航海日程の変更が必要になるな…ともかく、先ずは「天城」を曳航してそちらへ向かわなければならないだろうな」
沖田がそう言ってタブレット端末を手に取ったその時、艦橋から通信が入って来た。
『沖田提督、有賀艦長!偵察機から入電です!敵艦隊が付近宙域にワープアウト!こちらを探すべく、急速接近してくる模様です!』
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沖田達が「天城」でのアクシデントに関して会議を始めていたその頃、古代と南部、戦術科員の北野哲也曹長の三人は、「大和」艦首区画にいた。
「これは…」
「大和」兵装の完全な把握のために艦内各所を巡り、漸く技術科の許可を得て入った区画で、古代は目を丸く見開きながら見上げる。
そこには、円形の栓が嵌め込まれた黄色の巨大な円筒があり、土台や壁面から伸びるパイプと繋がっているのが見て取れる。
艦首区画にこの様な大掛かりな装置がある事に一同揃って驚く中、そこに1人の女性士官が現れる。
茶色がかった黒髪のポニーテールが特徴的な女性士官は、数人の技術科員や甲板部員ばかりが作業している中で唯一、赤字に黒い矢印の入った、戦術科女性士官用空間服を身に纏っており、古代の指揮下に入る者だという事が伺えた。
「おや、古代戦術長。よくぞ来られました」
「失礼、君は確か…」
古代の問いかけに対し、女性士官はタブレット端末を左脇に抱えてから敬礼し、名乗る。
「はっ、戦術科特殊兵装班所属、竹達彩乃と言います。階級は少尉です。特殊兵装の整備・調整を中心に担当しております」
「で、これがその『特殊兵装』か?」
「ええ、「天城」に積まれてる奴のプロトタイプですね。ただ対拠点狙撃を目的として開発された試作品と異なり、こちらは対艦攻撃を想定したタイプで、1発当たりの威力は低いですが、事前にパーティクルコンデンサーにタキオン粒子を蓄積し、重力波ホルダーで数発分のエネルギーを保持する仕組みなので、連射性能が高い他、メインエンジンに対する負担も比較的軽いです。なのでこちらは「天城」の『波動砲・甲型』と区別して『波動砲・乙型』と呼称されています」
何と、「大和」の特殊兵装も「天城」に積まれているのと同様、波動エネルギーを使った兵器だというのである。しかし彼女の表情はやや複雑そうであった。
「…ただ試作品であの威力が出ましたので、こちらも設計通りの運用が出来るのかどうか怪しいですが…真田副長とともに設計に参加した身としては、いい意味と悪い意味の両方で、余りにも想定を凌駕していましたから…」
開発に携わっていた者でさえも想定外だと言わしめ、そして戦略兵器として用兵者の想定の範囲を超えていたその威力に、竹達は或る意味恐怖を感じている様子であった。
「確かに、な…一度使えば、確実にガミラスに勝てるかもしれない。が、惑星をも容易く破壊出来る兵器は、使いどころを間違えれば自分達をも滅ぼす事となる。 俺達の目的はあくまで地球の再生であって、破壊と殺戮じゃないからな…」
古代はそう言いつつ、波動砲の砲身を成す装置を見上げる。直後、スピーカーから森の声が飛び込んできた。
『古代戦術長、南部砲雷長!直ちに艦橋へお戻りください!』
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「大和」航空隊用士官室
「ね~暇だね~」
「しっかりしろ、ハルトマン。いつ緊急出動がかかってもおかしくないのだからな」
「大和」艦内の航空隊用士官室で、2人のヨーロッパ系軍人が会話を交わす。その傍では、美優が部下の1人で同じ扶桑海軍航空隊に属する宮藤優香少尉と茶を飲み交わしていた。
「しかし、ここまで来て1日近くもの遅れが生じる事になるとはな…果たしてこの調子で半年も掛けずに17万光年近く先の星へ辿り着く事が出来るのだろうか…」
