戦国異伝供書
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第百八話 関東管領上杉家その二
「果たしていきましょうぞ」
「そうであるな」
「では」
「鉄砲は引き続き行っていく」
氏康は断を下した。
「腰を据えてな」
「そうしてですな」
「多く揃える、千丁でもな」
「そうしますな」
「織田家は六十万石、一万五千の兵でもう鉄砲を五百か千持っておるというが」
「五百でもかなりですな」
氏照もその数には息を呑んだ。
「それはまた」
「恐ろしい数であるな」
「よくそこまで揃える銭がありますな」
「尾張は田畑もよいがな」
「町もですか」
「そしてよい港も持っておる」
その領地にというのだ。
「だから銭はじゃ」
「多いのですな」
「しかも善政を敷いておってな」
信長、彼がだ。
「国は大いに潤っておるという」
「それでその数の鉄砲もですか」
「揃えた様じゃ」
「左様ですか」
「やはり織田家はな」
「恐ろしい家ですか」
「六十万石であるが」
今はというのだ。
「やはりすぐにでもな」
「さらに大きな家になりますすか」
「そうなる」
間違いなくというのだ。
「あの家はな」
「今川殿が攻められますが」
「果たしてどうなるか」
「わかりませぬか」
「今川殿は止まるであろう」
織田家に勝てないというのだ。
「わしが思うに」
「その織田殿を降せず」
「そうしてですか」
「尾張からはですか」
「攻められませぬか」
「おそらくな、だからな」
それでというのだ。
「織田家は侮れぬ」
「六十万石では終わらず」
「それで、ですな」
「すぐにとてつもなく大きな家になり」
「そしてですか」
「天下に覇を唱える」
そうした家になるというのだ。
「おそらくな」
「ううむ、まさかです」
「うつけ殿が瞬く間に尾張を統一するとは」
「そのことにも驚いていますが」
「それに止まらず」
「さらにですか」
「雄飛するであろうな、しかしそれは西国のことでな」
それでというのだ。
「我等はな」
「はい、この東国において」
「勢力を拡大し」
「そしてですな」
「そのうえで、ですな」
「関東管領になろう、ではあらためてな」
氏康は家臣達に話した。
「我等は里見家に勝った、下総の国人達もなびいてきている」
「ならですな」
「下総はそのままにして」
「そしてですな」
「我等は今は」
「上野に向かう」
そうするというのだ。
「これよりな」
「そうしますか」
「それではですか」
「これより」
「あの国を手に入れて」
「そしてですか」
「上杉殿には出て頂く」
上野ひいては関東からというのだ。
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