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レーヴァティン

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第百七十七話 七尾城攻めその四

「嫌われるわ」
「そうなるな」
「それがしでもや」
「嫌うな」
「しかもかつて仲が良くておべんちゃらを言っていた奴のことを吹き込む」
「何か人間の卑しくて醜い部分を集めたみたいな奴やな」
「だから徹底的に嫌われている」
 そうなっているというのだ。
「俺は中学で同じでだ」
「その中学でも嫌われていてやな」
「高校は別だったが」
「話を聞いたんやな」
「高校では有名人だった」
 どういった意味で有名人かというと。有名人と言えば聞こえはいいがそのパターンは色々あるのである。
「嫌われ者でな」
「性格が悪いからやな」
「入学式からすぐに嫌われてだ」
 そうしてというのだ。
「卒業の頃にはな」
「そうした意味で有名人やったか」
「そうだった、そいつを見てだ」
「自分は相手を侮らん様になったか」
「屑になるつもりはない」
 だからだというのだ。
「そいつを反面教師にした」
「そういうことやな」
「だから今もな」
「決してやな」
「相手を侮らず」
 そのうえでというのだ。
「最後の最後までだ」
「攻めてくな」
「この七尾城もな」
「本丸まで攻め落とすか」
「途中で降伏するかな」
「そういうことやな」
「そうだ、最後までな」
 相手は侮らないというのだ。
「全力で攻める」
「ほんまそれがいいぜよ」
 当季は笑って述べた。
「相手は侮らんでのう」
「そしてだな」
「最後の最後まで、ぜよ」
「攻めるべきだな」
「全力でのう、ほなな」
「このまま攻める、あと降る者はだ」
 その彼等はというと。
「受け入れる」
「捕虜にしてじゃな」
「戦の後でな」
「幕府の兵にすうのう」
「そうする」
「今は一人もおらんが」
 死兵となって戦い続けている。
「しかしじゃな」
「降る者はそうする」
「そうじゃな」
「降った者にどうにかする趣味はない」
 一切、そうした言葉だった。
「俺にはな」
「捕虜を殺したことはないのう、確かに」
「殺してどうする」
 それこそという返事だった。
「一体」
「歯向かうことの出来んモンには何もせんか」
「そうした趣味はないからな」
「そうじゃな」
「だからだ」
 それ故にというのだ。
「そしてもっと言えばな」
「降ったモンはじゃな」
「後で幕府の兵になる」
「だからじゃな」
「その意味でも捕虜には何もしない」
「降ったモンは受け入れるんじゃな」
「そうする」
 まさにというのだ。 
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