「エンジンの故障ですからね、それはしょうがないと思いますよ。弾薬やエンジンパーツは国際規格でライセンスフリー設計となっていますので艦内工場でもそれなりに再補充は出来ますが、外部からの補給を得て初めてその機能が発揮できるのですし…」
「大和」艦内工場は主に小型プラズマ溶鉱炉と3Dプリンター、複数の部品製造に必要な装備等からなるが、それでも扶桑の中小企業レベルであり、「天城」のに比べるとかなり小さい。空間魚雷やミサイルの弾頭部に推進剤に至っては、「天城」の専用設備でようやく数発作れる程度であるため、基本的に「大和」と「天城」の実弾兵器は地球出航時に搭載した分のみで戦う事となる。
最も、現時点で「大和」が消費した実弾兵器は三式融合弾3発とミサイル8発だけであるし、基本的には弾切れの起こらないビーム兵装で戦えばいいため、その懸念は些事程度なのだが。
彼女達が静かに休息を取っていたその時、スピーカーから森の声が飛び込んできた。
『スクランブル、スクランブル!敵艦隊が急速接近中!繰り返す、敵艦隊が急速接近中!航空隊は直ちに出撃せよ!繰り返す、航空隊は直ちに出撃せよ!なお敵艦隊にはネウロイの存在も確認される!』
「来たか…出撃するぞ!」
『了解!』
美優の言葉を聞き、先程までのんびりとしていた空気は無くなり、一同は席から立ち上がってジャンパーを脱ぐ。そしてロッカーに入れていたヘルメットを手に取って被り、空間服と接合。その次に生命維持ユニットを背負い、空間服と接続する。そして艦内通路を駆け、「大和」後部の空間へと出る。
そこには数十機のストライカーユニットが設置されており、複数のアームで構成されたフレームがユニットそのものを固定している。美優達は床面を蹴って、低重力環境下に置かれている格納庫内を移動し、ストライカーユニットの脚部ユニットに両足を納める。
そしてサブアームで兵装やシールドを保持しているバックパックが生命維持ユニットや脚部ユニットと接続されると、彼女達のヘルメットから光の耳が生じ、ユニット全体から低重音が鳴り始める。
「ストライク01、出るぞ!」
美優の掛け声と同時に、美優機を固定していたフレームがユニット全体を解放し、ユニットはフレームの一部によって運ばれ、真空化によって開放されたハッチへと向かい、床面のカタパルトと接続。そして電磁式カタパルトによって加速したユニットはバックパック部のスラスターを焚いてフレームから離れ、宇宙空間に飛び出す。
フレームは直ぐに収納されて次のウィッチの乗るフレームと交替され、30秒に1機のペースで両方のハッチからウィッチと飛ばしていく。そうして計12機のウィッチが展開される中、艦載型〈コスモファルコン〉も12機発艦し、計24の編隊が宇宙空間に舞い上がった。
「…まさか、過去のあの伝説の部隊を構成した者達の子孫が、こうして一同に会する日がまた来ようとはな…」
美優はそう呟きつつ、真後ろを向く。そして再び顔を真正面に戻し、命令を発した。
「偵察機からの情報では、敵は新型の超弩級戦艦を中心に、複数の新型艦で構成された20隻程度の機動艦隊だ。艦船型ネウロイも同様の数と編成で成り立っており、空母は確認されていない! ウィッチ部隊は対ネウロイ攻撃に専念し、通常機は敵艦の攻撃に専念せよ!」
『了解!』
「よし…第501統合空間航宙団『ストライクウィッチーズ』、初陣の時だ!絶対に敵艦隊を「天城」へ近づけさせるな!」
美優の号令とともに、24機は急加速して小惑星の合間を抜け、敵艦隊のアイコンがヘッドマウントディスプレイに映るのを確認する。そしてシールドと一体化しているミサイルランチャーを敵艦隊に向けて、照準を定める。
「デコイ、撃てえ!」
