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レーヴァティン

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第百七十六話 雪溶けと共にその十二

「そして差し出してもだ」
「それでもですか」
「受け取ることはしない」
「左様ですか」
「そのことはそなただけではない」
「誰でもですか」
「同じだ、わかったな」
「それでは」
「安心してそのまま領地を収めろ、だが幕府に従わなかったので暫し蟄居をしてもらう」
 この処罰は忘れなかった。
「いいな」
「蟄居ですか」
「暫くな、その間静かにしていることだ」
「わかりました」
「時が来れば出す」
 その蟄居からだ。
「いいな」
「はい、それでは」
「そなたはそれでいい」
 こう言ってだ、英雄はその国人への断を終えた。そうしてだった。
 次の相手の方に軍勢を率いつつ幕臣達に話した。
「俺は確かに女が好きだ」
「けれどですね」
「上様としては」
「人の妻娘については」
「獲ることはしない」 
 決してというのだ。
「そうしたことはな」
「それは人の道ですね」
「人としてですね」
「そうされますね」
「そうだ、人の妻や娘を奪うなぞだ」
 そうした振る舞いはというのだ。
「人として下衆だ、ましてや将軍の力を使ってするなぞな」
「尚更ですね」
「そのことはですね」
「許されない」
「それで上様もですね」
「そうしたことはしない」
 絶対にというのだ。
「俺はな、力を己の欲の為には使わない」
「おなごのことにしても」
「そうなのですね」
「上様は」
「女は差し出されても受けない」 
 他の者のものならというのだ。
「絶対にな」
「そうしたお考えなので」
「だからですね」
「この度は、ですね」
「あの国人をただ蟄居させた」
「それで終わりましたね」
「そうだ、女は大奥の者達とだ」
 お静を含めてのことだ、英雄は大坂にいる時は毎晩大奥で女達と楽しんでいる。自他共に認めるそちらの数寄者である。
「遊郭の女達と楽しむが」
「それでもですね」
「他人の妻や娘はいい」
「そちらはですね」
「何があってもな、他人の妻や娘に手を出すのが好きな男はだ」
 英雄は冷厳な声で述べた。
「末路は知れている」
「刺される話は多いですな」
「それも実に」
「間男として斬られる」
「そうした話は多いです」
「俺は愛だ男になぞならない」
 決してというのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「そうしたことはですね」
「決してです」
「そのうえで」
「楽しむべき女達と楽しむ」
 その様にするというのだ。
「俺はな、これからもな」
「そうですか」
「それが人の筋で」
「上様もそうされる」
「左様ですね」
「男に興味はないが」
 この浮島ではこちらも普通のことだ。 
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