凍り豆腐
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第六章
空が明るくなるのを見ながら片倉と成実に話した。
「凍った肴はまだ食えるな」
「はい、もう少しは溶けているかと」
「雪女は去りましたので」
「多少まだ凍っておるかも知れませぬが」
「食えることは食えるかと」
「なら食おう、特に刺身は置いておくと傷みやすい」
それ故にというのだ。
「朝飯に食おう」
「はい、それでは」
「これより」
「三人で食おうぞ」
こう話して共に食することにした、刺身も漬けものもまだ多少凍っているが食うことは出来た、そして豆腐は。
少し変わっていた、凍っていたのが溶けて水気が抜けていた、それで片倉も成実もその豆腐を見て言った。
「形は豆腐ですが」
「どうも違う感じがしますな」
「水気が抜けて」
「別の食いものにも見えますな」
「うむ、しかしこれを食うのも面白そうじゃ」
政宗はその豆腐を見て二人に話した。
「ではな」
「これよりですな」
「この豆腐も食しますか」
「そうしようぞ」
政宗は自分から言ってだ、そしてだった。
その豆腐も食べるとだ、こう言った。
「うむ、この豆腐もな」
「美味いですな」
「これはこれで」
「豆腐を凍らせて溶かした後も美味いか」
政宗は片倉、成実と共に笑って話した。
「これは面白い、ではこれからもな」
「豆腐をこうしても食う」
「そうしていきますか」
「そうしようぞ、いやこれは中々のものじゃ」
その豆腐を食べながら言うのだった、これが凍り豆腐のはじまりという話もある。伊達政宗が凍り豆腐関西では高野豆腐と言われるものを作ったことは知られているが一説にはこの雪女との宴がはじまりだという。真実はわからないが面白い話と思いここに紹介させてもらった。
凍り豆腐 完
2020・3・19
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