美優の号令とともに、一同は一斉にデコイ弾を放ち、それらは妨害電波を放ちながら飛翔する。そしてそれを察知したガミラス艦隊は大急ぎで対空砲火を撃ち上げるが、デコイ弾は広範囲にわたって展開され、ガミラス艦のレーダーを狂わせる。しかもデコイ弾自体がかなり小さいため、それらを撃墜するのも難しかった。
デコイ弾で自身の姿を晦ました編隊は敵艦隊の下方に回り込み、そして急上昇をかける。
船体下部は大気圏突入の際に生じる高熱と空気との摩擦に耐えうる様に頑丈に出来ているが、同時にセンサーも装甲機能との兼ね合いもあって然程高精度に作られてはいない。そしてデコイ弾でレーダーを誤魔化している中、ウィッチ達は艦隊下部から迫り、そして艦船型ネウロイに奇襲を仕掛ける事に成功した。
20ミリレーザー機銃がネウロイの外壁を削り、そこにミサイルを叩き込んで大きく抉る。そうして内部に隠されている、赤い二十面体が見えた時、1人のウィッチが長大な武器を向けた。
「当たって…!」
ブリタニア連邦から派遣されたウィッチであるリネット・ビショップ曹長の30ミリ対物プラズマライフルが閃光を放ち、ネウロイの根幹を成す核を撃ち抜く。そうして核を撃ち抜かれたネウロイは爆発四散し、そこでガミラス艦隊は敵襲を受けた事を察する。
『敵艦隊、混乱を来しました!』
「よし、かかれ!」
しかしその時には加藤率いる〈コスモファルコン〉隊も迫って来ており、12機の〈コスモファルコン〉はウィッチ達とともに挟み込む様に、上方から急降下を仕掛けた。
〈コスモファルコン〉の胴体内ウェポンベイから2発の空対艦ミサイルが投下され、ミサイルは投下直後にロケットモーターを起動し、高速で敵艦隊へ急降下する。ほぼ垂直に放たれたミサイルは容易く対空砲火を潜り抜け、次々と敵艦に命中していく。大気圏内では戦術核相当の破壊力を持つ小型核融合弾頭の炸裂が敵艦の砲塔を吹き飛ばし、運よく艦橋に当たれば、それだけで敵艦は航行不能に陥る。
上下からの空襲によりガミラス艦隊は3隻程度が航行不能になり、2隻が戦闘に支障をきたす程度の損傷を負い、ネウロイも4隻程度が撃沈する。
『敵艦隊、1割程度の戦力に十分な打撃を与える事に成功した模様!』
「よし…直ぐに退くぞ!ある程度敵艦隊を攪乱出来たらそれで十分だ!合流予定ポイントまで後退!」
美優の命令に従い、24機は一斉に加速し、その場から離れていく。ガミラス艦隊も撃墜しようと対空砲火を上げるが、通常機タイプの〈コスモファルコン〉はともかく、ウィッチの駆るストライカーユニットは全高3メートル程度と小さく、機敏に上下左右に揺れながら退いていくウィッチ達を撃ち落とす事は出来なかった。
こうして航空隊は敵艦隊に攪乱程度の攻撃とデコイ弾による索敵機能の低下を成し遂げ、「大和」との合流予定ポイントへ下がって行った。
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「敵航空隊、後退していきます!間もなく探知困難な距離にまで逃げられます!」
ガミラス軍第11警務艦隊旗艦を務めるハイゼラード級二等航宙戦艦「ヒパリオン」の艦橋で、レーダー士が報告を上げる。ヒルパは艦橋上部に設置されたモニターを睨み付け、舌打ちをする。
ガミラス軍の中でも新型に属するハイゼラード級二等航宙戦艦は、艦隊旗艦として用いられる事が多いため、艦橋周辺に対空レーザー砲を多数装備し、敵の攻撃に対する防御が手厚い。同様にこの艦の周囲を取り囲む4隻のメルトリア級航宙巡洋戦艦も近接防御用のレーザー砲を多数装備しており、対空戦闘能力は高い。
その堅牢さを理解していたのか、敵機は旗艦に対して積極的な攻撃を仕掛けず、ただひたすらに艦隊陣形外縁部の巡洋艦や駆逐艦を沈黙させるか手負いを負わせる事に徹していた。
「まさか艦載機で襲撃を掛けてくるとは…テロンの航宙機の性能は聞いてはいたが、それを手繰るパイロットも相当な腕前だ…あれでいて何故空母を戦闘で突入させてきていなかったのかが不思議に思える…だが、あの少数での奇襲で、一体どの様に勝つつもりだ…」
ヒルパが敵の狙いを推測するために首を傾げる中、今度は通信士が血相を変えて振り向いて来た。
「ヒルパ少将、先行して小惑星帯を探索していた駆逐艦が通信途絶しました!敵艦の攻撃を受けた模様!」
「何?直ぐにその駆逐艦の向かった地点を照合しろ!恐らくその周辺にテロン艦が潜んでいる可能性が―」
ヒルパが新たな指示を出し始めたその時、突如、激震が「ヒパリオン」艦橋を揺らし、ヒルパは片膝立ちになりつつ周囲を見渡した。
「何事か?敵襲か!?」
ヒルパがレーダー士にそう尋ねた直後、右舷側が青白い光に包まれていく。その方向に目を向けたその瞬間、ヒルパの視界は青白い閃光に呑まれていった。
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「命中しました! 敵戦艦1、航行不能に陥った模様!」
「大和」の艦橋で、南部が有賀にそう報告し、有賀は真正面を見据えながら笑みを浮かべる。
地球側が敵艦隊に対して取った戦術は実にシンプルであった。最初に航空隊が奇襲を仕掛ける際にセンサー妨害用のデコイを展開し、「大和」の動きを簡単に捕捉出来ない様に誤魔化す。そしてイズモ計画の際に考案されていた、小惑星から切り取った岩塊に電磁力パイルを打ち込んだブロックを纏わせ、小惑星に偽装する『アステロイドシップ』状態となって、同様の状態となった「天城」には鉱山のある衛星エンケラドゥスへ先行させ、一方で「大和」は陽動を仕掛けるために小惑星に化けたまま敵艦隊へ接近。そして航空隊の奇襲である程度陣形が崩れたところを見計らって、長距離狙撃を仕掛けたのだった。
旗艦と思しき戦艦の艦橋が吹き飛ばされた直後のため、ガミラス艦隊は混乱状態に陥っており、直ぐにネウロイ艦隊がビーム攻撃を放って応戦してくるが、この時「大和」は全ての岩塊を離して艦の周囲にリング状に纏わせた状態になっており、ビーム攻撃は岩塊のリングで悉く防がれていた。
「敵艦隊、照準完了!」
「よし、撃て!」
「撃ち方、始め!」
有賀と古代の命令に従い、4基12門の50口径46サンチ三連装砲と2基6門の60口径20.3サンチ三連装砲が吼え、18本の陽電子衝撃光線は3本に1本の割合で一際太い光の束となり、次々とガミラス艦や艦船型ネウロイを貫いていく。
自軍の陽電子光線砲よりも圧倒的長射程かつ信じ難い程の高威力の砲撃に晒され、ガミラス艦隊は瞬く間に瓦解していく。そして圧倒的な不利を悟ったのか、ガミラス艦隊の何隻かが反転し、逃げの態勢に入り始めた。
「あっ、敵艦隊、逃走を始めました!指揮統率が崩れ、完全に不利に陥ったと判断した模様!」
「よし、追い立てろ!別にここで殲滅する必要はない、追撃してくる様に見せかけ、こちらがこの後どの様に動くのかを悟らせるな」
有賀の指示に従い、「大和」は遠距離狙撃に切り替え、長距離からの精密射撃による追撃へと切り替える。その嫌がらせにも近い攻撃に慌てふためいたのか、ガミラス艦隊は次々とワープしていき、ついにその場から逃げ出していった。
「敵艦隊、全艦ワープして逃げていきました」
「よし…本艦も直ぐにエンケラドゥスに向かう。取り舵20、巡航速度で向かえ。「天城」を迎えに行くぞ」
有賀の指示に従い、「大和」は進路を変え、一路、土星第二衛星のエンケラドゥスへと向かって行った。
その日、「大和」とその航空隊はガミラス艦隊と木星・土星軌道間宙域で交戦し、ガミラス艦9隻と艦船型ネウロイ11隻を撃沈。半数の戦力と艦隊司令を喪失したガミラス軍は撤退し、国連宇宙軍は実に8年振りに、宇宙空間での艦隊戦にて完勝を収める事に成功したのだった。
後書き
次回、原作第4話の話がメインとなります。
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